天球院の本堂および襖絵

天球院本堂及襖繪[國寶]
※現代の景観です。

昭和初期のガイド文

妙心寺の塔頭天球院の本堂で、妙心寺の裏門を入ったところにあります。寺伝によると池田信輝の第三女天球院殿のために、江戸時代前期の寛永7年(1630年)から12年(1635年)の間に池田光政が創立したものです。桁行七間、梁間六間、単層、屋根入母屋造、桟瓦葺 江戸時代方丈造の一標本で、特に玄関の肘木、大瓶束拳鼻、金具などは、よく当時の手法を現したもので推賞に値します。

内部の襖および杉戸の図は狩野山楽の筆と伝えて有名です。襖32面、戸襖24面には竹に虎、梅に禽鳥、籬に草花などの図を描いたもので、金地に陽春の景を美しく現した桃山式華麗な装飾画ですが、豪著の極致を尽したものとは異なり、むしろ簡素の小景を巧みに拡大して色彩の絢爛と情趣の優婉とを現しています。このほか杉戸16枚にも雪中梅、牡丹、盆栽などの図を描き、その著彩も清新にして非常に優雅です。

※底本:『日本案内記 近畿篇 上(初版)』昭和7年(1932年)発行
天球院襖絵

令和に見に行くなら

名称
天球院の本堂および襖絵
かな
てんきゅういんのほんどうおよびふすまえ
種別
見所・観光
状態
現存するが非公開
備考
公開されていません。特別公開されている場合はあります。

日本案内記原文

妙心寺の塔頭天球院の本堂で、妙心寺の裏門を入つた所にある。寺傳によると池田信輝の第三女天球院殿のために、寬永七年から十二年の閒に於て池田光政の創立したものである。桁行七閒、梁閒六閒、單層、屋根入母屋造、棧瓦葺 江戶時代方丈造の一標本で、特に玄關の肘木、大甁束拳鼻、金具などは、よく當時の手法を現はしたもので推賞に値する。

內部の襖及杉戶の圖は狩野山樂の筆と傳へて有名である。襖三十二面、戶襖二十四面には竹に虎、梅に禽鳥、籬に草花などの圖を描いたもので、金地に陽春の景を美しく現はした桃山式華麗な裝飾畫であるが、豪著の極致を盡したものとは異り、寧ろ簡素の小景を巧に擴大して色彩の絢爛と情趣の優婉とを現はして居る。この外杉戶十六枚にも雪中梅、牡丹、盆栽などの圖を描き、その著彩も淸新にして頗る優雅である。

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