貫前神社

貫前神社[國幣中社]
※現代の景観です。

昭和初期のガイド文

上信電気鉄道上州一宮駅の西約800m、一宮町にあります。境内は広く杉、ケヤキの古木に包まれ、鳥居を入って100段あまりの石段を下って社殿に達します。延喜式内の名神大社で一宮抜鋒大明神とも称し、経津主命を祀ります。現在の社殿は江戸時代前期の寛永12年(1635年)徳川家光の再建で、元禄年間(1688~1704年)に修造されたものです。本殿は三間三面入母屋造で妻と正面となし、三間の向拝が付いています。軒に二重繁棰を配し、桝組は出組を用い、桝組の間に蟇股を立て、腰に廻椽があります。桁、貫、桝組、蟇股など随所に絵様彫刻、繧繝彩色を施して華麗を極め、柱はすべて蝋色塗で、棰、廻椽などは丹塗です。その構造様式は、徳川初期の特徴を有し、国宝に指定されています。拝殿は三間三面入母屋造で、軒に唐破風を付け、その装飾は本殿と同様に華麗ですが、修繕の時に原形を損なった個所があります。

毎年4月15日の流鏑馬神事、12月12日の御戸開祭には参拝者が多く大いに賑わい、さらに1月15日には御筒粥の神事、12月11日に御機織の神事が執行されます。

  • 宝物
  • 白銅製月宮鑑[国宝] 八稜形で背面に月桂樹に玉兎、嫦娥および蟾蜍を配し片雲を散した浮出し文様があります。その図様がいかにも絵画的で、月桂樹を中に左右均斉であるのは、いかにも唐代文様の特徴であって、その図様の清高な気品とその曲線の韻律的な美しさはわずかに直径18cmの鏡背に大陸芸術の様式を偲ぶことができる貴重な遺品です。
  • 銅製和鏡二面[国宝] 一面は竹に虎、一面は梅樹に網代の図様があります。いずれも写生的な鎌倉時代の手法を現したものです。
※底本:『日本案内記 関東篇(初版)』昭和5年(1930年)発行
国幣中社貫前神社(上州一ノ宮)

令和に見に行くなら

名称
貫前神社
かな
ぬきさきじんじゃ
種別
見所・観光
状態
現存し見学できる
住所
群馬県富岡市一ノ宮1535
参照
参考サイト(外部リンク)

日本案内記原文

同上州一宮驛の西約八〇〇米、一宮町にある。境內廣く杉、欅の古木につゝまれ、鳥居を入りて百餘階の石段を下つて社殿に達する。延喜式內の名神大社で一宮拔鋒大明神とも稱し、經津主命を祀る。今の社殿は寬永十二年德川家光の再建で、元祿年閒に修造されたものである。本殿は三閒三面入母屋造で妻と正面となし、三閒の向拜が附いて居る。軒に二重繁棰を配し、桝組は出組を用ゐ、桝組の閒に蟇股を立て、腰に廻椽がある。桁、貫、桝組、蟇股など隨所に繪樣彫刻、繧繝彩色を施して華麗を極め、柱はすべて蝋色塗で、棰、廻椽などは丹塗である。その構造樣式は、德川初期の特徵を有し、國寶に指定されて居る。拜殿は三閒三面入母屋造で、軒に唐破風を附け、その裝飾は本殿と同樣に華麗であるが、修繕の時に原形を損した個所がある。

每年四月十五日の流鏑馬神事、十二月十二日の御戶開祭には參拜者多く大に賑ひ、尙一月十五日には御筒粥の神事、十二月十一日に御機織の神事が執行される。

  • 寶物
  • 白銅製月宮鑑[國寶] 八稜形で背面に月桂樹に玉兎、嫦娥及び蟾蜍を配し片雲を散した浮出し文樣がある。その圖樣がいかにも繪畫的で、月桂樹を中に左右均齊であるのは、いかにも唐代文樣の特徵であつて、その圖樣の淸高な氣品とその曲線の韻律的な美はしさは僅に徑一八糎(六寸)の鏡背に大陸藝術の一班を偲ぶに足る珍重すべき遺品である。
  • 銅製和鏡二面[國寶] 一面は竹に虎、一面は梅樹に網代の圖樣がある。何れも寫生的な鐮倉時代の手法を現はせるものである。

高崎・磯部のみどころ