常布の滝

常布ノ瀧
※現代の景観です。

昭和初期のガイド文

草津温泉の西北5km、大沢川の支流、毒水沢川にかかっています。滝は高さ20m、幅6m、その岩壁の下部は凝灰岩で比較的軟らかいものですが、上部は白根山から流出した熔岩で多少堅牢です。滝はもとその熔岩の末端にかかっていましたが、次第に退却して今日の地点まで来たものです。滝水は白根山の湯釜を水源とし、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、遊離硫酸などを多量に含み飲料には適していません。滝のかかる断崖には大小多くの洞窟が穿たれ、洞窟の最も南に位置するものには、天井から褐鉄鉱の鍾乳石が十数本垂下し、床上には同質の石筍が立っています。その鍾乳石および石筍の表面は洞窟の内側面および床上とともに、白色の石膏の結晶で覆われて雪をふりかけたように見事です。毒水沢の水に含有する遊離硫酸は、熔岩中の鉄分と化合しさらに褐鉄鉱となり、鍾乳石および石筍を成生し、水沫中の遊離硫酸は凝灰岩中の石灰と化合して、石膏の結晶を生じ、それが洞内を覆っているものです。

※底本:『日本案内記 関東篇(初版)』昭和5年(1930年)発行

令和に見に行くなら

名称
常布の滝
かな
じょうふのたき
種別
見所・観光
状態
現存し見学できる
住所
群馬県吾妻郡草津町草津
参照
参考サイト(外部リンク)

日本案内記原文

草津溫泉の西北五粁、大澤川の支流、毒水澤川に懸つて居る。瀧は高さ二〇米幅六米、その岩壁の下部は凝灰岩で比較的柔軟であるが、上部は白根山から流出した熔岩で多少堅牢である。瀧はもとその熔岩の末端に懸つて居たが、漸次退卻して今日の地點まで來たものである。瀧水は白根山の湯釜に水源を仰ぎ、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、遊離硫酸などを多量に含み飮料に適しない。瀧の懸る斷崖には大小數多の洞窟が穿たれ、洞窟の最も南に位するものには、天井から褐鐵鑛の鍾乳石が十數本垂下し、床上には同質の石筍が簇立して居る。その鍾乳石及石筍の表面は洞窟の內側面及床上と共に、白色の石膏の結晶で被はれて雪をふりかけたやうに見事である。毒水澤の水の含有する遊離硫酸は、熔岩中の鐵分と化合し更に褐鐵鑛となり、鍾乳石及石筍を成生し、水沫中の遊離硫酸は凝灰岩中の石灰と化合して、石膏の結晶を生じ、それが洞內に裏付をしたのである。

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