法華寺

法華寺
※現代の景観です。

昭和初期のガイド文

[真言律宗] 駅から西北に約3km、法華寺町にあります。バスでのアクセスが可能です。寺域は、もとは藤原不比等の旧邸宅があった場所で、平城京の佐保大路に面し、東大寺転害門と向かい合っています。光明皇后が、先帝と母のために、この邸宅跡地に伽藍を創建されました。その後、奈良時代の聖武天皇13年の詔により諸国に国分寺が建立されることになり、当寺は大和の国分尼寺となって「法華滅罪之寺」と呼ばれるようになりました。古くから朝廷の帰依が厚かったものの、中世には寺運が衰退。鎌倉時代に興正菩薩によって再興され、その後、安土桃山時代の慶長年間には豊臣秀頼が片桐且元を奉行として復興させました。現存する最古の建築は、この時に再建された本堂のみとなっています。

本堂[国宝] 安土桃山時代の慶長6年(1601年)に再建されたもので、桁行7間・梁間4間、単層、屋根は四注造、本瓦葺の建築です。その構造形式は桃山建築の特徴をよく表現しています。

本尊十一面観音立像[国宝] 本堂に安置されています。寺伝では、天竺健陀羅国の工人・文答師が光明皇后のお姿を写して制作したとされています。右手を伸ばして天衣の端を軽くつまみ、左手に宝瓶を持って立つ姿です。太い眉と慈悲深い眼差し、伏し目がちで厚い唇を閉じた表情、豊かな肉体は天衣や裳の鋭い曲線によって引き締められ、全身に力強い表現がなされています。わずかに膝を曲げ腰をひねって踏み出した右足は、長く伸ばした右手によって安定感が与えられ、翻る天衣と垂れ下がる髪には、この動きのある像にふさわしい工夫が見られます。高さ約66cm、檀木の素地のままで表現された一木造りで、彩色は毛髪に群青を施し、眉と鬢髪を墨で描き、唇には朱を配し、瞳は黒と青の材料を別に嵌入しています。垂髪を金属で造っているのは、当時としては他に例を見ない新機軸でした。一般に一木造の仏像は姿勢に変化がなく、表現が鈍重に感じられがちですが、この像は全くそれを超越し、むしろ一木造特有の鋭い彫法を自在に駆使して、このような艶麗でありながら崇高な尊容を表現した卓越した技巧は、まさに驚嘆すべきもので、実に彫像の神品といえます。

  • 宝物
  • 伝梵天帝釈二天頭[国宝]木造 平安時代初期 2個
  • 仏頭[国宝]一木造 平安時代後期(藤原時代) 1個 京都博物館出展
  • 以下奈良帝室博物館出展
  • 阿弥陀三尊及び童子像[国宝]絹本著色 平安時代後期(藤原時代) 3幅
  • 維摩居士座像[国宝]乾漆 1躯
※底本:『日本案内記 近畿篇 下(初版)』昭和8年(1933年)発行
法華寺十一面観音像

令和に見に行くなら

名称
法華寺
かな
ほっけじ
種別
見所・観光
状態
現存し見学できる
住所
奈良県奈良市法華寺町882
参照
参考サイト(外部リンク)

日本案内記原文

[眞言律宗] 驛の西北約三粁、法華寺町にあり、自動車の便がある。寺地はもと藤原不比等の舊宅で、平城の佐保大路に當り、東大寺轉害門と相對す。光明皇后先帝及び先妣の爲めにこの宅址に伽藍を創始せられたのを、聖武天皇十三年の詔によつて諸國に國分寺を建てられたので、當寺を以て大和の國分尼寺となし、法華滅罪之寺と稱せられた。古來朝家の歸依厚かつたが、中世寺運衰退し、鎌倉時代には興正菩薩によつて再興され、下つて慶長年間には豐臣秀賴が片桐且元を奉行として復興せしめた。現存最古の建築はこの時に再建された本堂あるのみである。

本堂[國寶] 慶長六年再興せしもので、桁行七間梁間四間、單層、屋根四注造、本瓦葺の建築にして、その構造形式はよく桃山建築の特徴を發揮して居る。

本尊十一面觀音立像[國寶] 本堂に安置されて居る。寺傳に天竺健陀羅國の工人文答師が光明皇后の御姿をは寫し奉つたものと稱する。右手を伸べて天衣の端を輕くつまみ、左手に寶瓶を持つて立つ姿で、その太い眉に慈眼、伏目に厚い唇を閉ぢ、豐滿な肉體は天衣や裳の銳き曲線によりて引締められ、全身に力强い表現をなし、僅かに膝を曲げ腰を撿りて踏出した右足は長く伸下した右手によりて安定が與へられ、飜轉する天衣の端靡ける垂髮にはこの動的の像身に相應する用意が窺はれる。高さ約二尺二寸、檀木の素地のまゝ表した一木彫で、彩色は毛髪に群靑を施し、眉と鬢髮を墨で描き、唇には朱を指し、瞳子は黑と靑の材を別に嵌入して居る。その垂髮を金屬にて造れるは他に類例を見ない當時の新機軸である。元來一木彫成像には姿勢に變化なく、表現に鈍重の感を抱かしめる通弊があるのに、この像は全然これを超越して寧ろ一木彫特有の銳い彫法を自在に運用して、かゝる艶麗にしてしかも崇高なる尊容を造顯せし拔群の技巧は、眞に驚嘆の外なく、實に彫像の神品である。

  • 寶物
  • 傅梵天帝釋二天頭[國寶]木造 平安初期 二個
  • 佛頭[國寶]一木彫 藤原時代 一個 京都博物館出陳
  • 以下奈良帝室博物館出陳
  • 彌陀三尊及童子像[國寶]絹本著色 藤原時代 三幅
  • 維摩居士坐像[國寶]乾漆 一軀

奈良駅周辺のみどころ