太山寺

太山寺[天臺宗]
※現代の景観です。

昭和初期のガイド文

明石駅の東北約10km、明石郡伊川谷村前開山麓景勝の地を占め、自動車の便があります。奈良時代の霊亀年間(715~717年)の創建、開山を定恵和尚と伝えています。往古は寺運隆盛にして吉野朝時代における勢力の非常に強大であったことは、本寺所蔵の護良親王の令旨その他古文書に見られ明らかです。その後衰頽し、今日におよんでいますが、なお古建築に本堂、仁王門があり、寺宝に貴重な仏像、仏画その他多数の重宝を所蔵し、盛大であった往古を物語っています。

仁王門[国宝] 本堂から遠く離れて境内の入口にあり、屋根入母屋造、本瓦葺の八脚門で、細部に唐様の手法を示した室町時代の建築です。

本堂[国宝] 七間六面、単層、屋根入母屋造、本瓦葺の建築で高い石壇上に建っています。規模宏壮、木割雄大にして鎌倉時代の手法形式を残しています。

常行堂 本堂の一段下の右手にあり、五間四面入母屋造、江戸時代の建築ですが、本尊阿弥陀如来坐像は木造金箔押室町時代の巨像で国宝に指定されています。

三重塔 常行堂の前面に建っています。方三間、三層、屋根本瓦葺素木造、江戸時代の建築です。

  • 宝物
  • 両界曼荼羅図[国宝] 2幅 絹本著色、ひとつを大曼荼羅、ほかを小曼荼羅と称し、両者とも鎌倉時代の作ですが大曼荼羅の方がやや古いものです。
  • 法華経曼荼羅図[国宝] 1幅 絹本著色、中央の八葉蓮華中に二座の仏を描き朱縁に切金を交えて美しく画かれた精細な曼茶羅で鎌倉時代の作品です。
  • 愛染曼荼羅図[国宝] 1幅 絹本著色、内院に愛染明王を中尊として四明王、四童子を配し、外院に十二天を描いた一種の曼荼羅で鉄線描を用い鮮かな朱色が残る室町初期の作です。
  • 不動二童子像[国宝] 1幅 絹本著色、背景に山岳瀑布があり、不動を中央に二童子岩上に立ち着衣に精巧な牡丹に獅子、その他の花模様があります。第致流麗表情の写実的な室町初期の優秀な作です。
  • 不動四童子像[国宝] 1幅 絹本著色、不動両童子のほかに掌善掌悪の二童子を描いたもので彩色のよく保存されている密町時代の作です。
  • 釈迦三尊像[国宝] 1幅 絹本著色、中尊朱衣金紋の釈迦の左右に騎獅の文殊騎象の普賢を描いています。中国画の株式を伝えた鎌倉末期の作で、破損していますが、彩色はよく残っています。
  • 白衣観音像[国宝] 1幅 絹本著色、岩上に倚坐する像で前面に合掌の小童子あり、室町時代の作ですが、京都大徳寺に蔵する奥道子筆と称する観音像によく似ています。
  • 十一面観音像[国宝] 1幅 絹本著色、室町時代に中国の元画を模写したもののようです。
  • 妙法蓮華経[国宝] 32巻 紙木墨書、法華経28巻、その附属の無量義経3巻、観普賢経1巻からなるものです。天地に金銀切箔砂子を散らし裏面にも銀の切箔を散らし、巻軸の装飾にも意匠を凝らした藤原末期の優美な奉納経です。
  • 大塔宮令旨および注進状[国宝] 4通 紙本墨書、鎌倉時代の元弘3年(1333年)北条氏征伐に関するもので、常時太山寺衆徒の勢力を示す貴重な文書です。
  • 武器類[国宝] 8個 腹巻2、兜1、膝鎧3、臑当1、前立1あり、いずれもこの寺の衆徒の著用したものと思われます。
  • 十六羅漢像[国宝] 16幅 絹本著色、兆殿司筆と称しています。室町時代 奈良帝室博物館出陳
※底本:『日本案内記 近畿篇 下(初版)』昭和8年(1933年)発行

