ニセコアンヌプリ周辺のスキー場

ニセコアンヌプリ附近スキー地
※現代の景観です。

昭和初期のガイド文

昆布駅付近から俱知安に至る間は、右窓に秀麗な蝦夷富士の山容を仰視し、左窓には尻別川の流れを眺め、間近にニセコアンヌプリを初めとして、これに連なる多くの峰々が雄大な裾野を流しています。

ニセコアンヌプリを中心とする一帯は、夏の登山の対象としてはほとんど注目されていませんが、冬のスキーおよびスキー登山としては、北海道の四大スキー場として、札幌付近、十勝岳、大雪山等とともに最も優秀なスキー地として知られ、なかでも札幌付近と同様に最も大衆的なところで、雪量といい、雪質または地形からいっても、またその間に多くの温泉が散在している点など、すべての好条件を備えていて、特に本州方面から最も近距離にある関係上、近年本州方面から訪れるスキー客も多く、年々外国からもスキーヤーを迎えるようになりました。

ニセコアンヌブリ(1,308m)を初めとしてイワオヌブリ(1,154m)、チセヌプリ(1,134m)、ワイスホルン(1,045m)、目国内岳(1,202m)、岩内岳(1,085m)、雷電山(1,211m)などの峰を連ねて、山麓から山腹にかけてはブナ、イタヤおよびダケカンバの疎林で、それ以上は無樹帯の見渡すかぎりの銀嶺を輝かせています。これらの山麓には昆布諸温泉がいたるところに湧出し、この諸温泉を拠点として、いずれも初心者にも、中級程度の人々のスキーにも適しています。スキーの季節は12月中旬から4月中旬まで、2m内外の積雪があります。

山麓の諸温泉のなかで最も設備がよくスキーの中心となっているのは、青山、鯉川、紅葉谷の3温泉(昆布温泉)で、その3旅館に400人くらいの収容力があります。

昆布駅から7km、夏は自動車がありますが、冬は馬ぞりで約1時間半、スキーで2時間、緩やかな登りです。ニセコ連峰の中央に位置して、ニセコアンベツ川の渓畔にあり、付近には高商スロープ、大学スロープ(1km)など、広大な練習場があり、いたるところ初心者の練習に適しています。間近に蝦夷富士の秀峰を望み、ニセコの銀嶺を仰ぎ、展望の雄大なしかも明朗なスロープの連続です。

昆布温泉からニセコアンヌプリ頂上まで約8km、スキーで約4時間で登ることができます。滑降は1時間半で充分です。温泉からニセコアンベツ川の橋を渡ると、839mの山麓まで緩傾斜の雄大なスロープが広がっています。その斜面を一直線にどこを進んでもいいです。図幅839mの標高付近から右手の大きく延びている尾根に取付いて登るのが一般的な幹線コースです。最初はダケカンバ林で、次第に急になり無樹帯となって頂上に達します。山頂付近は時として雪面が硬化してアイゼンを必要とすることがあります。

仁世古温泉へは昆布温泉から6km、ニセコアンヌプリへのコースに沿って約3kmで左へ藻岩山の北の尾根にとりつき、尾根を登り切るとイワオヌプリ、ニアンヌプリの山々を廻らした標高850mの高所にあって、付近はほとんど無樹帯の変化に豊んだ、ゲレンデに包まれた山の湯で、設備は昆布温泉よりはるかに劣りますが井上、稲村の旅館があり、70名くらい宿泊できます。ニセコアンヌプリへもイワオヌプリへも1時間半程度、チセヌプリへも2時間くらいで登ることができる山スキーの最もよい拠点です。

そのほか倶知安駅から12km、ニセコアンヌプリの東北を廻って、イワオヌプリとニセコアンヌプリの鞍部を経てもよく、ニセコアンヌプリを越えても入ることができます。このコースは昆布駅から昆布温泉、仁世古温泉、倶知安駅への最も人気のコースです。

