東京とその近郊

とうきょうとそのしゅうへん

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東京とその近郊ガイド

【東京市】関東平野の南部、東京湾の北岸に位置し、隅田川を挟んで西部は低い台地で山ノ手といい、東部は低く平らな沿海平野で下町と呼ばれます。山ノ手の基盤は第三紀層でその上を洪積層が覆い、ローム層が主に表層を構成しています。いわゆる赤土と名づけられるものはこれです。下町は沖積層で、現在も河辺や海浜に堆積しつつある新地層です。

この地はもとは江戸と呼ばれ、徳川幕府の所在地で、おおよそ300年間その政治の中枢となってきましたが、明治元年(1868年)ここに首都を移し、江戸から改めて東京と称しました。鎌倉時代は江戸太郎が住んでいたところで、その子である江戸太郎重長は源頼朝に仕えたことが吾妻鏡に記されています。それ以来江戸氏は南北朝の頃までこの地に土着し、その館は後の江戸城の付近の地にあったといいます。その後室町時代には上杉氏の領地となり、その将である太田道灌が長禄元年(1457年)に江戸城を築いて拠点としましたが、後に北条氏の所有と移りました。天正18年(1590年)豊臣秀吉が北条氏を滅ぼし、その旧領である関東を徳川家康に与えたことにより、家康が江戸を居城としました。そのため江戸は富と権力の中心となり、大小の諸侯がそれぞれ邸宅を構え、市民が多く集まり、次第に繁栄していきました。たびたび市区を改めて市街を拡張してきましたが、明暦、天和、安政などの大火の後にも市区の改正が行われました。明治維新の変乱にあっては一時衰退しましたが、その後年を追って再び繁栄を取り戻し、大正12年(1923年)の大震災後には区画の大整理を行い、近代的都市としてその面目を改めつつあり、日本の政治、軍事、学芸の中心地として、商工業もまた大いに発達し、世界の大都市のひとつとして数えられています。

市内は十五区に分かれ、中央に麹町区あり、その東に日本橋区、東南に京橋区、南に芝区、西南に麻布区、西に赤坂区、四谷区、西北に牛込区、小石川区、北に神田区、本郷区、下谷区、東北に浅草区があり、隅田川の東には本所区、深川区があります。

※底本:『日本案内記 関東篇(初版)』昭和5年(1930年)発行

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