比叡山

比叡山
※現代の景観です。

昭和初期のガイド文

京都市の東北にそびえ、京都府、滋賀県にまたがる名山です。山体の大部分は古生層からなり、南半の山側には粗粒質黒雲母花崗岩が多く見られ、山頂に近い将門岩は粘板質砂岩の変化したものです。最高峰は四明ヶ岳(海抜848m)といい、東は飛騨山脈、西は金剛山脈を望むことができます。山の東側は古杉や老松で鬱蒼としていますが、西側は近年植林を始めたところです。

京都方面からの登山路は3条あります。白川道は京都から北白川を経、山中越の坂路と分かれて無動寺に至るもの、雲母坂道は雲母坂の険しい道をよじのぼって直ちに四明ヶ岳下に達するもの、走出道は八瀬村字走出から西塔黒谷の青竜寺に至るものです。しかし大正15年(1926年)12月から叡山電気鉄道が開通したため、徒歩で登る人は極めて少なくなりました。叡山電鉄の平坦線は出町柳~八瀬間、登山ケーブルカーは西塔橋~四明ヶ岳間、空中ケーブルカーは高祖谷~延暦寺間です。

比叡山は平安朝の初期延暦寺が創建され、以来法灯大いに輝き、山中寺観僧房が多く、東塔、西塔、無動寺、横川の4区に分けられます。

※底本:『日本案内記 近畿篇 上(初版)』昭和7年(1932年)発行
四明岳から京都市街を望む

令和に見に行くなら

名称
比叡山
かな
ひえいざん
種別
見所・観光
状態
現存し見学できる
住所
京都府京都市左京区、滋賀県大津市
参照
参考サイト(外部リンク)

日本案内記原文

京都市の東北に聳え、京都府、滋賀縣に跨る名山である。山體の大部分は古生層から成り、南半の山側には粗粒質黑雲母花崗岩を迸發し、山頂に近い將門岩は粘板質砂岩の變化したものである。最高峯は四明ケ嶽(海拔八四八米)と云ひ、東は飛騨山脈、西は金剛山脈を望むことが出來る。山の東側は古杉老松蓊鬱として居るが、西側は近年植林を始めたに過ぎない。

京都方面からの登山路は三條ある。白川道は京都から北白川を經、山中越の坂路と分れて無動寺に至るもの、雲母坂道は雲母坂の峻嶮を攀ぢて直ちに四明ケ嶽下に達するもの、走出道は八瀨村字走出から西塔黑谷の靑龍寺に至るものである。しかし大正十五年十二月から叡山電氣鐵道が開通したから、徒步登攀するものは極めて少くなつた。叡山電鐵の平坦線は出町柳、八瀨閒、登山ケーブルカーは西塔橋、四明ケ嶽閒、空中ケーブルカーは高祖谷、延曆寺閒である。

比叡山は平安朝の初期延曆寺が創建され、爾來法燈大いに輝き、山中寺觀僧房が多く、東塔、西塔、無動寺、橫川の四區に分けられる。

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