箕面公園

箕面公園
※現代の景観です。

昭和初期のガイド文

阪神急行箕面線箕面公園下車、箕面川の川床に沿って南北に狭長な山間の谷地で、両側の山頂までの面積85万m²におよぶ大自然公園です。大阪府が管理し、カエデの木が多く、秋季には紅葉の名所として名高いところですが、春の桜、初夏の新緑もまたまれに見る景勝となります。

園の入口に架かる一の橋を渡れば、大滝(箕面滝)まで約2kmの平坦な廻遊道が通じています。道は箕面川の西岸に沿って山や峰に挟まれて北上するようになっていて、迂余し曲折するたびに山容や川の眺めが変わり、上っていくごとに違った雰囲気があります。一の橋から渓流に沿って進めば0.5kmで滝安寺に至ります。寺は役の行者の創建と伝わり、境内弁天堂付近は桜の大樹が多いところです。さらに進むこと0.5km、漸く山迫り谷深く、渓流が岩に激しくぶつかるあたりは、修業の古場と呼ばれています。そこからなお0.5kmあまり進むと唐人戻岩と呼ばれる大岩盤があり、やがて戻岩橋を渡れば道は深渓の東岸に沿っていきます。箕面滝はここから約0.5km、直下約48m、いわゆる雌滝で全園の重心となっています。

滝の東側丘上を一目千本と名づけ、滝が見渡され、秋季は紅葉の好観賞地となっています。

一目千本から大日岳のトンネルを潜って登り続けると杉の茶屋を過ぎ、1kmあまりで雄滝に至り、道はそこから、さらに渓谷を伝って東北に通じ勝尾寺に行くことができます。廻遊道は杉の茶屋から東へ折れスベリ台を経て猿平、雲隣台、不老丘の勝地を通って園内第一の高峰一本松に出ることができます。ここは海抜300mあまり、緑の冠のような連峰を脚下にして、遠く大阪湾を展望する眺望絶佳の地です。ここから数百m引返して南へ下る道をとれば粛々谷、光の谷、極楽谷等を経て大杉森々とした地獄谷に至り、道は左右に分かれています。一方は西に向かい幽邃閑寂な谷間に入り、先の修業の古場に出る道で、もう一方は峰伝いに略南へ進み如意丘、淀の背、駒の背などを経て望海ヶ丘に至ります。ここもまたその名のように大阪湾の展望が広がる好眺望地です。そこから昼なお暗いシイの密林をくぐって急坂を下れば滝安寺の南に出て、紅葉橋を渡って廻遊道の弁天堂下に出られます。

※底本:『日本案内記 近畿篇 下(初版)』昭和8年(1933年)発行

令和に見に行くなら

名称
箕面公園
かな
みのおこうえん
種別
見所・観光
状態
現存し見学できる
住所
大阪府箕面市箕面公園
参照
参考サイト(外部リンク)

日本案内記原文

同箕面線箕面公園下車、箕面川の川床に沿うて南北に狹長な山閒の谷地で、兩側の山頂迄を劃して面積八五ヘクタールに及ぶ大自然公園である。大阪府の經營で、滿山楓樹多く、秋季紅葉の名所として名高いが、春の櫻花、初夏の新綠また稀に見る勝景を現す。

園の入口に架する一の橋を渡れば、大瀧(箕面瀧)まで約二粁の平坦な廻遊道が通じて居る。道は箕面川の西岸に沿うて翠巒重峰に挾まれて北上して居り、迂餘し曲折する每に山容水態變轉して前觀は後望と趣を異にして居る。一の橋から溪流に沿うて進めば半粁で瀧安寺に至る。寺は役の行者の創建と傳へ、境內辯天堂附近には櫻の大樹が多い。尙進むこと半粁、漸く山迫り谷深く、溪流岩に激するあたり、修業の古場と稱して居る。そこから尙半粁餘進むと唐人戾岩と稱する大岩盤があり、やがて戾岩橋を渡れば道は深溪の東岸に沿ふ。箕面瀧はこゝから約半粁、直下約四八米、所謂雌瀧で全園の重心となつて居る。

瀧の東側丘上を一目千本と名づけ、瀧が見渡され、秋季は紅葉の好觀賞地となつて居る。

一目千本から大日嶽のトンネルを潛りて登り續けると杉の茶屋を過ぎ、一粁餘で雄瀧に至り、道はそれより、尙溪谷を傳うて東北に通じ勝尾寺に行かれる。廻遊道は杉の茶屋から東へ折れスベリ臺を經て猿平、雲鄰臺、不老丘の勝地を通つて園內第一の高峰一本松に出られる。こゝは海拔三〇〇米餘、綠の冠の如き連峰を脚下にして、遠く大阪灣を展望する眺望絕佳の地である。こゝから數百米引返して南へ下る道をとれば肅々谷、光の谷、極樂谷等を經て大杉森々たる地獄谷に至り、道は左右に岐れて居る。一は西して幽邃閑寂な谷閒に入り、前記修業の古場に出で、一は峯傳ひに略南へ進み如意丘、淀の背、駒の背などを經て望海ケ丘に至る。こゝもまたその名の如く大阪灣の展望を恣にされる好眺望地である。そこから晝尙暗い椎の密林をくぐつて急坂を下れば瀧安寺の南に出で、紅葉橋を渡つて前記廻遊道の辦天堂下に出られる。

淀川北岸のみどころ