筑波・水戸

つくば・みと

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筑波・水戸ガイド

常磐線の下り列車は上野を始発駅とし、まず東北本線で西北に向かい日暮里に至り、そこから東に分れて三河島を経て南千住の市街を横ぎり、東北に折れて隅田川の上流を渡ります。橋上から左に陸羽街道の千住大橋が見えます。それから左北千住の工業地に沿って進み、荒川放水路の鉄橋(延長452m)にかかります。右窓外には東武鉄道と陸前浜街道の橋梁が並びます。橋を渡って東に向かい工場の散点する稲田の間を進み、亀有を経て中川を横ぎり金町を過ぎ江戸川にかかります。この川は東京府と千葉県を界するもので、鉄橋の西端から下流1kmあまりにわたって堤防に染井吉野桜の並木があり、花の時期には大いに賑わいます。橋を渡ればやがて北に折れて松戸に着きます。

松戸を出て陸前浜街道に沿って東北に向かい、流山鉄道の左に分かれる馬橋を過ぎ、右に万満寺を望み、北小金に至り開墾の進む小金ヶ原に入り、柏で総武鉄道を左右に見、右に手賀沼の水面を望み、我孫子に着きます。ここは成田線の分かれるところです。

我孫子を出て東に向かい湖北を経て台地を下って南に折れ布佐を過ぎ、手賀沼の排水口木下川を渡り東に折れ、利根河畔の木下に着きます。それから小林を過ぎ、右の丘陵に近づき、東進して利根の分流将監川と平行し、印旛沼の排水口となる長戸川を渡り、安食に至り、それから右に印旛沼の水面を望んで、下総松崎を経、低地の稲田を横ぎり、丘陵の間を進んで成田に着きます。

我孫子から東北に向かい稲田の間を過ぎ利根川の鉄橋(延長944m)を渡ります。これから川口まで約70km、橋梁の設けがありません。近く上流に並ぶのは陸前浜街道の橋梁です。橋上から筑波山が左に見えます。川の北岸は取手で常総鉄道は左に分れて下館に至ります。藤代を過ぎさらに小貝川を渡れば佐貫に着きます。竜ヶ崎鉄道(佐貴竜崎間4.5km)はここから右に分かれます。左には半久沼が見えます。この沼は漁利が多いので東京から釣魚に来る人が少なくありません。

佐貫から沿線の畑にブドウを栽培している風景を見つつ牛久のブドウ酒産地を過ぎ、荒川沖に至れば右窓外に霞ヶ浦海軍航空隊に通ずる軍道を見、その前途に欧洲戦争の戦利品である大格納庫を望みます。やがて右に霞ヶ浦の水面を眺めて土浦に着きます。

土浦を出て東北に向かい、左に分かれる筑波鉄道を見送り、丘陵の間に入り神立を過ぎ、恋瀬川の谷に下り高浜を過ぎ西北に折れ石岡に至ります。鹿島参宮鉄道はここから右に分れて玉造方面に向かいます。これから北に転じ羽鳥、岩間を経て涸沼川を渡り左から来る水戸線を合わせ友部に至ります。

友部から西に向かい左に分かれる常磐線を見送って平野の間を進めば、やがて宍戸に着きます。これから西北に折れ山地を経て笠間盆地に入り、笠間を過ぎます。それからやや進んで西南に転じ左右山の迫る間に稲田、福原を経て西北に折れ、羽黒盆地に出て加波山を左に望み羽黒に着きます。羽黒を出て筑波鉄道の分岐する岩瀬に至り、西南に向かい山地を去って平野に出て、新治に至ります。これから常に左窓に筑波山の双峰が望まれます。小貝川を渡り西に向かい下館に至れば常総鉄道は左に、真岡線は右に分かれます。さらに川島を過ぎ鬼怒川を渡り結城を経て小山に着きます。

主として栃木県の東南部に通ずるもので、米産地の久下田、木綿織を出す真岡、陶器を産する益子、煙草工場のある茂木を連ねます。

友部から平野のなかを東に向かい内原、赤塚を過ぎ左に千波湖を望み、右に水戸市街の一部と常磐公園を見て水戸に着きます。

水郡線は水戸と福島県の郡山とを連ねる計画で、南北の両方面から工事が進められています。その南線は水戸を出て北に向かい那珂川を渡り上菅谷から支線を太田に分ち、本線は久慈川の渓谷に入り大宮町を経て大子に至ります。

水戸を出て東に向かい左に水郡南線を分ち、下市の市街を横ぎり東北に転じ、那珂を渡り、勝田で右から来る湊鉄道を合わせ佐和を過ぎ石神に至ります。右に分かれる村松軌道(石神阿漕間3.9km)は虚空蔵尊で名高い阿漕に通じます。石神から東北に進み久慈川を渡れば常北電気鉄道(大甕太田間11.6km)を横ぎり、久慈の市街を右に見て大甕に着きます。

大甕から北進して多賀山脈を左に見つつ沿海の小平野を辿り下孫を過ぎ海岸に近づき、左窓に日立鉱山の大煙突を見て助川に着きます。

助川から北進し左に日立の市街地を見、遠く神峰山を望み小木津を過ぎ、これから長く陸前浜街道を縫って行きます。川尻を経て海浜に近づき花貫川を渡り高萩に着きます。

高萩から赤浜、小野矢指の2トンネルを過ぎ、打開けた平野に出て大北川を渡り磯原を経て右に天妃山、二ツ島を望み、さらに二ツ島トンネルをぬけて、右に大津の市街を眺め、里根川を渡り、関本に着きます。それから第一勿来トンネルを過ぎ福島県磐城国に入り、左に遠く丘上の勿来関址の碑を望み、第二勿来トンネルを経て勿来に着きます。

※底本:『日本案内記 関東篇(初版)』昭和5年(1930年)発行

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