大宮・高崎・軽井沢

おおみや・たかさき・かるいざわ

大宮・高崎・軽井沢のエリア一覧

大宮・高崎・軽井沢ガイド

上野から大宮、高崎を経て軽井沢に至る線路は名称の上からは3つに分かれます。すなわち上野~大宮間は東北本線で、大宮~高崎間は高崎線、高崎から先は信越本線です。しかしこの間直通の列車が通じています。この線路は東京から関東地方の西北部に通じる主要な交通路で数条の連絡線および地方鉄道とからんでいます。秩父地方に入るにも、妙義山の奇勝を探るにも、軽井沢、浅間山草津温泉に至るにも、この線路を利用することになります。

上野を出て上野公園の崖下に沿って北進し、西北に折れて鶯谷を過ぎ日暮里に至り右に分かれる常磐線を見送り、やがて田端駅の操車場を左に見て尾久を経て飛鳥山下の王子に至れば右に王子製絨、製紙の工場が見えます。赤羽で山手線が左から来て合流します。それから北進して間もなく荒川の鉄橋(延長844m)にかかります。橋上から右には岩槻街道の橋梁のかなたに荒川放水路が見えます。左には桜草で名高い浮間ヶ原が近く眺められます。橋を渡れば埼玉県に入り、左に燃料研究所が近く見え、右に川口町の数多い鋳物工場が特殊な屋根を見せています。やがて川口町を過ぎ右に接するユニオンビールの工場を眺め、西北に向かう稲田が左右に見えはじめます。蕨を経て麦畑の間を進み浦和に着きます。

浦和から左に市街地を望み中山道を横ぎります。そこから長く窓に並走する中山道を見ながら進みます。左窓には富士山から秩父の山々までが見え、右窓からは筑波山が眺められます。与野を出ると既に大宮操車場があって、その広い構内では沢山の貨車が絶えず行先別に仕分けられているのが見えます。このようにして大宮に着きます。

大宮を出て左に鉄道工場を見、右に東北本線を眺めて、西北に向かい上尾を過ぎ桶川を経て、松林の多いところを進み、北本宿より鴻巣に至り、中山道を横ぎり右窓に稲田を見、吹上の前後に中山道を縫い、元荒川を渡り、左より来る秩父鉄道をあわせて、また中山道を横ぎり熊谷に至ります。

熊谷を出て左に桜花で名高い熊谷堤を眺め、桑畑の間を進んで籠原を過ぎさらに松林の間を経て、深谷、岡部を通り、支度川、身馴川を渡り本庄に着きます。この間右窓外に男体、赤城、榛名の諸山が眺められ、左窓外には秩父の諸峰が見えます。

本庄から神保原を経て神流川の鉄橋(延長228m)を渡り群馬県に入ります。そこから新町を過ぎ烏川の鉄橋(延長315m)を渡り中山道を横ぎり、稲田の間を進み倉賀野を経て、左から来る上信電気鉄道をあわせて高崎に着きます。

高崎から市街を左に見て北進し、両毛線を右に分かち、西に転じて北高崎を過ぎ烏川を渡ります。このあたり右窓に榛名山が望めます。榛名富士はその中央で円錐形を示し、その左には天目山、掃部岳がそびえ、やがて裾を曳いて烏川の谷に下ります。右には奇抜な形の相馬山をはじめ二ツ岳、浅間山がそびえ、裾は利根川の谷におよびます。さらにその右には赤城火山が雄大な姿を示しています。やがて稲田の間を過ぎ、群馬八幡を経て、中山道を横ぎり、碓氷川を渡り、安中に着きます。ここから碓氷川の河流を西南に進み西に折れて磯部に至ります。

磯部から西進してようやく西北に転じ碓氷川を渡りスイッチバックして松井田に着きます。

松井田から西北に向かい、左窓に碓氷川を隔てて妙義の奇峰を仰ぎます。白雲山は最も近く、金鶏山はやや遠くその左に見え、金洞山は右にわずかに眺められます。やがて横川に着けば、左窓外に妙義山と中木沢を隔てる谷急山の諸峰が見えます。横川で電気機関車と取り換へて西北に進み、右窓に坂本町を見て西に折れ、ここから中山道が縫って碓氷峠のアプト式の線路を登ります。その勾配は1,000分の67、省線のなかで最急のものです。トンネルは全部で26個、そのなかで最も長いものは第6号トンネルで、延長542mにおよびます。途中熊平を過ぎ、ついに登って長野県に入り、西に下って海抜924mの軽井沢に着きます。

※底本:『日本案内記 関東篇(初版)』昭和5年(1930年)発行

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