南禅寺

南禪寺[臨濟宗南禪寺派大本山]
※現代の景観です。

昭和初期のガイド文

市電南禅寺前下車、南禅寺町インクラインの東にある洛東屈指の名刹です。

もと亀山上皇の離宮だったものを、大明国師を招いて開山とし、京五山のひとつに位置していましたが、後しばしば火災に罹って焼亡し、豊臣、徳川氏の世になってようやく復興したものです。すなわち江戸時代の初め金地院の崇伝がここの住職となり、徳川家康に信任されてから寺運が大きくあがり、慶長16年(1611年)には清涼殿の旧建物を賜って方丈とし、また伏見桃山城の旧殿をも得て小方文とし、さらに寛永年間(1624~1644年)には藤堂高虎が三門を再建するに至りました。

三門[国宝] 寛永5年(1628年)の建築で、五間三戸純然とした禅宗式の大楼門です。左右に山廊があり、ここから楼上に昇ると楼上には釈迦および十六羅漢の像が安置してあります。梁、柱などには極彩色を施しています。

本堂 三門の後にあります。七間七面重層入母屋造の大建築で、近年の再建になり、天井には今尾景年の蟠竜の絵があります。

方丈[国宝] 本堂の奥にあり、大方丈と小方丈に分かれ、小方丈は奥に接続して建っています。大方丈は天正年間(1573~1592年)造営の清涼殿を賜ったもので、正面は九間、側面は十二間、単層屋根入母屋造杮葺です。内部は8室に分かれ、各室の襖には狩野派の画家によって描かれた極彩色の絵があり、その画題によって麝香の間、二十四孝の間、鶴の間、鳴滝の間、柳の間などの名があります。

小方丈は虎の間ともいい、6室に別れ、その3室の襖には金地に竹林群虎の図があり、国宝に指定されています。筆者は寺伝によって狩野探幽と伝えています。筆力雄健にして生動の気にあふれ、金色と緑青の対照に極めて豪華な桃山式装飾美を現しています。

  • 宝物
  • 大明国師像[国宝] 一幅 絹本著色、平田和尚の賛があります。大明国師は南禅寺の開祖です。
  • 南院国師像[国宝] 一幅 紙本著色、慶長16年の作、南禅寺の二世で後陽成天皇の賛があります。
  • 釈迦十六善神像[国宝] 一幅 絹本著色、大和絵風のもので截金が使ってあります。鎌倉時代
  • 仏涅槃図[国宝] 絹本著色、室町時代 一幅
  • 江山漁舟図[国宝] 絹本墨画、蒋三松筆 一幅
  • 薬山李翺問答図[国宝] 絹本淡彩 一幅
  • 聖憎文珠像[国宝] 絹本墨画、南禅比丘正澄の賛があります。
  • 清凉殿拝領由緒[国宝] 紙本墨書 六幅
  • 牡丹模様盆[国宝] 鎌倉彫と称するものである 一合
  • 達磨像[国宝] 一幅 紙本墨画、祥啓筆、東京帝室博物館出陳
※底本:『日本案内記 近畿篇 上(初版)』昭和7年(1932年)発行
南禅寺虎の間 南禅寺境内平面図

令和に見に行くなら

名称
南禅寺
かな
なんぜんじ
種別
見所・観光
状態
現存し見学できる
住所
京都府京都市左京区南禅寺福地町86
参照
参考サイト(外部リンク)

日本案内記原文

市電南禪寺前下車、南禪寺町インクラインの東にある洛東屈指の名刹である。

もと龜山上皇の離宮であつたのを、大明國師を招きて開山となし、京五山の一に位して居たが、後屢火災に罹りて燒亡し、豐臣、德川氏の世になつて漸次復興したのである。卽ち江戶時代の初め金地院の崇傳がこゝの住職となり、德川家康に信任せられてから寺運大いにあがり、慶長十六年には淸涼殿の舊建物を賜はりて方丈となし、また伏見桃山城の舊殿をも得て小方文となし、更に寬永年閒には藤堂高虎が三門を再建するに至つた。

三門[國寶] 寬永五年の建築で、五閒三戶純然たる禪宗式の大樓門である。左右に山廊があり、こゝから樓上に昇ると樓上には釋迦及十六羅漢の像が安置してある。梁、柱などには極彩色を施して居る。

本堂 三門の後にある。七閒七面重層入母屋造の大建築で、近年の再建にかゝり、天井には今尾景年の蟠龍の繪がある。

方丈[國寶] 本堂の奧にあり、大方丈と小方丈に別れ、小方丈は奧に接續して建つて居る。大方丈は天正年閒造營の淸涼殿を賜はつたもので、正面は九閒、側面は十二閒、單層屋根入母屋造杮葺である。內部は八室に別かれ、各室の襖には狩野派の畫家によつて描かれた極彩色の繪があり、その畫題によつて麝香の閒、二十四孝の閒、鶴の閒、鳴瀧の閒、柳の閒などの稱がある。

小方丈は一名虎の閒とも云ひ、六室に別れ、その三室の襖には金地に竹林群虎の圖があり、國寶に指定されて居る。筆者は寺傳によりて狩野探幽と稱して居る。筆力雄健にして生動の氣に溢れ、金色と綠靑の對照に極めて豪華な桃山式裝飾美を現はして居る。

  • 寶物
  • 大明國師像[國寶] 一幅 絹本著色、平田和尙の贊がある、大明國師は南禪寺の開祖である。
  • 南院國師像[國寶] 一幅 紙本著色、慶長十六年の作、南禪寺の二世で後陽成天皇の贊がある。
  • 釋迦十六善神像[國寶] 一幅 絹本著色、大和繪風のもので截金が使つてある。鐮倉時代
  • 佛涅槃圖[國寶] 絹本著色、室町時代 一幅
  • 江山漁舟圖[國寶] 絹本墨畫、蒋三松筆 一幅
  • 藥山李翺問答圖[國寶] 絹本淡彩 一幅
  • 聖憎文珠像[國寶] 絹本墨畫、南禪比丘正澄の贊がある。
  • 淸凉殿拜領由緖[國寶] 紙本墨書 六幅
  • 牡丹模樣盆[國寶] 鐮倉彫と稱するものである 一合
  • 達磨像[國寶] 一幅 紙本墨畫、祥啓筆、東京帝室博物館出陳

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