札幌周辺のスキー場

札幌附近スキー場
※現代の景観です。

昭和初期のガイド文

冬の札幌はスキーの都です。市の郊外、三角山、宮ノ森、円山などを中心として日本の競技スキーの殿堂ともいえるほど、地形、雪質、設備ともに最も優秀で、全日本的な大会はおおむねこの地を会場として行われます。大倉山のジャンプ台は、実に日本一の優秀な設備で、75m以上の飛躍ができ日本の一流のジャンパーはみなこのシャンツェで技を競い、また最高記録もこの台で作られています。

またこれに連なる手稲山、奥手稲山にわたり50キロのコースなども自由に採ることができ、競技場として各種条件を備えている点は、現在ではまず日本一といえます。また手稲山や奥手稲山は札幌、小樽等の人々にとって、スキーツアーの理想郷として10以上のヒュッテが設備され、山スキーの楽しみを充分に満喫することができます。シラカバの美林や、空へ伸びる針葉樹林の樹氷の美を静かに味わいながら、ヒュッテからヒュッテを廻る多くのスキーツアーを楽しむことができるのも大きな特色です。

主な練習場としては三角山と円山一帯です。

円山スロープと三角山 札幌駅から電車で西二十丁目まで行き、斜左に市街を縫って約1kmで円山南面のスロープに出ます。付近には一般向けの練習スロープが随所にあり、常に多くのスキーヤーが集まっています。ここから三角山麓一帯にまたがる約3kmの間は、広い各種スロープがあり、三角山付近には東洋一とされる大倉山シャンツェを初め、記念シャンツェがあります。競技会の中心となる宮の森には、休憩小屋、食堂などの設備もよく、札幌神社を経て宮の森付近までは札幌からスキー場行きのバスが通っています。ここから琴似駅付近までシルバースロープが続き、いたるところ練習に適しています。雪量は1m内外で、12月中旬から3月まで練習に好適です。いつでも数百のスキーヤーを見ることができます。

札幌を中心とする主なるスキーコースとしては、まず第一に手稲山、奥手稲山を中心とする一帯のヒュッテ巡りです。

手稲山 標高1,023m、夏山としてはほとんど人を集めませんが、スキー登山としては最も大衆的で、雪の手稲山は週末ごとに幾百のスキーヤーがいたるところにスキーのシュプールを描いて、思い思いのコースへ入って行く様子は驚嘆するほかありません。

軽川駅から小学校裏のカラマツ林の丘陵に通じる夏道に沿って登り、406mの丘を経て前方のシラカバ林の尾根に登ると、右手の沢にパラダイスヒュッテがあります。駅から約5.5km、約2時間を要します。ヒュッテは北大スキー部の建設で、収容約30名、番人もいて宿泊できます。ヒュッテから手稲山頂上まで約2.5km、1時間半で登ることができます。山頂付近はダケカンバと、トドマツの混交林で樹氷が美しく、札幌市街や、石狩平野、石狩湾の展望がよく、原生林に覆われる奥手稲山を初め、余市、朝里、白井などの山々を望むことができます。

帰路はヒュッテから大曲コースへ廻って降りるコースも面白く、いずれによっても2時間程度です。またパラダイスヒュッテから奥手稲山の家へ登ることもできます。この間約8km、3時間行程です。いずれも指導標があります。

奥手稲山 手稲山に連なる針葉樹林の美しい静かな林に包まれ、その疎林の間に変化のあるスロープが随所に散在し札幌鉄道局直営の山の家があります。山の家は収容人員48名で番人がいて、食事もでき、寝具もすべて完備し、季節中は銭函駅との間に電話の認備があり、夜間照明があって、この山奥で夜間もスキーを楽しむことができます。山の家を中心として間近にユートピアのスロープがあり、どこまでも雪に飾られた巨大な針葉樹の疎林と、ダケカンバの間の滑降は北海道特有な山岳スキーを味わうことができます。ここからヘルベチアヒュッテまで6km、シラカバヒュッテを経て朝里岳、余市岳方面へのツアー、それから小樽方面へ降りるもよく、ヘルベチアから春香山の銀嶺荘を巡って銭函へ降りるコースまたはヘルベチアヒュッテを経て定山渓へ降りることもできます。手稲山塊のヒュッテ巡りの中心となり、スキーツアーの人々の最もよい休泊地です。

