秩父連峰 秩父登山口

秩父連峯秩父登山口
※現代の景観です。

昭和初期のガイド文

秩父鉄道影森駅を出発点としおおよそ3つの登路があります。

仙元峠方面 影森駅から浦山村日向、川俣を経て仙元峠まで約12kmの登り、普通6~7時間を要します。仙元峠から西へ尾根伝いに約2.5kmで一杯水、標高1,576mまでは高低が少なめです。一杯水付近には野営に適するところがあります。一杯水から西北に走る尾根が約5km、3時間で天目山(1,718m)に達します。この尾根筋や峰々からは関東平野や荒川および多摩川渓谷の俯瞰が開けています。天目山から北側に流下する大血川東谷に下り、大日向大陽寺から妙法岳山頂を経て、三峯神社奥社を過ぎ、落合または大輪に出られます。この間約1日行程です。

将監峠から雲取山方面 影森から強石を経て大輪まで約20kmの間自動車の便があります。大輪から三峯神社まで約2km、そこから大洞林道により、荒沢谷を経て総小屋まで約4km、おおよそ4時間を要します。この間針葉樹広葉樹の混生林が美しく、大洞川の美しい谷が見えます。総小屋から将監峠(1,858m)まで約6.5km5時間で登ることができ、三峯から1日行程です。ここには小屋があり宿泊もできます。北に午王院山が迫り、白岩山に連なり、東南に大洞山への尾根が連なって、井戸沢から大洞川の裾合谷が森林に覆われているのが俯瞰されます。

将監峠から東南の大洞山(2,069m)を経て雲取山まで約8kmの間は、針葉樹林の尾根道です。雲取山は標高2,017m、秩父東端の高峰で山頂に小屋があり、宿泊ができます。山頂から南は奥多摩の渓谷を隔てて大菩薩嶺を間近に望むことができます。富士山、南アルプスなども遠く望めます。その他秩父諸峰はいうまでもなく、関東平野から日光、赤城、上越国境の山々などの眺望がよく、付近一帯は東京市水道の水源林で道もよく開けています。山頂から南鴨沢に下り、多摩渓谷側へ下ることができます。また北に白岩山を経て、尾根伝いに三峯へは約5時間で下ることができます。

また将監峠から西の尾根の縦走路は、午王院山(2,109m)に連なる尾根をたどり、笠取山(1,941m)までは約4km、さらに古礼山(2,112m)を経て雁坂峠まで4.5km、峠から栃本または塩山方面へ下りられます。

※底本:『日本案内記 関東篇(初版)』昭和5年(1930年)発行

令和に見に行くなら

名称
秩父連峰 秩父登山口
かな
ちちぶれんぽう ちちぶとざんぐち
種別
見所・観光
状態
現存し見学できる
住所
埼玉県秩父市
参照
参考サイト(外部リンク)

日本案内記原文

同影森驛を出發點とし凡そ三つの登路がある。

仙元峠方面 影森驛から浦山村日向、川俣を經て仙元峠まで約一二粁の登り、普通六、七時閒を要する、仙元峠から西へ尾根傳いに約二粁半で一杯水、標高一、五七六米までは高低が少い。一杯水附近には野營に適する處がある。一杯水から西北に走る尾根が約五粁、三時閒で天目山(一、七一八米)に達する。この尾根筋や峯々からは關東平野や荒川及多摩川溪谷の俯瞰が良い。天目山から北側に流下する大血川東谷に下り、大日向大陽寺から妙法嶽山頂を經て、三峯神社奧社を過ぎ、落合または大輪に出られる。この閒約一日行程である。

將監峠から雲取山方面 影森から强石を經て大輪まで約二〇粁の閒自動車の便がある。大輪から三峯神社まで約二粁、そこから大洞林道に依り、荒澤谷を經て總小屋まで約四粁、凡そ四時閒を要する。この閒針葉樹濶葉樹の混生林が美しく、大洞川の谷は美しい。總小屋から將監峠(一、八五八米)まで約六粁半五時閒で登られる、三峯から一日行程である。こゝには小屋があり宿泊も出來る。北に午王院山が迫り、白岩山に連り、東南に大洞山への尾根が連つて、井戶澤から大洞川の裾合谷が森林に蔽はれて居るのが俯瞰される。

將監峠から東南の大洞山(二、〇六九米)を經て雲取山まで約八粁の閒は、針葉樹林の尾根道である。雲取山は標高二、〇一七米、秩父東端の高峯で山頂に小屋があり、宿泊が出來る。山頂から南は奧多摩の溪谷を隔てゝ大菩薩嶺を閒近に望む。富士山、南アルプスなども遠く望まれる。その他秩父諸峯は云ふまでもなく、關東平野から日光、赤城、上越國境の山々などの眺望が良く、附近一帶は東京市水道の水源林で道も良く開けて居る。山頂から南鴨澤に下り、多摩溪谷側へ下られる。また北に白岩山を經て、尾根傳ひに三峯へは約五時閒で下られる。

また將監峠から西方の尾根の縱走路は、午王院山(二、一〇九米)に連る尾根を傳はり、笠取山(一、九四一米)までは約四粁、尙古禮山(二、一一二米)を經て雁坂峠まで四〇〇〇粁半、峠から栃本または鹽山方面へ下られる。

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