富士山の頂上

富士山の頂上
※現代の景観です。

昭和初期のガイド文

頂上にはすり鉢型の旧火口があり、内院と呼ばれ、直径は東西520m、南北540m、火山底は海抜3,556m、西南から東北に長い楕円形となっていて、剣ヶ峰から222m深く、その北陰の火山側に堆積する万年雪と、火口壁の崩壊による崖が人目を惹きます。この火口には今からおおよそ一千年前までは熱湯を湛え、常に蒸気を発散して遠方からは噴煙のように見えたものですが、現在は全く乾き、側壁から落下した岩屑が一面に散っています。また火口の南側中腹に虎石と呼ばれる巨岩があります。側壁には熔岩の岩盤と礫層が交互に重なり、最上部には熔岩の表皮があります。その上にはさらに礫層熔岩層がありましたが崩れ削れたものです。

頂上の西南隅には剣ヶ峰があって富士山の最高峰をなし、西北隅には白山岳、東北隅には久須志岳、大日岳、伊豆岳、東南隅には成就岳、駒ヶ岳、三島岳があります。西隅には西安の河原と名づけられた平地があり、その北に一段低い阿弥陀ヶ窪があります。ともに火口棚とされるものです。阿弥陀ヶ窪の西北隅には小内院と名づけられた窪地があります。伊豆岳と成就岳の間には外側に砂礫の間から蒸気を発するところがある。

頂上を一周するには外輪廻りと内輪廻りの二種があり、外輪廻りは最も高い峰続きを通って延長2.6km、内輪廻りは内側の火口棚の上に通じていて延長2.3km。

山頂の展望は北には甲武信山、金峯山のかなたに浅間山の煙が見え、西北に近く八ヶ岳、甲斐駒ヶ岳、白峯北岳が見え、それらを越えて飛騨山脈の白馬岳、槍ヶ岳、穂高岳および乗鞍岳、御岳の二火山、木曽山脈の駒ヶ岳を見、西には赤石山、七面山、大無間山、西南には久能山、三保松原、御前崎、東南には伊豆半島の天城山、伊豆七島、箱根山、東には三浦、房総二半島、東京湾、東北には筑波山、那須岳、日光白根山、赤城山などを望むことができます。

※底本:『日本案内記 関東篇(初版)』昭和5年(1930年)発行

令和に見に行くなら

名称
富士山の頂上
かな
ふじさんのちょうじょう
種別
見所・観光
状態
現存し見学できる
住所
静岡県、山梨県
参照
参考サイト(外部リンク)

日本案内記原文

頂上には擂鉢形の舊火口あり、內院と稱し、直徑東西五二〇米、南北五四〇米、火山底は海拔三、五五六米、西南から東北に長き楕圓形をなし、劍ケ峰から二二二米深く、その北陰の火山側に堆積する萬年雪と、火口壁の崩壞に成る崖錐が人目を惹く。この火口には今より凡そ一千年前までは熱湯を湛へ、常に蒸氣を發散して遠方からは噴煙と見られたのであるが、今は全く乾涸し、側壁から落下した岩屑が一面に散布して居る。また火口の南側中腹に虎石と稱する巨岩がある。側壁には熔岩の岩盤と礫層が交互に相重なり、最上部には熔岩の表皮がある。その上には更に礫層熔岩層があつたが脫落削剥されたものである。

頂上の西南隅には劍ケ峰が峙ちて富士山の最高峰をなし、西北隅には白山嶽、東北隅には久須志嶽、大日嶽、伊豆嶽、東南隅には成就嶽、駒ケ嶽、三島嶽がある。西隅には西安の河原と名づける平地があり、その北に一段低い阿彌陀ケ窪がある。共に火口棚と稱すべきものである。阿彌陀ケ窪の西北隅には小內院と名づける窪地がある。伊豆嶽と成就嶽の閒には外側に砂礫の閒から蒸氣を發する處がある。

頂上を一周するには外輪廻りと內輪廻りの二種があり、外輪廻りは最も高き峯續きを通り延長二粁六、內輪廻りは內側の火口棚の上に通じ延長二粁三。

山頂の展望は北には甲武信山、金峯山のかなたに淺閒山の煙が見え、西北に近く八ケ嶽、甲斐駒ケ嶽、白峯北嶽が見え、それらを越えて飛騨山脈の白馬嶽、槍ケ嶽、穗高嶽及乘鞍嶽、御嶽の二火山、木曾山脈の駒ケ嶽を見、西には赤石山、七面山、大無閒山、西南には久能山、三保松原、御前崎、東南には伊豆半島の天城山、伊豆七島、箱根山、東には三浦、房總二半島、東京灣、東北には筑波山、那須嶽、日光白根山、赤城山などが望まれる。

御殿場のみどころ