登山路としては大体3つの登路がありますが、最も一般的な幹線コースとしては、銭函駅から9km、約4時間行程です。駅から東の踏切を渡り、高台から天狗山の東側をわたり、尾根伝いに660mの隆起を越し、800mの隆起の東側をからんで尾根を登ると奥手稲山頂上です。ここから一旦東の鞍部に降り、さらに南東に向かって針葉樹林を滑降して小さな谷を渡り、斜右に山腹をからむと山の家に出ます。この間指導標があり、吹雪の日には電話線に沿って進めば迷うようなことはありません。

春香山 標高906m、奥手稲山に連なりその前衛となっています。針葉樹と広葉樹の混交林に包まれ、北側に大きなゲレンデを持っています。北海タイムス社建設の銀嶺荘ができてからスキーの人々が多数入るようになったところで、銭函駅から銭函峠を越えて約7km、3時間行程です。奥手稲山の家へは6km、ヘルベチアヒュッテへは5km、峠の小屋へは6kmです。銀嶺荘は収容人員約50名、番人がいて、宿泊できます。

百松沢山、鳥帽子山 標高1.038m、烏帽子山は1,169m、変化あるコースに富み熟達者に適しています。

札幌駅から電車で円山終点に行き、小別沢、左股を通り、常次沢の左に別れる沢を登りつめ、尾根伝いに達します。約12km、5時間行程です。烏帽子山へはさらに頂上からいったん降りて尾根を伝うと百松沢山から約2kmで頂上に達します。

烏帽子山から定山渓へは木挽沢を降りて出ることができますが、相当熟達者向けのコースです。奥手稲山の家から百松沢山へは、迷沢山を経て尾根伝いに達するコースがあります、この間約12km、5時間半を要します。

※底本:『日本案内記 北海道篇(五版)』昭和11年(1936年)発行
手稲山 大倉シャンツェ

令和に見に行くなら

名称
札幌周辺のスキー場
かな
さっぽろしゅうへんのすきーじょう
種別
レジャー
状態
状態違うが見学可
備考
円山~三角山のあたりは現在スキー場となっておらず、ほかゲレンデとしては現存しないものが多いです。
住所
北海道札幌市
参照
参考サイト(外部リンク)

日本案内記原文

冬の札幌はスキーの都である。市の郊外、三角山、宮ノ森、圓山などを中心としては我が國競技スキーの殿堂とも云ふべく、地形、雪質、設備ともに最も優秀で、全日本的な大會は槪ねこの地を會場として行はれる。大倉山のジャムプ臺は、實に我が國一の優秀な設備で、七五米以上の飛躍が出來我が國一流のジヤムパーは悉くこのシャンツェで技を競ひ、また最高記錄もこの臺で作られて居る。

またこれに連る手稻山、奧手稻山に亙り五〇キロのコース等も自由に採ることが出來る、競技場として諸種の條件を具備して居る點は、現在では先づ我が國一と云ふことが出來る。また手稻山や奧手稻山は札幌、小樽等の人々にとつて、スキーツーアの理想鄕として十餘のヒュッテが設備され、山スキーの興味を充分に滿喫することが出來る。白樺の美林や、天を摩す針葉樹林の樹氷の美を靜かに味ひ乍ら、ヒュッテからヒュッテを廻る幾多のスキーツーアを樂しむことが出來るのも大きな特色である。

主なる練習場としては三角山と圓山一帶である。

圓山スロープと三角山 札幌驛から電車で西二十丁目まで行き、斜左に市街を縫うて約一粁で圓山南面のスロープに出る。附近には一般向の練習スロープが隨所に求められ、常に多くのスキー家が蝟集して居るこれから三角山麓一帶に跨がる約三粁の閒は、廣濶な各種のスロープがあり、三角山附近には東洋一と稱せらるゝ大倉シャンツェを初め、記念シャンツェがある。競技會の中心をなす宮の森には、休憩小屋、食堂などの設備もよく、札幌神社を經て宮の森附近までは札幌からスキー場行のバスが通つて居る。こゝから琴似驛附近までシルバースロープが續き、到る處練習に適して居る。雪量は一米內外で、十二月中旬から三月まで練習に好適である。如何なる日にも數百のスキーヤーを見ることが出來る。

