長瀞

長瀞
※現代の景観です。

昭和初期のガイド文

秩父鉄道長瀞駅の東から上長瀞駅の東に至る間の荒川の峡流で、延長1kmにおよび指定の名勝です。河床には結晶片岩の岩床があり、河水はその間を侵蝕して極めて緩かに流れています。対岸には岩壁が立ち小滝がそこにかかり、秩父赤壁と呼ばれます。

長瀞駅から河岸に出て上流に向かえば河原の結晶片岩が皺曲を示し、その裂隙には石英脈が白く填充しています。また岩盤の上には大小の甌穴があります。水際にある虎岩と称するものは、緑泥絹雲母片岩や黒雲母片岩および緑泥片岩の互層を示しています。上長瀞駅に近い河岸には秩父地方に産する鉱物、岩石、化石、植物などの標本陳列所があります。

上長瀞の西南、親鼻橋南詰の下に2個の甌穴が紅簾片岩中にできています。その大きな方は直径2mにおよびますがコンクリートで埋められています。この紅簾片岩は世界に珍しい岩石です。また長瀞駅に近いところから河岸に沿って下れば、石墨片岩、絹雲母片岩の間に数多の石英脈を見、大黒岩と呼ばれる赤鉄珪岩が大きく褶曲したものを眺め曲淵に達します。ここには石墨絹雲母片岩や緑泥角閃岩や絹雲母片岩が見事に露出しています。なお長瀞、上長瀞両駅間には桜の樹が多く植えられています。

※底本:『日本案内記 関東篇(初版)』昭和5年(1930年)発行
秩父長瀞

令和に見に行くなら

名称
長瀞
かな
ながとろ
種別
見所・観光
状態
現存し見学できる
住所
埼玉県秩父郡長瀞町長瀞
参照
参考サイト(外部リンク)

日本案内記原文

同長瀞驛の東から上長瀞驛の東に至る閒の荒川の峽流で、延長一粁に及び指定の名勝である。河床には結晶片岩の岩床あり、河水はその閒を侵蝕して極めて緩かに流れて居る。對岸には岩壁が峙ち小瀧がそこに懸り、一に秩父赤壁と稱せられる。

長瀞驛から河岸に出て上流に向へば河原の結晶片岩が皺曲を示し、その裂隙には石英脈が白く填充して居る。また岩盤の上には大小の甌穴がある。水際にある虎岩と稱するものは、綠泥絹雲母片岩や黑雲母片岩及綠泥片岩の互層を示して居る。上長瀞驛に近い河岸には秩父地方に產する鑛物、岩石、化石、植物などの標本陳列所がある。

上長瀞の西南、親鼻橋南詰の下に二個の甌穴が紅簾片岩中に出來て居る。その大なる方は直徑二米に及ぶがコンクリートで埋められて居る。この紅簾片岩は世界に珍しい岩石である。また長瀞驛に近い處から河岸に沿うて下れば、石墨片岩、絹雲母片岩の閒に數多の石英脈を見、大黑岩と稱する赤鐵珪岩の甚しく褶曲したものを眺め曲淵に達する。こゝには石墨絹雲母片岩や綠泥角閃岩や絹雲母片岩が見事に露出して居る。尙長瀞、上長瀞兩驛閒には櫻樹が多く植ゑ付けられて居る。

長瀞・秩父のみどころ