仁和寺

仁和寺[眞言宗御室派本山]
※現代の景観です。

昭和初期のガイド文

嵐山電車御室下車、御室にあります。仁和寺はもと御室御所と称し、今なお俗に御室といい、平安時代の仁和4年(888年)光孝天皇の勅願によって建立されました。宇多天皇は御譲位の後、真言宗の大阿闍梨となられ、この寺を法務の御所とされた以来皇室との関係深く、その保護を受けること厚く、堂塔伽藍は壮観を極めましたが、応仁、文明両度の兵火に全山すべて焼失してしまいました。徳川氏はこれを見て再建を企て、皇室からも寛永年間(1624~1644年)に紫宸殿および清涼殿を賜り、やや旧観を取り戻しましたが、明治25年(1892年)また火災に罹り多くの堂宇を失いました。現存する主要な建物は仁王門、本堂、御影堂および五重塔などです。

仁王門[国宝] 五間三戸の楼門で、屋根は入母屋造本瓦葺、木割の雄大な円柱を建て、桝組には和様を用いた寛永年間の優秀な建築です。

本堂[国宝] 仁王門を入って正面にあり、天正紫宸殿の遺構です。七間五面、単層、屋根は入母屋造、本瓦葺で、前面に向拝を有し、仏寺式に改められていますが、廻椽といい、勾欄といい、あるいは蔀戸といい、すべて軽快優美で、よく寝殿風宮室の風格を残しています。

御影堂[国宝] 本堂の西にあり、本堂とともに賜った天正清涼殿の遺構です。方五間、屋根宝形造、檜皮葺正面に向拝があり、外部はすべて方柱を建て、舟肘木を用い、非常に軽快の趣致を存し、桃山式住宅建築の余風を示しています。

五重塔[国宝] 方三間朱塗の五層塔で寛永14年(1637年)徳川氏が建てたものです。

宝物館 境内にあり、校倉式のコンクリート建築で国宝その他寺宝の主なものが陳列されています。その主要なものを次に列挙します。

  • 五鈷鈴[国宝] 銅造 一箇
  • 九頭竜鈴[国宝] 銅造 一箇
  • 五鈷杵[国宝] 銅造 一箇
  • 三鈷鈴[国宝] 銅造 一箇
  • 聖徳太子像[国宝] 一幅 絹本著色 宋画風の描線を用い、胡粉および金泥の盛上げを多く施した鮮麗なもので、絵画としての太子像の典型的な作品です。
  • 宝珠筥[国宝] 唐草蒔絵 一箇
  • 御室相承記[国宝] 紙本墨書(六巻の内) 一巻
  • 孔雀明王像[国宝] 絹本著色 伝張思恭筆 一幅
  • 聖教入蒔絵箱[国宝] 伝僧空海将来 一箇
  • 尊勝陀羅尼梵字経[国宝] 絹本墨書 伝不空三蔵筆 一帖
  • 聖教三十帖冊子[国宝] 七冊 紙本墨書 弘法大師筆外数筆、三十冊の内
  • 多聞天立像[国宝] 木造 一体 彩色像で藤原時代の佳作です。
  • 愛染明王坐像[国宝] 木造 一体 彫法精美 八角形の厨子に納められています。
  • 阿弥陀如来および脇侍像[国宝] 木造 三体 仁和寺創発の際の本幹でしたが、本堂再建の時脇壇に安置して、別に現在の本尊を新たに造ったものであるといいます。平安時代。
  • 吉祥天立像[国宝] 木造 藤原初期の作 一体
  • 聖徳太子坐像[国宝] 木造 一体 玉眼嵌入の像で、肉身金泥、纏衣極彩色。鎌倉時代末期の作です。
  • 文殊菩薩坐像[国宝] 木造 一体 もと真乗院の本尊で鎌倉時代の作。
  • 承久三年四年日次記[国宝] 紙本墨書残関 一帖
  • 後嵯峨天皇宸翰[国宝] 紙本墨書 一巻
  • 消息[国宝] 一巻 紙本墨書 高野御室消息一通、華蔵院宮法印消息一通および返事案二通合せて一巻としています。
  • 別尊雑記[国宝] 五十七巻 紙本墨書 要尊雑記ともいい、高野常喜院心覚の撰述になるもので密教に関する行法図像を結集したものです。
※底本:『日本案内記 近畿篇 上(初版)』昭和7年(1932年)発行
仁和寺境内平面図

