富士五湖

富士五湖
※現代の景観です。

昭和初期のガイド文

富士山の東北麓から、北麓を巡り西北麓に至る間に、富士山頂を中心とする半径16kmの円周上に連なる山中、河口、西、精進、本栖の諸湖を総称して富士五湖といいます。これらはもと富士山の噴起のために、その北を巡る御坂山脈その他との間に生じた、新月形の水面の変化により形成されたものです。その東北部をなすものは桂川の谷に排水して一時は著しく水位が低下しましたが、山中丸尾の溶岩流により堰き止められて山中湖が独立しました。北部のものは同じ桂川の谷に注ぐ排水路によって一時は乾涸しましたが、貞応6年の剣丸尾熔岩流のために堰かれて河口湖ができました。その西では青木原熔岩流と大室山熔岩流とのために三分されて西、精進、本栖の三湖と変じたものです。これらの五湖は富士を背景とし、季節の推移に従い、付近の植物景の変化を来し、絶佳なる風景を占有しています。

※底本:『日本案内記 関東篇(初版)』昭和5年(1930年)発行

令和に見に行くなら

名称
富士五湖
かな
ふじごこ
種別
見所・観光
状態
現存し見学できる
住所
山梨県
参照
参考サイト(外部リンク)

日本案内記原文

富士山の東北麓より、北麓を巡り西北麓に至る閒に、富士山頂を中心とする半徑一六粁の圓周上に連る山中、河口、西、精進、本栖の諸湖を總稱して富士五湖と云ふ。これらはもと富士山の噴起のために、その北を繞れる御坂山脈その他との閒に生じたる、新月形の水面の變化により形成せられたものである。その東北部をなすものは桂川の谷に排水して一たびは著しく水位が低下したが、山中丸尾の溶岩流により堰き止められて山中湖が獨立した。北部のものは同じ桂川の谷に注ぐ排水路により一たびは乾涸したが、貞應六年の劍丸尾熔岩流のために堰かれて河口湖が出來た。その西では靑木原熔岩流と大室山熔岩流とのために三分せられて西、精進、本栖の三湖と變じたのである。これらの五湖は富士を背景とし、季節の推移に從ひ、附近の植物景の變化を來し、絕佳なる風景を占有して居る。

吉田・富士五湖のみどころ