奥多摩・富士五湖・甲府

おくたま・ふじごこ・こうふ

奥多摩・富士五湖・甲府のエリア一覧

奥多摩・富士五湖・甲府ガイド

中央線は飯田町を始発駅とし新宿から武蔵野を西走し、八王子を経て小仏峠を越え、桂川の流域に出てさらに笹子の大トンネルを通過して、甲府盆地に入り甲府に至ります。多摩陵に参拝するにも、吉田口から富士に登山するにも、昇仙峡の勝を探るにも、八ヶ岳に登るにもすべてこの線を利用します。

新宿を出て山手線を右に見て、西に直進、大久保、東中野を経て中野に至ります。

中野から右に電信連隊の無線電信柱を見、田園住宅の風景がある高円寺、阿佐ヶ谷、荻窪、西荻窪を経て吉祥寺に至ります。

吉祥寺から左に井ノ頭恩賜公園の松林を見、右に桑園麦圃のかなたに東京市水道の境浄水場を示す水門塔を望み、玉川上水を横ぎり武蔵境を過ぎ武蔵野の気分の濃厚な武蔵小金井に着きます。左遠く東京天文台の無線電信の鉄塔を望み国分寺を経て、右に川越線を見、森林がますます多くなるところを過ぎ国立を経て立川に至ります。

ここから青梅鉄道は西北に向かい拝島に至って武蔵岩井に至る五日市鉄道を分岐し、さらに多摩川に沿って青梅町を経て御岳に達しています。

立川から青梅鉄道線を右に見て西南に折れ、右窓に関東山脈の諸山を望み、多摩川の鉄橋(延長405m)を渡り、甲州街道を横ぎります。これから日野、豊田の2駅を過ぎ、左に多摩丘陵地を見、浅川を渡り西に折れて、左から横浜線を合せ八王子に着きます。

八王子を出て右に市街を眺め西南に向かい、桑畑の間を過ぎ、右窓に多摩御陵参道の南浅川橋を望み、皇室御専用の東浅川駅を過ぎると間もなく浅川に着きます。

浅川から山間に入り、甲州街道を横ぎる小トンネルを過ぎ、1,000分の25の勾配を上り、高尾山の北麓を経て小仏トンネル(延長2,538m)を過ぎ、神奈川県に入り、さらに5個のトルネルを経て相模川の畔に出て与瀬に着きます。それからまた10個のトンネルを過ぎ山梨県に入り、さらに1個のトンネルを経て上野原に至ります。この間左窓に相模川の急流が時々眺められます。

上野原から相模川の上流桂川の左岸に沿って西進します。北から来る支流鶴川を渡り、八ツ沢の発電所を右に見てトンネルを潜ること2回四方津に出て、さらに8個のトンネルをぬけて西沢川を横ぎり鳥沢から右に扇山(海抜1,139m)を望み、西北に折れ4個のトンネルを経て西に転じ桂川の峡流を渡ります。この時右上流に有名な猿橋が眺められます。その間に八ツ沢発電所に導かれる用水の樋橋が低く見えます。やがて猿橋に着きます。

猿橋から西進し駒橋発電所の上を通過し、六条の導水鉄管の下を潜り、発電余水の滝を見下し右に岩殿山を仰ぎ大月に至ります。ここは吉田口富士登山者の下車駅です。

大月から下り列車は補助機関車を付けて西進します。まず桂川の本流を渡ってその支流笹子川を右に見て1,000分の25の勾配を上り、鉄橋を渡ること2回、初狩に着きます。このあたりは屋上に石を並べた人家が見られます。スイッチバックして初狩を出て、右に滝子山(海抜1,591m)を仰ぎ、甲州街道を縫って西進し、またもスイッチバックして笹子に至ります。

笹子を出ると間もなく西北に折れ笹子トンネルに入ります。トンネルは長さ4,656mその最高点は海抜1,057m、明治35年(1902年)に開通したもので工費約200万円を要したといいます。通過するのに7分半を要します。日本の鉄道のトンネルのなかで現在最長のものです。トンネルを出て鉄橋を渡り初鹿野に着きます。

初鹿野から右に天目山に達する田野の谷を望み、左線路に近く大杉と仰ぎ、1,000分の25の勾配となっています。3個のトンネルを過ぎ勝沼に着きます。

勝沼からスイッチバックして北進すれば線路に近く葡萄園を眺め、左に甲府盆地が展開し、遠く甲斐駒ヶ岳が仰がれます。やがて3個のトンネルを過ぎ右に大菩薩嶺を見て西北に折れ、清水川を渡り塩山に着きます。

塩山を出て西に向かい右に円錐形をなす塩山を見、左御坂山脈の上にわずかに山頂を現す富士山を望み、西南に折れて桑畑の間を経、日下部を過ぎ、笛吹川を渡り石和に着きます。

石和から西に向かい右に大蔵寺山を望み、葡萄畑の間を進み、酒折を過ぎ右に酒折宮址を見、また善光寺の大廈を眺め、左から来る富士身延鉄道線と並んで甲府市街の西北隅を巡り、左に舞鶴公園の謝恩碑を仰ぎ甲府に着きます。

※底本:『日本案内記 関東篇(初版)』昭和5年(1930年)発行

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