歓喜院(妻沼聖天山)

歡喜院[古義眞言宗]
※現代の景観です。

昭和初期のガイド文

熊谷駅の北約11km、妻沼町にあります。東武鉄道太田駅からは南約11km、ともに自動車の便があります。本堂は明治年間(1868~1912年)の建築ですが、本堂の北約300mのところに離れて聖天堂があります。本殿、相ノ間および拝殿を備えた権現造です。その本殿は三間四面の入母屋造で、左右および後面に軒唐破風を有し、桝組は丹塗の三手先を用い、竜の彫刻をもって飾り、その他板羽目、梁、桁など随所に華麗な彫刻を填充し、極彩色を施して江戸時代の特徴を現しています。

本尊は青銅製錫杖で、その円輪中に双身の歓喜天像が表裏に現されています。各左右に二体の童子を眷属とした三尊式のもので、図像抄にもない異相のもので、いかにも聖人信乗自身が託宣によって鋳たという逸話どおりです。その技法は整美にしてその製作年代と祈願者の銘記を有する稀有の珍品です。また歓喜天像としては絵画以外では最古のもので、柄に左の銘があり、国宝に指定されていますが秘仏のため公開されていません。

奉鋳武蔵国永井聖天堂錫杖 御正体 建立氏人 藤原実家 宮道国平平氏 同藤原実轄 聖人信乗付自身依御託宣奉鋳畢 建久八年丁巳四月八日辛亥 鋳匠和気末友藤原守家斉昭則友

毎年旧正月元日には浴油の修法が行われます。宝物には室町時代の暦応2年(1339年)在銘の青銅製鰐口があります。

※底本:『日本案内記 関東篇(初版)』昭和5年(1930年)発行

令和に見に行くなら

名称
歓喜院(妻沼聖天山)
かな
かんぎいん(めぬましょうでんざん)
種別
見所・観光
状態
現存し見学できる
住所
埼玉県熊谷市妻沼1627
参照
参考サイト(外部リンク)

日本案内記原文

驛の北約一一粁、妻沼町にある。東武鐵道太田驛からは南約一一粁、共に自動車の便がある。本堂は明治年閒の建築であるが、本堂の北約三〇〇米の所に離れて聖天堂がある。本殿、相ノ閒及拜殿を具備した權現造である。その本殿は三閒四面の入母屋造で、左右及後面に軒唐破風を有し、桝組は丹塗の三手先を用ゐ、龍の彫刻を以て飾り、その他板羽目、梁、桁など隨所に華麗な彫刻を填充し、極彩色を施して江戶時代の特徵を現はして居る。

本尊は靑銅製錫杖で、その圓輪中に雙身の歡喜天像が表裏に現はされて居る。各左右に二體の童子を眷屬とした三尊式のもので、圖像抄にも見えぬ異相のもので、いかにも聖人信乘自身が託宣によつて鑄たかの樣である。その技法整美にしてその製作年代と祈願者の銘記を有する稀有の珍品である。また歡喜天像として繪畫以外最古のもので、柄に左の銘があり、國寶に指定されて居るが祕佛として開扉しない。

奉鑄武藏國永井聖天堂錫杖 御正體 建立氏人 藤原實家 宮道國平平氏 同藤原實轄 聖人信乘付自身依御託宣奉鑄畢 建久八年丁巳四月八日辛亥 鑄匠和氣末友藤原守家齊昭則友

每年舊正月元日には浴油の修法が行はれる。寶物には曆應二年在銘の靑銅製鰐口がある。

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