須走口

須走口
※現代の景観です。

昭和初期のガイド文

登山道の起点は海抜809m、ここから頂上まで13.6km。まず須走浅間神社を経て西に向かい、山梨県に通じる県道を横ぎり、左折して精進川を渡ります。そこから小坂を登ると裾野の草原が見渡せます。中ノ茶屋を過ぎ馬返し(海抜1,380m)に至れば坂道になり、広葉喬木の森林帯に入り、ヤマハンノキ、ハウチワカエデ、コハウチワカエデ、ウリハダカエデ、ナナカマド、ミヤマザクラ、コバノトネリコ、アズキナシ、ヒメシャフ、ミズナラ、ブナなどが見られます。一ノ宮雲切不動を経て太郎坊(1,620m)に達すると灌木帯に移り、ソウシカンバ、ミヤマハンノキが密生し、ムシカリ、ミネザクラ、ウラジロノキが混ざります。ここから右に上半針葉樹の密林となる小富士(1,906m)の寄生火山が見られます。これに最も近づいたところで御室浅間神社を経由します。

その付近にはシラビソの巨樹が多くあります。二合目(1,818m)を過ぎ、古御岳神社に至れば下山道が分かれています。さらに進めば広い砂礫地に出ます。ここはこの登山道で最も特殊な植物が見られる場所で、乾生御花畑とも呼ぶべき、イタドリ、ホタルフクロとともにフジアザミ、イワニンジンのような温帯下部の植物とフジハタザオ、イワタデ、コタヌキラン、ムラサキモメンヅルのような高山性植物もあり美しい。三合目(2,272m)のあたりにはミヤマハンノキが多く、また落葉松が這っています。そしてミヤマハンノキの根に寄生するオニクという顕花植物が見られます。これは薬用植物として知られているもので切傷に効きます。五合目(2,397m)を経て中道巡りの道を横ぎります。その交叉点の北約200mに胎内潜りがあります。ここから上は樹木が全くなくなり六合目(2,967m)、七合目(3,120m)を過ぎ八合目(3,300m)で吉田口登山道に合流します。下山道は六合目から太郎坊まで砂の中を滑り下りる道です。

※底本:『日本案内記 関東篇(初版)』昭和5年(1930年)発行

令和に見に行くなら

名称
須走口
かな
すばしりぐち
種別
見所・観光
状態
現存し見学できる
備考
現在は五合目が起点となります。
住所
静岡県駿東郡小山町須走
参照
参考サイト(外部リンク)

日本案内記原文

登山道の起點は海拔八〇九米、これより頂上まで一三粁六。先づ須走淺閒神社を經て西に向ひ、山梨縣に通ずる縣道を橫ぎり、左折して精進川を渡る。それより小坂を登ると裾野の草原が見渡される。中ノ茶屋を過ぎ馬返(海拔一、三八〇米)に至れば坂道になり、濶葉喬木の森林帶に入り、やまはんのき、はうちはかへで、こはうちはかへで、うりはだかへで、なゝかまど、みやまざくら、こばのとねりこ、あづきなし、ひめしやふ、みづなら、ぶななどが見られる。一ノ宮雲切不動を經て太郞坊(一、六二〇米)に達すれば灌木帶に移り、さうしかんば、みやまはんのきが密生し、むしかり、みねざくら、うらじろのきを混ずる。これより右に上半針葉樹の密林をなす小富士(一、九〇六米)の寄生火山を望む。これに最も近づいた處で御室淺閒神社を經由する。

その附近にはしらびその巨樹が多い。二合目(一、八一八米)を過ぎ、古御嶽神社に至れば下山道が分れる。更に進めば廣い砂礫地に出る。こゝはこの登山道で最も特殊の植物景を呈する處で、乾生御花畑とも稱すべく、いたどり、ほたるふくろと共にふじあざみ、いはにんじんの如き溫帶下部の植物とふじはたざほ、いはたで、こたぬきらん、むらさきもめんづるの如き高山性植物が混じて美しい。三合目(二、二七二米)のあたりにはみやまはんのきが多く、また落葉松が匍つて居る。そしてみやまはんのきの根に寄生するおにくと云ふ顯花植物が見られる。これは藥用植物として名の聞えて居るもので切傷に效く。五合目(二、三九七米)を經て中道巡りの道を橫ぎる。その交叉點の北約二〇〇米に胎內潛りがある。これより上は樹木が全く盡き六合目(二、九六七米)、七合目(三、一二〇米)を過ぎ八合目(三、三〇〇米)で吉田口に合する。下山道は六合目から太郞坊まで砂の中を滑り下る。

御殿場のみどころ