令和に見に行くなら

名称
太山寺
かな
たいさんじ
種別
見所・観光
状態
現存し見学できる
住所
兵庫県神戸市西区伊川谷町前開224
参照
参考サイト(外部リンク)

日本案内記原文

明石驛の東北約一〇粁、明石郡伊川谷村前開山麓景勝の地を占め、自動車の便がある。靈龜年閒の創建、開山を定惠和尙と傳へて居る。往古は寺運隆盛にして吉野朝時代に於ける勢力の頗る强大であつたことは、本寺所藏の護良親王の令旨その他古文書に徵して明かである。その後衰頽し、今日に及んで居るが、尙古建築に本堂、仁王門があり、寺寶に貴重な佛像、佛畫その他多數の重寶を藏し、盛大であつた往古を物語つて居る。

仁王門[國寶] 本堂より遠く離れて境內の入口にあり、屋根入母屋造、本瓦葺の八脚門で、細部に唐樣の手法を示したる室町時代の建築である。

本堂[國寶] 七閒六面、單層、屋根入母屋造、本瓦葺の建築で高き石壇上に建つて居る。規模宏壯、木割雄大にして鐮倉時代の手法形式を存して居る。

常行堂 本堂の一段下の右手にあり、五閒四面入母屋造江戶時代の建築であるが、本尊阿彌陀如來坐像は木造金箔押室町時代の巨像で國寶に指定されて居る。

三重塔婆 常行堂の前面に建つて居る。方三閒、三層、屋根本瓦葺素木造、江戶時代の建築である。

  • 寶物
  • 兩界曼荼羅圖[國寶] 二幅 絹本著色、一を大曼荼羅、他を小曼荼羅と稱し、兩者とも鐮倉時代の作であるが大曼荼羅の方が稍々古い。
  • 法華經曼荼羅圖[國寶] 一幅 絹本著色、中央の八葉蓮華中に二座の佛を描き朱緣に切金を交へて美しく畫かれた精細な曼茶羅で鐮倉時代の作品である。
  • 愛染曼荼羅圖[國寶] 一幅 絹本著色、內院に愛染明王を中尊として四明王、四童子を配し、外院に十二天を描いた一種の曼荼羅で鐵線描を用ひ鮮かな朱色を存する室町初期の作である。
  • 不動二童子像[國寶] 一幅 絹本著色、背景に山嶽瀑布があり、不動を中央に二童子岩上に立ち着衣に精巧な牡丹に獅子、その他の花模樣がある。第致流麗表情の寫實的な室町初期の優秀な作である。
  • 不動四童子像[國寶] 一幅 絹本著色、不動兩童子の外に掌善掌惡の二童子を描いたもので彩色のよく保存されて居る密町時代の作である。
  • 釋迦三尊像[國寶] 一幅 絹本著色、中尊朱衣金紋の釋迦の左右に騎獅の文殊騎象の普賢を描いて居る。支那畫の株式を傳へた鐮倉末期の作で、破損して居るが、彩色はよく殘つて居る。
  • 白衣觀音像[國寶] 一幅 絹本著色、岩上に倚坐せる像で前面に合掌の小童子あり、室町時代の作であるが、京都大德寺に藏する奧道子筆と稱する觀音像によく似て居る。
  • 十一面觀音像[國寶] 一幅 絹本著色、室町時代に支那の元畫を模寫したものゝやうである。
  • 妙法蓮華經[國寶] 三十二卷 紙木墨書、法華經二十八卷、その附屬の無量義經三卷、觀普賢經一卷より成るものである。天地に金銀切箔砂子を散らし裏面にも銀の切箔を散らし、卷軸の裝飾にも意匠を凝らした藤原末期の優美な奉納經である。
  • 大塔宮令旨及注進狀[國寶] 四通 紙本墨書、元弘三年北條氏征伐に關するもので、常時太山寺衆徒の勢力を微すべき貴重な文書である。
  • 武器類[國寶] 八箇 腹卷二、兜一、膝鎧三、臑當一、前立一あり、何れも當寺の衆徒の著用したものであらう。
  • 十六羅漢像[國寶] 十六幅 絹本著色、兆殿司筆と稱して居る。室町時代 奈良帝室博物館出陳

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