定山渓温泉

定山溪溫泉
※現代の景観です。

昭和初期のガイド文

苗穂駅の西南30km、電車の便があります。札幌からは札幌駅前から自動車に乗るか、市内電車で豊平駅に行って、そこから定山渓行の電車に乗るのがいいです。

北海道の代表的温泉のひとつで、札幌に入ってここに足を延ばさない人はほとんどいないといっていいです。温泉場は札幌市を貫流する豊平川の上流渓谷にあり、電車も多くその川に沿って走っています。途中には真駒内の牧場や、石切山、八剣山、簾舞瀞などの景勝地があり、一の橋付近からは谷は深く川の流れも急で風景はますますよくなります。

温泉の発見は古いものですが、浴場を開いたのは明治4年(1871年)で越前の行脚僧定山の出願により、開拓使が道を整備し浴室を建てて定山に管理させたのが始まりです。海抜約300m、原始林に覆われた峰が川に迫るところ、旅館、浴場、料亭などが川を挟んで軒を並べ、遊楽的な歓楽郷となっています。

温泉は無色透明の単純泉でやや塩分を含み、温度94度、冷却して浴用に供しています。神経系諸症、リウマチ、腺病、胃腸病などに効くといいます。河畔いたるところから温泉が湧出しているので、冬季豊平川の水量が減少した際は、月見橋の下あたりは寒中水泳ができるくらいに温かくなります。

付近には白糸の滝、錦橋、二見岩、舞鶴瀞、銚子口などの景勝があり、やや離れて豊平峡の勝境や薄別鉱泉があります。近く定山渓から薄別鉱泉を経て中山峠を越え、喜茂別、留寿都を通って向洞爺から洞爺湖畔に沿って洞爺湖温泉に至る自動車の便が開ける予定です。旅館は定山渓ホテル、鹿の湯クラブ、定山園、章月、高山、ラヂオカルク、錦ホテル。

※底本:『日本案内記 北海道篇(五版)』昭和11年(1936年)発行
定山渓温泉 定山渓

令和に見に行くなら

名称
定山渓温泉
かな
じょうざんけいおんせん
種別
温泉
状態
現存し見学できる
住所
北海道札幌市南区定山渓温泉
参照
参考サイト(外部リンク)

日本案内記原文

苗穗驛の西南三〇粁、電車の便がある。札幌からは札幌驛前から自動車によるか、市內電車で豐平驛に行き、そこから定山溪行の電車によるがよい。

北海道に於ける代表的溫泉の一つで、札幌に入つてこゝに足を延ばさぬ人は殆ど無いと云つてよい。溫泉場は札幌市を貫流する豐平川の上流溪谷にあり、電車も多くその川に沿つて走つて居る。途中には眞駒內の牧場や、石切山、八劍山、簾舞瀞などの勝があり、一の橋附近からは谷深く水急に景致いよいよ加はるのである。

溫泉の發見は古いが、浴場を開いたのは明治四年で越前の行脚僧定山の出願により、開拓使の手によつて道を通じ浴室を建てゝ定山に管理せしめたのが始まりである。海拔約三〇〇米、原始林に蔽はれた峯巒の流に迫るところ、旅館、浴場、料亭など川を挾んで相對して軒を竝べ、遊樂的な歡樂鄕をなして居る。

溫泉は無色透明の單純泉でやゝ鹽分を含み、溫度九十四度、冷卻して浴用に供する。神經系諸症、リウマチス、腺病、胃腸病などに效くと云ふ。河畔至るところ溫泉の湧出を見るので、冬季豐平川の水量減少の際は、月見橋の下あたりは寒中水泳の出來るほど溫かくなるのである。

附近には白絲の瀧、錦橋、二見岩、舞鶴瀞、銚子口などの勝があり、やゝ離れて豐平峽の勝境や薄別鑛泉がある。近く定山溪より薄別鑛泉を經て中山峠を越え、喜茂別、留壽都を通りて向洞爺から洞爺湖畔に沿うて洞爺湖溫泉に至る自動車の便が開ける豫定である 旅館 定山溪ホテル、鹿の湯クラブ、定山園、章月、高山、ラヂオカルク、錦ホテル。

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