大山(雨降山)

大山(雨降山)
※現代の景観です。

昭和初期のガイド文

小田原急行電車線伊勢原駅の西北12km、平塚駅からは北14km、大山町の西北にあり、ともに大山町まで自動車の便があります。海抜1,253mの頂上には阿夫利神社[県社]があります。延喜式内の古社で大山祗神を祭り、源頼朝が社領を寄附して以来武家の崇敬が厚かった神社で、春夏秋の大祭には大山詣でまたは石尊参りと称して登山者が多く集まります。登山路は急坂で石段が多くあります。特に追分社から下社下までの男坂には940あまりの石段があります。

大山町に入ると講社の参籠する先導師の家が軒を並べています。町を過ぎて大山川に沿って上ると右に良弁の滝があり、さらに進むと元滝があります。それから約150mで追分社に出ます。ここで道は男坂と女坂に分岐しています。石段のやや少なめな女坂を登る方が少しは楽です。女坂を上って十数分で右手に社務所があり、裏手の急な石段を上ると大山寺不動堂があります。そこから無名橋を経て磴道を上ると日露戦役忠魂碑の上で男坂と合流します。ここから約5分で下社につきます。

本社は下社からさらに2kmほど下社裏の神門から上りますが、ここから本坂と呼ばれ急坂が多くなります。鳥居杉を過ぎ、杉、モミの大木の間を通り、縁結びの木を見ながら進むと頂上に着きます。

頂上には本社のほかに奥社と前社があります。社殿の前に雨降木と呼ばれる高さ約3m、樹幹周囲2.7mの大木があり常に雨滴に濡れています。山頂は眺望雄大で、晴れた日には江の島から東京湾を南方に、北方には丹沢山や秩父の連山を俯瞰することができます。

※底本:『日本案内記 関東篇(初版)』昭和5年(1930年)発行

令和に見に行くなら

名称
大山(雨降山)
かな
おおやま(あふりさん)
種別
見所・観光
状態
現存し見学できる
備考
現在は下社まではケーブルカーで行くことができます。
住所
神奈川県伊勢原市大山
参照
参考サイト(外部リンク)

日本案内記原文

同伊勢原驛の西北一二粁、平塚驛からは北一四粁、大山町の西北にあり、共に大山町迄自動車の便がある。海拔一、二五三米頂上に阿夫利神社[縣社]がある。延喜式內の古社で大山祗神を祭る、源賴朝が社領を寄附して以來武家の崇敬が厚かつた神社で、春夏秋の大祭には大山詣でまたは石尊參りと稱して登山者が多い。登山路は急坂で石段が多い。殊に追分社から下社下迄の男坂には九百四十餘の石段がある。

大山町に入ると講社の參籠する先導師の家が軒を竝べて居る。町を過ぎて大山川に沿うて上ると右方に良辨の瀧があり、更に進むと元瀧がある。それから約一五〇米で追分社に出る。こゝで道は男坂と女坂に分岐して居る。割合に石段の少い女坂を登る方が幾分樂である。女坂を上ること十數分で右手に社務所があり、裏手の急な石段を上ると大山寺不動堂がある。そこから無名橋を經て磴道を上ると日露戰役忠魂碑の上で男坂と合する。こゝから約五分で下社につく。

本社は下社から更に二粁餘、下社裏の神門から上る、こゝから本坂と稱して急坂が多い。鳥居杉を過ぎ、杉、もみの大木の閒を通り、緣結びの木を見ながら進むと頂上に着く。

頂上には本社の外に奧社及前社がある。社殿の前に雨降木と稱する高さ約三米、樹幹周圍二米七(九尺)の大木があり常に雨滴を有して居る。山頂は眺望雄大、晴天には江ノ島から東京灣を南方に、北方には丹澤山及秩父の連山を俯瞰することが出來る。

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