岩谷寺の薬師像

岩谷寺藥師像[國寶]
※現代の景観です。

昭和初期のガイド文

笠間駅の西南約2km、南山内付岩谷寺にあります。木造、漆箔、玉眼入、高さ1.7m、背面に

建長五年癸丑七月日従五位上行長門守藤原朝臣時朝

の刻銘があります。時朝は笠間に居城して笠間氏と号し、当時歌人として名高く、吾妻鏡によると鎌倉時代の文永2年(1265年)62歳をもって没しました。この薬師像は時朝が、その領内に造立したと伝えられる六仏のひとつで、鎌倉時代の写実風に富んだ優秀な作です。この像以外に同村弥勒堂の弥勒菩薩と、同村楞厳寺の千手観音の2体がそれとされ、いずれも銘文があります。岩谷寺にはこのほかなお1体の薬師像があります。木造漆箔の坐像で時朝造立の薬師像よりも優秀な作で、内陣の奥深く安置され、十分拝することができません。両薬師像ともに国宝に指定されています。

※底本:『日本案内記 関東篇(初版)』昭和5年(1930年)発行

令和に見に行くなら

名称
岩谷寺の薬師像
かな
いわやじのやくしぞう
種別
見所・観光
状態
現存し見学できる
住所
茨城県笠間市来栖2696
参照
参考サイト(外部リンク)

日本案内記原文

驛の西南約二粁、南山內付岩谷寺にある。木造、漆箔、玉眼入、高さ一米七(五尺七寸)背面に

建長五年癸丑七月日從五位上行長門守藤原朝臣時朝

の刻銘がある。時朝は笠閒に居城して笠閒氏と號し、當時歌人として名高く、吾妻鏡によると文永二年六十二歲を以て卒した。この藥師像は時朝が、その領內に造立したと傳へられる六佛の一で、鐮倉時代の寫實風に富んだ優秀なる作である。この像以外に同村彌勒堂の彌勒菩薩と、同村楞嚴寺の千手觀音の二軀がそれと云はれ、いづれも銘文がある。岩谷寺にはこの外尙一軀の藥師像がある。木造漆箔の坐像で時朝造立の藥師像よりも優秀なる作で、內陣の奧深く安置され、十分拜することが出來ない。兩藥師像共に國寶に指定されて居る。

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