令和に見に行くなら

名称
仁和寺
かな
にんなじ
種別
見所・観光
状態
現存し見学できる
住所
京都府京都市右京区御室大内33
参照
参考サイト(外部リンク)

日本案内記原文

嵐山電車御室下車、御室にある。仁和寺はもと御室御所と稱し、今尙俗に御室と云ひ、仁和四年光孝天皇の敕願によつて建立された。宇多天皇は御讓位の後、眞言宗の大阿闍梨となられ、當寺を法務の御所とせられた爾來當寺は皇室との關係深く、その保護を受けること厚く、堂塔伽藍壯觀を極めたのであるが、應仁、文明兩度の兵火に全山悉く燒失して終つた。德川氏これを見て再建を企て、皇室からも寬永年閒に紫宸殿及淸涼殿を賜はり、稍舊觀に復するを得たが、明治二十五年また火災に罹り幾多の堂宇を失つた。現存主要の建物は仁王門、本堂、御影堂及五重塔婆などである。

仁王門[國寶] 五閒三戶の樓門で、屋根は入母屋造本瓦葺、木割の雄大な圓柱を建て、桝組には和樣を用ゐた寛永年閒の優秀な建築である。

本堂[國寶] 仁王門を入つて正面にあり、天正紫宸殿の遺構である。七閒五面、單層、屋根は入母屋造、本瓦葺で、前面に向拜を有し、佛寺式に改められて居るが、廻椽と云ひ、勾欄と云ひ、或は蔀戶と云ひ、すべて輕快優美で、よく寢殿風宮室の風格を存して居る。

御影堂[國寶] 本堂の西にあり、本堂と共に賜つた天正淸涼殿の遺構である。方五閒、屋根寶形造、檜皮葺正面に向拜があり、外部はすべて方柱を建て、舟肘木を用ゐ、頗る輕快の趣致を存し、桃山式住宅建築の餘風を示して居る。

五重塔婆[國寶] 方三閒朱塗の五層塔婆で寬永十四年德川氏の建つる所である。

寶物館 境內にあり、校倉式のコンクリート建築で國寶その他寺寶の主なるものが陳列されて居る。その主要なるものを次に列舉する。

  • 五鈷鈴[國寶] 銅造 一箇
  • 九頭龍鈴[國寶] 銅造 一箇
  • 五鈷杵[國寶] 銅造 一箇
  • 三鈷鈴[國寶] 銅造 一箇
  • 聖德太子像[國寶] 一幅 絹本著色 宋畫風の描線を用ゐ、胡粉及金泥の盛上げを多く施した鮮麗なるもので、繪畫としての太子像の典型的な作品である。
  • 寶珠筥[國寶] 唐草蒔繪 一箇
  • 御室相承記[國寶] 紙本墨書(六卷の內) 一卷
  • 孔雀明王像[國寶] 絹本著色 傳張思恭筆 一幅
  • 聖敎入蒔繪箱[國寶] 傳僧空海將來 一箇
  • 尊勝陀羅尼梵字經[國寶] 絹本墨書 傳不空三藏筆 一帖
  • 聖敎三十帖册子[國寶] 七册 紙本墨書 弘法大師筆外數筆、三十册の內
  • 多聞天立像[國寶] 木造 一軀 彩色像で藤原時代の佳作である。
  • 愛染明王坐像[國寶] 木造 一軀 彫法精美 八角形の厨子に納められて居る。
  • 阿彌陀如來及脇侍像[國寶] 木造 三軀 仁和寺創發の際の本幹であつたが、本堂再建の時脇壇に安置して、別に今の本尊を新たに造つたものであると云ふ。平安時代。
  • 吉祥天立像[國寶] 木造 藤原初期の作 一軀
  • 聖德太子坐像[國寶] 木造 一軀 玉眼嵌入の像で、肉身金泥、纏衣極彩色。鐮倉時代末期の作である。
  • 文殊菩薩坐像[國寶] 木造 一軀 もと眞乘院の本尊で鐮倉時代の作。
  • 承久三年四年日次記[國寶] 紙本墨書殘關 一帖
  • 後嵯峨天皇宸翰[國寶] 紙本墨書 一卷
  • 消息[國寶] 一卷 紙本墨書 高野御室消息一通、華藏院宮法印消息一通及返事案二通合せて一卷として居る。
  • 別尊雜記[國寶] 五十七卷 紙本墨書 一に要尊雜記と云ひ、高野常喜院心覺の撰述に係り密敎に關する行法圖像を結集したものである。

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