石清水八幡宮

石淸水八幡宮[官幣大社]
※現代の景観です。

昭和初期のガイド文

八幡町男山の山上にあり、京阪電車八幡駅からケーブルの便があります。男山はまた八幡山とも呼ばれ、南は洞ヶ峠を経て生駒山に連なり、北は断絶して木津、淀の二大川に臨み、展望は非常に広く天王山は水を隔てて西に望むことができます。

宮は男山八幡宮とも称し、主神応神天皇のほかに比咩大神および神功皇后を祀ります。平安時代、清和天皇の貞観元年(859年)、僧行教の奏請によって同2年(860年)に豊前国宇佐八幡神を移座したもので、式外社のなかで最も名高いところです。古来朝廷の崇敬が厚く、天元2年(979年)3月円融天皇の行幸以来、明治15年(1882年)5月明治天皇の行幸に至るまで、前後70度以上におよび、なかでも鎌倉時代の弘安4年(1281年)には亀山上皇の御参籠があって神楽を奏し蒙古の寇を祈攘されました。源氏もこの神を氏神として厚く崇敬し、源頼信は願文を奉り、その子頼義、孫義家もよく尊信して武勲を立て、源頼朝天下の権を握るにおよんで、さらに深くこの神を崇敬し、別宮を諸国に建立しました。これがため諸国の源氏は皆八幡神を氏神と仰ぎ、いたるところで八幡神社を見るようになりました。足利氏も源氏の末流であるため、特に社殿を壮大にしてその武勲を祈り、徳川氏もまた大いに尊崇を怠らず、家光の時には社殿を造営し神威いよいよ盛んでした。

例祭は古来行われた放生会の名残りで9月15日に挙行され、現在も参詣者が遠近から集まり、土産には破魔弓、紙製の鯉、鳩の簪などを買う習わしがあります。

現存の社殿は寛永18年(1641年)の建立で、本殿、外殿、舞殿、幣殿、楼門、廻廊などを備えるいわゆる八幡造で、いずれも国宝に指定されています。楼門は高さ約9m、入母屋造檜皮葺の高閣で、腰組下左右に廻廊を、前方に唐破風の向拝を出した非常に珍らしい意匠であるとともに、また実に堂々とした建築です。門を入ると本殿、外殿、舞殿、幣殿が建ち、いずれも丹塗に金色の錺金具が美しく、頭貫、長押上および欄間は一体に花鳥の彫刻透彫を充填し、手挟、木鼻、蟇股などの装飾はすべて華麗を極め、江戸初期における桃山式の手法を遺憾なく現しています。

  • 宝物
  • 男神坐像[国宝] 一体 木造著色 截金模様を施した藤原時代の作です。
  • 女神坐像[国宝] 一体 木造著色 彩色手法は男神像に同じ。
  • 八幡宮縁起[国宝] 二巻 絹本著色、絵は土佐光信と伝え、巻末に永享五年孟夏廿一日 将軍足利義教の跋文があります。
  • 太刀 銘助守作 拵糸巻太刀 一口 東京遊就館出陳。
※底本:『日本案内記 近畿篇 上(初版)』昭和7年(1932年)発行
石清水八幡宮

令和に見に行くなら

名称
石清水八幡宮
かな
いわしみずはちまんぐう
種別
見所・観光
状態
現存し見学できる
住所
京都府八幡市八幡高坊30
参照
参考サイト(外部リンク)

日本案内記原文

八幡町男山の山上にあり、京阪電車八幡驛よりケーブルの便がある。男山はまた八幡山とも稱し、南は洞ケ峠を經て生駒山に連り、北方は斷絕して木津、淀の二大川に臨み、展望頗る廣く天王山は水を隔てゝ西に望まれる。

宮は一名男山八幡宮と稱し、主神應神天皇の外に比咩大神及神功皇后を祀る。淸和天皇の貞觀元年、僧行敎の奏請によつて同二年に豐前國宇佐八幡神を移座したもので、式外社中に於て最も名高い。古來朝廷の崇敬厚く、天元二年三月圓融天皇の行幸以來、明治十五年五月明治天皇の行幸に至るまで、前後七十餘度に及び、中にも弘安四年には龜山上皇御參籠ありて神樂を奏し蒙古の寇を祈攘せられた。源氏もこの神を氏神として厚く崇敬し、源賴信は願文を奉り、その子賴義、孫義家もよく尊信して武勳を立て、源賴朝天下の權を握るに及んで、更に深くこの神を崇敬し、別宮を諸國に建立した。これがため諸國の源氏皆八幡神を氏神と仰ぎ、到る所に八幡神社を見るに至つた。足利氏も源氏の末流であるため、特に社殿を壯にしてその武勳を祈り、德川氏もまた大に尊崇を怠らず、家光の時には社殿を造營し神威彌々盛であつた。

例祭は古來行はれた放生會の名殘りで九月十五日擧行され、今も參詣者が遠近から集り、土產には破魔弓、紙製の鯉、鳩の簪などを購ふ習はしがある。

現存の社殿は寬永十八年の建立で、本殿、外殿、舞殿、幣殿、樓門、廻廊等を具備せる所謂八幡造で、何れも國寶に指定されて居る。樓門は高さ約九米、入母屋造檜皮葺の高閣で、腰組下左右に廻廊を、前方に唐破風の向拜を出したまことに珍らしい意匠であると共に、また實に堂々たる建築である。門を入ると本殿、外殿、舞殿、幣殿が建ち、何れも丹塗に金色の錺金具美はしく、頭貫、長押上及欄閒は一體に花鳥の彫刻透彫を充填し、手挾、木鼻、蟇股などの裝飾はすべて華麗を極め、江戶初期に於ける桃山式の手法を遺憾なく現はして居る。

  • 寶物
  • 男神坐像[國寶] 一軀 木造著色 截金模樣を施した藤原時代の作である。
  • 女神坐像[國寶] 一軀 木造著色 彩色手法男神像に同じ。
  • 八幡宮緣起[國寶] 二卷 絹本著色、繪は土佐光信と傳へ、卷末に永享五年孟夏廿一日 將軍足利義敎の跋文がある。
  • 太刀 銘助守作 拵絲卷太刀 一口 東京遊就館出陳。

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