長福寺

長福寺[眞言宗]
※現代の景観です。

昭和初期のガイド文

片上鉄道周匝駅の東7km、福本村真木山の頂上にあります。奈良時代の天平宝字元年(757年)の創建で鑑真和尚の開基と伝わる古寺で、現在鎌倉時代の三重塔および古仏像を所蔵しています。

三重塔[国宝] 方三間三重の塔で、屋根は上層杮葺ですが、下二重は現在茅葺になっています。

弘安8年(1285年)鎌倉時代の建築で、均衡の整った外観を備え、内部須弥壇には四仏を安置し、檫柱にはもと彩絵のあった痕跡を遺しています。

  • 宝物
  • 十一面観音立像[国宝] 1体 木造、鎌倉時代の作と思われますが、面貌も優美というほどでなく、衣服の表現にも統一性の美がかけています。
  • 十二天像[国宝] 12幅 絹本著色、伝増吽筆、室町時代に東寺の十二天屏風を模写したもので増吽は南北朝から応永年間の人ということですので絵の時代と合致しています。豊麗な彩色がよく残っています。
  • 不動明王像[国宝] 1幅 絹本著色、構図の珍らしい像で中央の不動および2童子、その前面に地蔵菩薩、竜背に乗った菩薩および天部の像三体比丘等種々の像を描いたもので鎌倉時代の作です。
  • 両界曼荼羅図[国宝] 2幅 絹本著色、両幅とも室町時代の作と思われるものでよく保存されています。
※底本:『日本案内記 中国・四国篇(初版)』昭和9年(1934年)発行

令和に見に行くなら

名称
長福寺
かな
ちょうふくじ
種別
見所・観光
状態
現存しない
備考
昭和3年(1928年)に山上から現在の中腹の位置に移転していますので、当時の場所には現存しません。

日本案内記原文

片上鐵道周匝驛の東七粁、福本村眞木山の頂上にある。天平寶字元年の創建で鑑眞和尙の開基と傳ふる古寺で、今鐮倉時代の三重塔婆及古佛像を藏して居る。

三重塔婆[國寶] 方三閒三重の塔婆で、屋根は上層杮葺であるが、下二重は今茅葺になつて居る。

弘安八年鐮倉時代の建築で、權衡の整つた外觀を備へ、內部須彌壇には四佛を安置し、檫柱にはもと彩繪のあつた痕跡を遺して居る。

  • 寶物
  • 十一面觀音立像[國寶] 一軀 木造、鐮倉時代の作と思はれるが、面貌も優美と云ふ程でなく、襞積の流れも統一綜合の美を缺いて居る。
  • 十二天像[國寶] 十二幅 絹本著色、傳增吽筆、室町時代に東寺の十二天屏風を模寫したもので增吽は南北朝から應永年閒の人といふから繪の時代と相當して居る、豐麗な彩色がよく殘つて居る。
  • 不動明王像[國寶] 一幅 絹本著色、構圖の珍らしい像で中央の不動及二童子、その前面に地藏菩薩、龍背に乘れる菩薩及天部の像三體比丘等種々の像を描いたもので鐮倉時代の作である。
  • 兩界曼荼羅圖[國寶] 二幅 絹本著色、兩幅とも室町時代の作と思はるゝものでよく保存されて居る。

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