香取神宮

香取神宮[官幣大社]
※現代の景観です。

昭和初期のガイド文

佐原駅の東約4km、香取町にあり、自動車の便があります。古来鹿島神宮と並び称された延喜式所載の名神大社で、経津主命を祀っています。境内は広く老杉天にそびえ非常に神さびています。現在の社殿は江戸時代中期の元禄年間(1688~1704年)徳川綱吉の造営となり、本殿、幣殿および拝殿をつらねた権現造です。

例祭は毎年4月14日で、参道および境内の桜が美観を呈します。なお5月5・6日の両日には御田植祭の特殊神事が執行され大いに賑わいます。

  • 宝物
  • 海獣葡萄鏡[国宝] 一面 青銅製直径30cm、唐時代 背面に極めて精巧な模様が鋳出されていますが、およそ3区の模様帯に区分されます。外区には花形花文帯をめぐらし、中区には葡萄文の間に孔雀、有角獣、有翼の海馬など馳駆し、内区には葡萄文を錯綜させ大きな狻猊形の鈕の周囲に、大小の狻猊、栗鼠、霊獣が乱舞しています。この種の模様は唐代の銅鏡にしばしば見られるもので、日本の古墳墓からも往々発見されますが、この鏡に見られるような生気に満ちた精巧なものは極めて稀です。この社にはこのほかさらに2面の海獣葡萄鏡があります。いずれもこれより小さくその製作もまた劣っています。なお銅製直径20cmあまり、平安時代の久安5年(1149年)の鋳出銘のある双竜銅鏡1面と鎌倉時代の双鳥花文八稜鏡が4面あります。
※底本:『日本案内記 関東篇(初版)』昭和5年(1930年)発行
香取神宮 海獣葡萄鏡(香取神宮)

令和に見に行くなら

名称
香取神宮
かな
かとりじんぐう
種別
見所・観光
状態
現存し見学できる
住所
千葉県香取市香取1697
参照
参考サイト(外部リンク)

日本案内記原文

驛の東約四粁、香取町にあり、自動車の便がある。古來鹿島神宮と竝び稱せられた延喜式所載の名神大社で、經津主命を祀つて居る。境內廣く老杉天に聳え頗る神さびて居る。今の社殿は元祿年閒德川綱吉の造營にかゝり、本殿、幣殿及拜殿をつらねた權現造である。

例祭は每年四月十四日で、參道及境內の櫻樹が美觀を呈する。尙五月五、六の兩日には御田植祭の特殊神事が執行され大に賑ふ。

  • 寶物
  • 海獸葡萄鏡[國寶] 一面 靑銅製直徑三〇糎(九寸七分)唐時代 背面極めて精巧なる模樣が鑄出されて居るが、凡そ三區の模樣帶に區分される。外區には花形花文帶をめぐらし、中區には葡萄文の閒に孔雀、有角獸、有翼の海馬など馳驅し、內區には葡萄文を錯綜せしめ大なる狻猊形の鈕の周圍に、大小の狻猊、栗鼠、靈獸が亂舞して居る。この種の模樣は唐代の銅鏡に屢々見る所で、わが國の古墳墓からも往々發見されるが、この鏡に見る如き生氣に滿ちた精巧なるは極めて稀である。當社にはこの外尙二面の海獸葡萄鏡がある。何れもこれより小にしてその製作もまた劣つて居る。尙銅製直徑二〇糎餘(六寸八分)、久安五年の鑄出銘のある雙龍銅鏡一面と鐮倉時代の雙鳥花文八稜鏡が四面ある。

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