大涌谷

大涌谷
※現代の景観です。

昭和初期のガイド文

強羅からケーブルで早雲山に降り、そこから西南2kmにあり、神山の爆裂火口の遺跡で地蔵尊を安置する山脚を境として東南と西北の二区に分かれ、東南を地獄沢といい、西北を閻魔台と名付けています。地獄沢には一面に盛んに硫気が慣出し、また硫黄華が沈澱し、なかには黒い泥水をたたえた水池に、泥土と熱水を間歇的に噴出するところがあり、また盛んに水蒸気や熱水を噴出するところがあります。この熱水を噴出するところに石室を設け渓流の水を加えて、強羅や仙石原へ送っています。閻魔台にはほぼ東北の方向に並ぶ噴孔が8個あり、轟々と音を発して盛んに水蒸気に硫気を噴出し、硫黄や石膏が噴孔付近に沈澱しています。しかし温泉は湧出していません。付近の岩石は一般に噴気の作用により分解され、はじめは酸化して赤褐色となるだけですが、後には玉葱の皮のように剥脱し、最後には全く退色して灰白色の粘土となります。この粘土のなかには黄鉄鉱の粉末が混ざってうす黒くなっているものもあります。また硫黄の結晶が見られます。

※底本:『日本案内記 関東篇(初版)』昭和5年(1930年)発行

令和に見に行くなら

名称
大涌谷
かな
おおわくだに
種別
見所・観光
状態
現存し見学できる
住所
神奈川県足柄下郡箱根町仙石原
参照
参考サイト(外部リンク)

日本案内記原文

强羅からケーブルで早雲山に至ればそれより西南二粁にあり、神山爆裂火口の遺跡で地藏尊を安置する山脚を境界として東南と西北の二區に岐れ、東南を地獄澤と云ひ、西北を閻魔臺と名づける。地獄澤には一面に盛に硫氣が慣出し、また硫黃華が沈澱し、中には黝色の泥水を湛へた水池に、泥土と熱水を閒歇的に噴出する處があり、また盛に水蒸氣及熱水を噴出する處がある。この熱水を噴出する處に石室を設け溪水を注加して、强羅及仙石原に送る。閻魔臺にはほゞ東北の方向に排列する噴孔が八個あり、轟々の音を發して盛に水蒸氣及硫氣を噴出し、硫黃及石膏が噴孔附近に沈澱して居る。しかし溫泉は湧出しない、附近の岩石は一般に噴氣のため作用せられて盛に分解し、初は酸化して赤褐色を呈するに過ぎないが、後には分解して玉葱の皮の如く剥脫し、遂には全く退色して灰白色の粘土となる。この粘土の中には黃鐵鑛の粉末を混じて暗黝色のものもある。また硫黃の結晶が見られる。

小田原・箱根のみどころ