妙法院

妙法院[天臺宗]
※現代の景観です。

昭和初期のガイド文

市電妙法院前下車、京都博物館の裏にあります。近世まで代々法親王が住職となられた天台宗の名刹で、有名な古建築に大書院、玄関および庫裡があります。

大書院[国宝] 五間六面、単層入母屋造杮葺で、江戸時代前期の元和5年(1619年)東福門院入内の時造営の旧殿を賜ったものとされています。軒には疎棰を配し、柱は細い面取の方柱を建て、その他舟肘木、舞良戸、明障子などいずれも瀟洒な風格を残しています。襖壁の絵は狩野松栄および永徳の筆とされ、金地に極彩色の華麗な花卉などが描かれています。要するに桃山から江戸時代に至る書院造の好標本です。

玄関[国宝] 大書院と渡廊で連なっています。七間四面、単層入母屋造、杮葺で江戸初期の建造です。正面左右に後世付加したと思われる大小2つの唐破風屋根が突き出ています。主屋の方は内部数室に分かれ、畳敷で、間仕切の襖には金地極彩色の巨松を描いています。構造簡明にして書院風の佳作です。

庫裡[国宝] 北門を入ると突当りにあります。十一間十二面、妻入の大建築で、棟に煙出を造り、軒下に唐破風屋根の入口があります。この建築は一種の台所で、入口の蟇股、妻の懸魚、虹梁等に桃山式の手法を現していますが、このほかに一切装飾はありません。軒廻りも非常に簡単で、内部は小屋組を露出したままで、梁貫が縦横に架かり、豪放雄大の観があります。

竜華蔵 コンクリート土蔵風の陳列館で、主として、豊公の遺物と称するものが陳列されていますが、そのなかにはポルトガルのゴア副総督から豊臣秀吉に贈られた羊皮に書かれた書簡(国実)があります。

※底本:『日本案内記 近畿篇 上(初版)』昭和7年(1932年)発行

令和に見に行くなら

名称
妙法院
かな
みょうほういん
種別
見所・観光
状態
現存し見学できる
住所
京都府京都市東山区妙法院前側町447
参照
参考サイト(外部リンク)

日本案内記原文

市電妙法院前下車、京都博物館の裏にある。近世まで世々法親王が住職となられた天臺宗の名刹で、有名な古建築に大書院、玄關及庫裡がある。

大書院[國寶] 五閒六面、單層入母屋造杮葺で、元和五年東福門院入內の時造營の舊殿を賜はつたものと稱して居る。軒には疎棰を配し、柱は細い面取の方柱を建て、その他舟肘木、舞良戶、明障子など何れも瀟洒な風格を存して居る。襖壁の繪は狩野松榮及永德の筆と稱し、金地に極彩色の華麗な花卉などが描かれて居る。要するに桃山より江戶時代に至る書院造の好標本である。

玄關[國寶] 大書院と渡廊で連つて居る。七閒四面、單層入母屋造、杮葺で江戶初期の建造である。正面左右に後世附加したと思はれる大小二つの唐破風屋根が突き出て居る。主屋の方は內部數室に分れ、疊敷で、閒仕切の襖には金地極彩色の巨松を描いて居る。構造簡明にして書院風の一佳作たるを失はない。

庫裡[國寶] 北門を入ると突當りにある。十一閒十二面、妻入の大建築で、棟に煙出を造り、軒下に唐破風屋根の入口がある。この建築は一種の臺所で、入口の蟇股、妻の懸魚、虹梁等に桃山式の手法を現はして居るが、この外に一切裝飾はない。軒廻りも頗る簡單で、內部は小屋組を露出したまゝで、梁貫が縱橫に架り、豪放雄大の觀がある。

龍華藏 コンクリート土藏風の陳列館で、主として、豐公の遺物と稱するものが陳列されて居るが、その中には葡國ゴア副總督から豐臣秀吉に贈つた羊皮に書かれた書翰(國實)がある。

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