水郷

水鄕
※現代の景観です。

昭和初期のガイド文

香取から鹿島に向かうには途中水郷を経由します。水郷は利根川の河中に生じた砂洲の地で、その最も知られるものは南は利根の本流、西は横利根川、東北は北利根川、東は外浪逆浦に区切られる新島の加藤洲で、周囲25kmにおよびそのなかに与田浦沼を含んでいます。以前は増水時にはしばしば浸水していましたが、現在は堤防および堰閘が設けられて、水害を防げるようになりました。汽船を利用するなら利根川から横利根川を経、霞ヶ浦の東南隅を過ぎ、牛堀から北利根川に入ります。その間は常に高い堤防と、その上に生える柳、ポプラの類を眺められるに過ぎませんが、発動機船を利用すれば水郷の中央を横ぎり、その特異な風景を観賞することができます。まず利根川を横ぎり、狭い閘門を潜って水位の高い洲のなかに入り、与田浦沼を通過します。この間西北はるかに筑波の双峰を望み、近く洲上の田園が見えます。そこから堀割に入り、稲田とこれを囲む畑地を左右に見晴らし、堀割にまたがる高い橋の下を潜り、磯山の集落を過ぎれば加藤洲十二橋の地に入り、船は発動機の運転を中止し、狭い堀割を舵によって徐行します。両岸はやや高く、その水際にはマコモ、アヤメなどが生育します。人家のあるところには必ず橋があり、その数今は11を数えます。閘門に達し洲外に出れば北利根川に入り、対岸に潮来町の人家が見えます。ここから汽船の航路に合流し、東に進み北浦の南部を通過し、北に延方の橋梁を左に見て大船津に着きます。

※底本:『日本案内記 関東篇(初版)』昭和5年(1930年)発行

令和に見に行くなら

名称
水郷
かな
すいごう
種別
見所・観光
状態
現存し見学できる
備考
水郷は観光できますが、船便は現在ありません。
住所
千葉県香取市、茨城県潮来市
参照
参考サイト(外部リンク)

日本案内記原文

香取より鹿島に至るには途中水鄕を經由する。水鄕は利根川の河中に生じた砂洲の地で、その最も著しきものは南は利根の本流、西は橫利根川、東北は北利根川、東は外浪逆浦に限られる新島の加藤洲で、周圍二五粁に及び中に與田浦沼を包む。もと增水時には屢々浸水したが、今は堤防及堰閘が設けられて、その害を見ないやうになつた。汽船によるものは利根川より橫利根川を經、霞ケ浦の東南隅を過ぎ、牛堀より北利根川に入る。その閒常に高き堤防と、その上に生ふる柳、ポプラの類を見るに過ぎないが、發動機船によるものは水鄕の中央を橫ぎり、その特異なる風景を觀賞することが出來る。先づ利根川を橫ぎり、狹き閘門を潛つて水位の高き洲の中に入り、與田浦沼を通過する。この閒西北遙に筑波の雙峯を望み、近く洲上の田園を見る。それより堀割に入り、稻田とこれを圍む畑地を左右に見晴らし、堀割に跨る高き橋の下を潛り、磯山の部落を過ぐれば加藤洲十二橋の地に入り、船は發動機の運轉を中止し、狹き堀割を楫によつて徐行する。兩岸はやゝ高く、その水際にはまこも、あやめなどが生育する。人家のある處には必ず橋あり、その數今は十一を算へる。閘門に達し洲外に出づれば北利根川に入り、對岸に潮來町の人家を見る。これより汽船の航路に合し、東に進み北浦の南部を通過し、北に延方の橋梁を左に見て大船津に著く。

香取・鹿島のみどころ