箱根山

箱根山
※現代の景観です。

昭和初期のガイド文

箱根山は二重式火山で外輪山には金時山、明神ヶ岳、明星ヶ岳、鷹巣山、要害山、鞍掛山、山伏峠、三国山、丸山岳などがほぼ環状に連なり、最高点は金時山の1,213m、最も低いところはのぞき台の713mで、外輪山の平均海抜は1,000mほどです。これらが囲む旧火口は直径南北約12km、東西約6.5km、面積245km²、火山分類上ホマーテに属しています。そのなかで噴出する中央火口丘はその数4か所あり、ほぼ西北から東南に並び、最北を神山、その南に駒ヶ岳、さらに上二子山があり、最南のものを下二子山といいます。なかでも神山は海抜1,438mに達し、箱根で最も高い峰となります。その山体の東北には大涌谷、早雲地獄、湯ノ花沢などの爆裂火口があり、現在でもなお水蒸気や硫気を噴出し、また温泉を噴出しています。そのなかでも大涌谷は最も活発で泥水をたたえた熱池、泥火山、硫質噴気孔、噴泉などがあり、爆裂の勢いの名残りを示し、爆裂の結果硫出した泥流は仙石原、宮城野などの火口原に達しています。上二子と下二子の2山、神山と駒ヶ岳の2山は各々その形状、海抜などがよく類似していて、いずれも火山分類上トロイデに属し、熔岩が凝固したもので、傾斜は比較的急で、面積のわりに高いものとなっています。火口原は蹄鉄状で、西南部には水をたたえた芦ノ湖があり、その北に仙石原、東北に宮城野原があります。これらの原野はもと湖底となっていたものです。火口原の水は外輪山の一部を割って火口瀬をなしています。その北にあるものは早川といい、南にあるものは須雲川と呼ばれます。この2流は湯本で合流し、小田原の南で相模湾に注いでいます。宮ノ下、堂ヶ島のあたりは早川が外輪山を割るところで渓谷が極めて深くなっています。

※底本:『日本案内記 関東篇(初版)』昭和5年(1930年)発行

令和に見に行くなら

名称
箱根山
かな
はこねやま
種別
見所・観光
状態
現存し見学できる
住所
神奈川県足柄下郡箱根町ほか
参照
参考サイト(外部リンク)

日本案内記原文

箱根山は二重式火山で外輪山には金時山、明神嶽、明星嶽、鷹巢山、要害山、鞍掛山、山伏峠、三國山、丸山嶽などがほゞ環狀に連り、最高點は金時山の一、二一三米、最低處はのぞき臺の七一三米で、外輪山の平均高距は一、〇〇〇米內外である。その圍む舊火口は直徑南北約一二粁東西約六粁半、面積二四五方粁、火山分類上ホマーテに屬す。その內に噴出せる中央火口丘はその敷四箇に達し、ほゞ西北から東南に排列し、最北を神山と云ひ、その南に駒ケ嶽、更に上二子山があり、最南のものを下二子山と云ふ。中にも神山は海拔一、四三八米に達し、箱根諸山中の高峰である。その山體の東北腹には大涌谷、早雲地獄、湯ノ花澤などの爆裂火口を存し、現今尙水蒸氣及硫氣を噴出し、また溫泉を噴出して居る。その中大涌谷は最も盛で泥水を湛ふる熱池、泥火山、硫質噴氣孔、噴泉などがあり、爆裂の餘勢を示し、爆裂の結果硫出した泥流は仙石原、宮城野などの火口原に達して居る。上二子と下二子の二山、神山と駒ケ嶽の二山は各その形狀、高距などよく類似し、何れも火山分類上トロイデに屬し、熔岩の凝固したもので、傾斜は比較的急で、高距は座積に比して大きい。火口原は蹄鐵狀をなし、その西南部には水を湛へて蘆湖となり、その北に仙石原、東北に宮城野原がある。これらの原野はもと湖底を存して居たものである。火口原の水は外輪山の一部を破つて火口瀨をなす。その北にあるものを早川と云ひ、南にあるものを須雲川と稱す。この二流は湯本で相合し、小田原の南で相模灣に注いで居る。宮ノ下、堂ケ島のあたりは早川の外輪山を破る處で溪谷が極めて深い。

小田原・箱根のみどころ