吉見百穴のヒカリゴケ
吉見百穴の光蘚
昭和初期のガイド文
凝灰岩、砂岩の間に設けられた260あまりの洞穴のうちその3個にヒカリゴケが生育しています。その2個は丘麓にあり、1個は丘腹にあります。その海抜は40~50mです。入口は約1m²で、内部は高さ2m、幅3mにおよびます。入口には金網が設けられて保護されています。内部に入るにしたがってヒカリゴケが盛んに生育し中央部には葉状態がよく発生し、かつこの部分からさらに内部にわたって緑色の射光が見られます。洞穴の奥の温度は32度におよびます。大気の温潤なことと光度の弱いことは、ヒカリゴケの生育に必要な条件とされています。長野、群馬、栃木などの山岳地帯ではヒカリゴケが繁殖しているところも少なくありませんが、この平野の丘陵で生育しているのは珍しいものです。
※底本:『日本案内記 関東篇(初版)』昭和5年(1930年)発行
令和に見に行くなら
- 名称
- 吉見百穴のヒカリゴケ
- かな
- よしみひゃっけつのひかりごけ
- 種別
- 見所・観光
- 状態
- 現存し見学できる
- 住所
- 埼玉県比企郡吉見町北吉見329
- 参照
- 参考サイト(外部リンク)
日本案内記原文
凝灰岩、砂岩の閒に設けられた二百六十餘の洞穴中その三個に光蘚が生育して居る。その二個は丘麓にあり、一個は丘腹にある。その海拔は四〇米乃至五〇米である。入口は約一米平方で、內部は高さ二米幅三米に及ぶ。入口には金網が設けられて保護されて居る。內部に入るに從ひ光蘚が盛に生育し中央部には葉狀態がよく發生し、且つこの部分から更に內部に亘つて綠色の射光が認められる。洞穴の最內部の溫度は九〇度に及ぶ。大氣の溫潤なることと光度の微弱なることは、光蘚の生育に必要な條件と認められる。長野、群馬、栃木などの諸縣の山嶽帶では光蘚の繁殖して居る處が少くないが、この平野の丘陵に於て生育を見るは珍とすべきである。