浅草公園

淺草公園
※現代の景観です。

昭和初期のガイド文

市内電車雷門下車、浅草観音堂を中心として、その付近の面積約21万m²(6万4,000坪)を占めています。雷門から露店が立ち並ぶ参道を進めば仁王門に達します。門に接し向かって右に久米平内の像が立っています。ここから右に折れ小丘に上れば弁天の祠があり、そのそばにある鐘楼には江戸時代中期の元禄5年(1692年)の銘がある有名な鐘があります。また仁王門の右には観音の濡仏があります。仁王門を入って北へ進めば巨大なイチョウ数本に囲まれて本堂があり、これに向かって右には五重塔および経蔵があり、その後方には浅草神社があります。本堂の東北隅に近いあたりに九代目市川団十郎の「暫」の扮装をした銅像があり、また山東京伝の書案の碑が立っていて、その表面には弟京山の筆になる京伝の歌を、裏面には太田南畝が選んだ京伝の伝記を記しています。本堂の背後には林泉があり、西には西仏の板碑と六地蔵の石灯籠が立っています。ここからさらに西には活動写真館などが多くあり、市内の娯楽の巷となっています。本堂の西南には伝法院があり、その泉池は風趣に富んでいます。

※底本:『日本案内記 関東篇(初版)』昭和5年(1930年)発行
浅草公園

令和に見に行くなら

名称
浅草公園
かな
あさくさこうえん
種別
見所・観光
状態
現存しない
備考
浅草寺の境内地を中心として整備されていた都市公園としての浅草公園は現存しません。

日本案内記原文

市內電車雷門下車、淺草觀音堂を中心として、その附近面積約二、一〇〇アール(六萬四千坪)を占めて居る。雷門より露店の櫛比する參道を進めば仁王門に達する。門に接し向つて右方に久米平內の像が立つ。これより右方に折れ小丘に上れば辨天の祠あり、その傍にある鐘樓には元祿五年の銘ある有名なる鐘がある。また仁王門の右には觀音の濡佛がある、仁王門を入りて北進すれば巨大なる公孫樹數本に取まかれて本堂があり、これに向つて右方には五重塔婆及經藏があり、その後方には淺草神社がある。本堂の東北隅に近きあたりに九代目市川團十郞の「暫」の扮裝をした銅像があり、また山東京傳の書案の碑が立つ、その表面には弟京山の筆になる京傳の歌を、裏面には太田南畝の撰になる京傳の傳記を刻す。本堂の背後には林泉あり、西方には西佛の板碑及六地藏の石燈籠が立つ。これより更に西方には活動寫眞館などが多く、市內の娛樂の巷となつて居る。本堂の西南方には傳法院があり、その泉池は風致に富んで居る。

下谷・浅草のみどころ