札幌を中心とする主なるスキーツーアコースとしては、先づ第一に手稻山、奧手稻山を中心とする一帶のヒュッテ巡りである。

手稻山 標高一、〇二三米、夏山としては殆んど興味を惹かないが、スキー登山としては最も大衆的で、雪の手稻山は週末每に幾百のスキー家が到る處にスキーのシプールを印して思ひ思ひのコースへ入つて行くことは驚嘆の外はない。

輕川驛から小學校裏の落葉松林の丘陵に通する夏道に沿うて登り、四〇六米の丘を經て前方の白樺林の尾根に登ると、右手の澤にパラダイスヒュッテがある。驛から約五粁半、約二時閒を要する。ヒュッテは北大スキー部の建設で、收容約三十名、番人も居り宿泊出來る。ヒュッテから手稻山頂上まで約二粁半、一時閒半で登られる。山頂附近は嶽樺と、「とど松」の混淆林で樹氷が美しく、札幌市街や、石狩平野、石狩灣の展望が良く、原生林に蔽はれる奧手稻山を初め、余市、朝里、白井などの山々を望むことが出來る。

歸路はヒュッテから大曲コースへ廻つて降るコースも興味が多く、何れによつても二時閒程度である。またパラダイスヒュッテから奧手稻山の家へ登ることも出來る。この閒約八粁、三時閒行程である。何れも指導標がある。

奧手稻山 手稻山に連る針葉樹林の美しい靜かな林に包まれ、その疎林の閒に變化あるスロープが隨所に散在し札幌鐵道局直營の山の家がある。山の家は收容人員四十八名で番人が居り、食事も出來、寢具一切完備し、季節中は錢函驛との閒に電話の認備があり、夜閒照明があつて、この山奧で夜閒もスキーを樂しむことが出來る。山の家を中心として閒近にユートピアのスロープがあり、何處までも雪に飾られた巨大な針葉樹の疎林と、嶽樺の閒の滑降は北海道特有な山嶽スキーを味ふことが出來る。こゝからヘルベチヤヒュッテまで六粁、白樺ヒュッテを經て朝里嶽、余市嶽方面へのツーア、それから小樽方面へ降るもよく、ヘルベチヤから春香山の銀嶺莊を巡つて錢函へ降るコースまたはヘルベチヤヒュッテを經て定山溪へ降ることも出來る。手稻山塊のヒュッテ巡りの中心をなし、スキーツーアの人々の最も良き休泊地である。

登山路としては大體三つの登路があるが、最も一般的な幹線コースとしては、錢函驛から九粁、約四時閒行程である。驛から東の踏切を渡り、高臺から天狗山の東側を亙り、尾根傳ひに六六〇米の隆起を越し、八〇〇米の隆起の東側をからんで尾根を登ると奧手稻山頂上である。こゝから一旦東の鞍部に降り、更に南東に向つて針葉樹林を滑降して小さな谷を渡り、斜右に山腹をからむと山の家に出る。この閒指導標があり、吹雪の日には電話線に沿うて進めば迷ふ樣なことはない。

春香山 標高九〇六米、奧手稻山に連りその前衞をなして居る。針葉樹と濶葉樹の混淆林に包まれ、北側に大きなゲレンデを持つて居る。北海タイムス社建設の銀嶺莊が出來てからスキーツーアの人々が多數入る樣になつた處で、錢函驛から錢函峠を越えて約七粁、三時閒行程である。奧手稻山の家へは六粁、ヘルベチヤヒュッテへは五粁、峠の小屋へは六粁である。銀嶺莊は收容人員約五十名、番人が居り、宿泊出來る。

百松澤山、鳥帽子山 標高一、〇三八米、烏帽子山は一、一六九米、變化あるコースに富み熟達者に適する。

札幌驛から電車で圓山終點に行き、小別澤、左股を通り、常次澤の左に別れる澤を登りつめ、尾根傳ひに達する。約一二粁、五時閒行程である。烏帽子山へは更に頂上から一旦降つて尾根を傳ふと百松澤山から約二粁で頂上に達する。

烏帽子山から定山溪へは木挽澤を降つて出ることが出來るが、相當熟達者向のコースである。奧手稻山の家から百松澤山へは、迷澤山を經て尾根傳ひに達するコースがある、この閒約一二粁、五時閒半を要する。

札幌のみどころ