神懸山(寒霞渓)

神懸山(寒霞溪)[指定名勝]
※現代の景観です。

昭和初期のガイド文

小豆島草壁町にあり、高松から土庄、下村(草壁)、坂手の3港へ汽船が往来し、3港から自動車の便があって、所要時間は下村からが最も少ないところです。応神天皇がかつてここを訪れた際に登攀に困難となり、そこで鉤を岩角に懸けてなんとか山頂に達することができたので、鍵掛の名があると伝え、鉤巒、浣花渓とも記されます。東に星ヶ城山、西に御前ヶ丸岳が立ち、東西約8km、南北約2kmにわたり、海抜おおよそ560m、関西の景勝地にして、全山の地質は花崗岩がその基礎を構成し、集塊岩がこれを覆い、大気水蝕の作用によって峰巒奇絶、怪巌秀絶、松や杉がその間を点綴して谷川が流れ、一歩進めばまた新しい景色が見え、渓山の景勝はその妙を極めて耶馬渓をしのぐと称され、表十二景、裏八景に分かれています。この景勝は四季いずれも観賞によいですが、秋の紅葉に燃える頃が第一で、初夏の頂上一帯でツツジの美観が広がる頃もまたよいものです。山嶺は四望頂といい、海上の眺望が雄大で、芭蕉の名吟を刻んだ猿簑の碑があり、俳人可大の書です。また山腹にある神懸山名称碑は中桐倹吉の撰文です。

※底本:『日本案内記 中国・四国篇(初版)』昭和9年(1934年)発行
寒霞渓

令和に見に行くなら

名称
神懸山(寒霞渓)
かな
かんかけやま(かんかけい)
種別
見所・観光
状態
現存し見学できる
住所
香川県小豆郡小豆島町神懸通
参照
参考サイト(外部リンク)

日本案内記原文

小豆島草壁町にあり、高松から土庄、下村(草壁)、坂手の三港へ汽船往來し、三港から自動車の便があつて、所要時閒は下村からが最も少い。應神天皇嘗てこゝに遊び給ひし時登攀に困難し給ひ、乃ち鉤を岩角に懸けて僅に山頂に達し給うたので、鍵掛の名があると傳へ、鉤巒、浣花溪とも記される。東に星ケ城山、西に御前ケ丸嶽峙ち、東西約八粁、南北約二粁に亙り、海拔凡そ五六〇米、關西の勝區にして、全山の地質花崗岩その基礎を構成し、集塊岩これを被覆し、大氣水蝕の作用によつて峰巒奇絕怪巖秀絕、松杉雅樹その閒を點綴して澗水流れ、一步進めば一景を呈し、溪山の勝その妙を極めて耶馬溪を凌ぐと稱され、表十二景、裏八景に分れて居る。この景勝四季孰れも觀賞によいが、秋季紅葉に燃ゆる時を以て第一とし、初夏頂上一帶に於ける躑躅の美觀もまた掬すべきものである。山嶺は四望頂と云ひ、海上の眺望雄大にして、芭蕉の名吟を刻せる猿簑の碑があり、俳人可大の書である。また山腹にある神懸山名稱碑は中桐儉吉の撰文である。

小豆島のみどころ