昆布温泉からチセヌプリへは湯本温泉を経て登ります。昆布から湯本温泉まで約5km、標高550mのシラカバの美林のなかにあり、変化に豊んだ斜面が多く、熟達者にも適しています。温泉からチセヌプリ頂上まで1時間半程度です。山頂はドーム形をした無樹帯のスロープが開けています。降りは温泉まで40分、昆布温泉まで1時間半程度です。

チセヌプリから西へ降り約7kmで新見温泉に降りることもできます。新見温泉は目国内岳、岩内岳、雷電岳などへのスキー登山の拠点で、約50人くらいの収容力があります。ここから南越駅まで11kmで、一般の順路は蘭越から入ります。

ワイスホルンへは小沢駅から入るのが順路です。この山は山容が欧州のワイスホルンに似ているので、最近にこの名を冠したもので、長い直滑降ができるので喜ばれています。小沢駅から北東向きの練習場を登り、その尾根伝いに達します。約8km、4時間程度で頂上に達します。滑降は1時間半程度です。

そのほか側知安駅から12km、青山温泉(旧小川温泉)を拠点にして登ると頂上まで約2kmである。青山温泉はニセコアンヌプリの北、硫黄川の上流に位置して、ニセコアンヌプリ、ワイスホルン、イワオヌプリの登山に便利ですが、ほとんど山小屋で約15名くらいの宿泊設備です。

概してニセコアンヌプリを中心とするスキー地は、これら多くの温泉が随所に散在していて、山岳はいずれも1,300m以下で、比較的容易な1日行程のスキーに適していて、ほかの北海道の山と比べて針葉樹林が少く、一帯に開けた明るい感じのスキー場です。

※底本:『日本案内記 北海道篇(五版)』昭和11年(1936年)発行
ニセコアンヌプリ

令和に見に行くなら

名称
ニセコアンヌプリ周辺のスキー場
かな
にせこあんぬぷりしゅうへんのすきーじょう
種別
レジャー
状態
現存し見学できる
住所
北海道虻田郡ニセコ町字ニセコ
参照
参考サイト(外部リンク)

日本案内記原文

昆布驛附近から俱知安に至る閒は、右窓に秀麗な蝦夷富士の山容を仰視し、左窓には尻別川の流を眺め、閒近にニセコアンヌプリを初めとして、これに連る數多の峯々が雄大な裾野を流して居る。

ニセコアンヌプリを中心とする一帶は、夏の登山の對象としては殆んど顧みられないが、冬のスキー及スキー登山としては、北海道の四大スキー場として、札幌附近、十勝嶽、大雪山等と共に最も優秀なスキー地として知られ、就中札幌附近と同樣最も大衆的な處で、雪量と云ひ、雪質または地形から云つても、またその閒に多くの溫泉が散在して居る點など、凡ての好條件を具備して居り、ことに本州方面から最も近距離にある關係上、近年本州方面から訪れるスキー客も多く、年々外人スキー家を迎へる樣になつた。

ニセコアンヌブリ(一、三〇八米)を初めとしてイワオヌブリ(一、一五四米)、チセヌプリ(一、一三四米)、ワイスホルン(一、〇四五米)、目國內嶽(一、二〇二米)、岩內嶽(一、〇八五米)、雷電山(一、二一一米)などの峯を連ねて、山麓から山腹にかけては「ぶな」、「いたや」及嶽樺の疎林で、それ以上は無樹帶の白皚々たる銀嶺を輝かして居る。これ等の山麓には昆布諸溫泉が、到る處に湧出し、この諸溫泉を根據として、何れも初心者にも、中級程度の人々のスキーツーアにも適して居る。スキー季節は十二月中旬から四月中旬まで、二米內外の積雪がある。

