草津白根山

白根山(二、一〇三米)
※現代の景観です。

昭和初期のガイド文

2,103m。草津の西に位置する活火山で草津白根ともいいます。その頂上に巨大な火口があり、東西に長い楕円形となっていて長径800m、短径400m、口底に3個の火口湖があり、中央を湯釜、西を涸釜、東を水釜と呼びます。湯釜には酸性の熱水が湧き、その水色は黄青色ですが、涸釜、水釜には黄濁の冷水をたたえています。湯釜の西部には硫黄が混ざる泥土が堆積しています。この火山は明治年間からしばしば活動しました。山頂の南に多くの爆裂火口があり、そのなかで最大のものが2個連なって、ひょうたん形に水をたたえているものがあります。これを弓池といいます。草津から山頂まで8km、登山には草津を出て北に向かい、渋峠道により喬木帯に入り、谷沢を渡り、谷沢原の南部を西北に進み、そこから常布ノ滝のかかる大沢川を右に見て、ようやく草本帯に入り、芳ヶ平に達します。ここで渋峠道から左に分かれ東南に転じ、立枯の喬木が多い焼野を進み、右に火口壁を仰ぎ、西に折れ、硫黄採取の小屋に至ります。草津からここまでは駄馬の便があります。小屋から西に向かえば3kmを下って万座温泉に行くことができます。白根山の火口へは小屋から北へ進みます。砂礫の間を登ること200mで火口壁の西頂に達します。ここから涸釜が見下されます。そこから東北に向かい壁上を辿って行けば、左に一段低く湯釜が見下され、さらに進めば火口壁上の東端に達します。ここは白根山の最高点で、水釜が左方直下に見えます。

山上の展望は広く、北には近く岩菅山に対し、東には群馬県北部の諸山が波濤のように起伏するかなたに日光白根を望み、東南には裾野の麗しい赤城山および群峰がそびえる榛名山を眺め、近く本白根山、四阿山を見、遠く鼻曲山の右に浅間の噴煙が仰がれます。さらに西は飛弾山脈の山列に対し、西南には立科火山が見えます。

※底本:『日本案内記 関東篇(初版)』昭和5年(1930年)発行

令和に見に行くなら

名称
草津白根山
かな
くさつしらねさん
種別
見所・観光
状態
現存し見学できる
住所
群馬県吾妻郡草津町
参照
参考サイト(外部リンク)

日本案内記原文

草津の西方に位する活火山で一に草津白根と云ふ。その頂上に巨大なる火口あり、東西に長き楕圓形を呈し長徑八〇〇米、短徑四〇〇米、口底に三個の火口湖を存し、中央を湯釜、西を涸釜、東を水釜と稱する。湯釜には酸性の熱水が湧き、その水色黃靑色であるが、涸釜、水釜には黃濁の冷水を湛へて居る。湯釜の西部には硫黃を混する泥土が堆積する。この火山は明治年閒より屢々活動した。山頂の南に多くの爆裂火口があり、その中最大なるものが二個相接して、瓢形をなし水を湛へて居るものがある。これを弓池と云ふ。草津から山頂まで八粁、登山には草津を出て北に向ひ、澁峠道により喬木帶に入り、谷澤を渡り、谷澤原の南部を西北に進み、それより常布ノ瀧の懸る大澤川を右に見て、漸く草本帶に入り、芳ケ平に達する。こゝで澁峠道から左に分れ東南に轉じ、立枯の喬木多き燒野を進み、右に火口壁を仰ぎ、西に折れ、硫黃採取の小屋に至る。草津からこゝまでは駄馬の便がある。小屋から西に向へば三粁を下つて萬座溫泉に行かれる。白根山の火口へは小屋から北へ進む。砂礫の閒を登ること二百米で火口壁の西頂に達する。こゝから涸釜が見下される。それより東北に向ひ壁上を辿つて行けば、左に一段低く湯釜が見下され、更に進めば火口壁上の東端に達する。こゝは白根山の最高點で、水釜が左方直下に見える。

山上の展望は廣く、北には近く岩菅山に對し、東には群馬縣北部の諸山の波濤の如く起伏するかなたに日光白根を望み、東南には裾野の麗はしき赤城山及群峯の簇峙する榛名山を眺め、近く本白根山、四阿山を見、遠く鼻曲山の右に淺閒の噴煙が仰がれる。更に西方は飛彈山脈の山列に對し、西南には立科火山が見える。

軽井沢・草津のみどころ