山麓の諸溫泉の中最も設備が良くスキーの中心をなして居るのは、靑山、鯉川、紅葉谷の三溫泉(昆布溫泉)で、その三旅館に四百人位の收容力がある。

昆布驛から七粁、夏は自動車があるが、冬は馬橇で約一時閒半、スキーで二時閒、緩やかな登りである。ニセコ連峯の中央に位して、ニセコアンベツ川の溪畔にあり、附近には高商スロープ、大學スロープ(一粁)など、廣大な練習場があり、到る處初心者の練習に適して居る。閒近に蝦夷富士の秀峯を望み、ニセコの銀嶺を仰ぎ、展望の雄大なしかも明朗なスロープの連續である。

昆布溫泉からニセコアンヌプリ頂上まで約八粁、スキーで約四時閒で登られる。滑降は一時閒半で充分である。溫泉からニセコアンベツ川の橋を渡ると、八三九米の山麓まで緩傾斜の雄大なスロープが擴がつて居る。その斜面を一直線に何處を進んでもよい。圖幅八三九米の標高附近から右手の大きく延びて居る尾根に取付いて登るのが一般的な幹線コースである。最初は嶽樺林で、次第に急になり無樹帶となつて頂上に達する。山頂附近は時として雪面が硬化してシタイグアイゼンを必要とすることがある。

仁世古溫泉へは昆布溫泉から六粁、ニセコアンヌプリへのコースに沿うて約三粁で左へ藻岩山の北の尾根にとりつき、尾根を登り切るとイワオヌプリ、ニアンヌプリの山々を廻らした標高八五〇米の高所にあつて、附近は殆んど無樹帶の變化に豐んだ、ゲレンデに包まれた山の湯で、設備は昆布溫泉より遙かに劣るが井上、稻村の旅館があり、七十名位宿泊出來る。ニセコアンヌプリへもイワオヌプリへも一時閒半程度、チセヌプリへも二時閒位で登れる山スキーの最も良き根據地である。

別途倶知安驛から一二粁、ニセコアンヌプリの東北を廻つて、イワオヌプリとニセコアンヌプリの鞍部を經てもよく、ニセコアンヌプリを越えても入ることが出來る。このコースは昆布驛から昆布溫泉、仁世古溫泉、倶知安驛への最も興味あるツーアコースである。

昆布溫泉からチセヌプリへは湯本溫泉を經て登る。昆布から湯本溫泉まで約五粁、標高五五〇米の白樺の美林の中にあり、變化に豐んだ斜面が多く、熟達者にも適して居る。溫泉からチセヌプリ頂上まで一時閒半程度である。山頂はドーム形をなした無樹帶のスロープが開けて居る。降りは溫泉まで四十分、昆布溫泉まで一時閒半程度である。

チセヌプリから西へ降り約七粁で新見溫泉に降ることも出來る。新見溫泉は目國內嶽、岩內嶽、雷電嶽などへのスキー登山の根據地で、約五十人位の收容力がある。こゝから南越驛まで一一粁で、一般の順路は蘭越から入る。

ワイスホルンへは小澤驛から入るのが順路である。この山は山容が歐洲のワイスホルンに似て居るので、最近にこの名を冠したもので、長い直滑降が出來るので喜ばれる。小澤驛から北東向の練習場を登り、その尾根傳ひに達する。約八粁、四時閒程度で頂上に達する。滑降は一時閒半程度である。

別に側知安驛から一二粁、靑山溫泉(舊小川溫泉)を根據にして登ると頂上まで約二粁である。靑山溫泉はニセコアンヌプリの北、硫黃川の上流に位して、ニセコアンヌプリ、ワイスホルン、イワオヌプリの登山に便利である、が殆んど山小屋で約十五名位の宿泊設備である。

槪してニセコアンヌプリを中心とするスキー地は、これ等多くの溫泉が隨所に散在して居り、山嶽は何れも一、三〇〇米以下で、比較的容易な一日行程のスキーツーアに適して居り、他の北海道の山に比して針葉樹林が少く、一帶に開けた明るい感じのスキー地である。

ニセコ・倶知安のみどころ