日光の植物
昭和初期のガイド文
日光全山は天然林で構成されており、植物帯がはっきりと形成されています。山麓から山頂に登るにつれて、栗帯、ブナ帯、シラベ帯、ハイマツ帯の区別が明確に観察できます。例えば、東照宮の山内から中禅寺までは栗帯、そこから中禅寺湖畔の東部まではブナ帯に属します。その次に湯元まではシラベ帯が続き、女峰山、男体山、白根山の頂上付近はハイマツ帯に分類されます。このように、東照宮の山内から白根山までのわずか25kmの間に、東京から樺太までの植物が整然と帯状に分布しているのです。
日光全山で見られる顕花植物の種類は1,100種類以上に及び、地衣類は戦場ヶ原や男体山の北麓に約500種が確認されています。それ以外にも、羊歯類、蘚類、苔類などの隠花植物を調査すれば、膨大な数に達することが分かります。特に樹木の属数について見ると、日光では100以上が確認されており、ヨーロッパ全大陸の30余りと比較してもはるかに多いです。さらに、日光の針葉樹は12属23種に及び、これはヨーロッパの6属10種の約2倍にあたり、北アメリカのそれに匹敵します。
戦場ヶ原はブナ帯とシラベ帯の中間にある沼沢地で、植物学上、非常に優れた観察地として知られています。古くから「お花畑」と呼ばれ、6月頃には花菖蒲が一面に咲き誇ります。また、ここは泥炭地でもあり、沼の中で成長した水苔が累積し、化学変化を起こして泥炭に変化していく様子を目の当たりにできる貴重な場所です。
令和に見に行くなら
- 名称
- 日光の植物
- かな
- にっこうのしょくぶつ
- 種別
- 見所・観光
- 状態
- 現存し見学できる
- 住所
- 栃木県日光市
- 参照
- 参考サイト(外部リンク)
日本案内記原文
日光の全山は天然林で、植物帶の形成著しく、山麓から山頂に登るに從ひ、栗帶、ぶな帶、しらべ帶、偃松帶の區別を明かに觀察することが出來る。卽ち東照宮の山内から中禪寺までは栗帶で、これから中禪寺湖畔の東部まではぶな帶である。次に湯元まではしらべ帶、女峯、男體、白根の頂上附近は偃松帶である。東照宮の山內から白根山に至る僅に二五粁の間に、東京から樺太に至るまでの植物が、整然と帶狀をなして居る。
日光の全山に產する顯花植物の種類は千百餘に及び、地衣類は戰場原及男體山の北麓にあるもの五百種と稱せられ、その他羊齒類、蘚類、苔類などの隱花植物を調査すれば莫大の數に達する。樹木の屬について見るに、日光では百を超え、ヨーロツパ全大陸の三十餘に比し遙に多い。また樹木の中針葉樹は、日光では十二屬二十三種に及び、これまたヨーロツパの六屬十種の二倍にあたり、北アメリカのそれに匹敵する。
戰場ケ原はぶな帶としらべ帶の中間にある沼澤地を含み、植物學上絕好の見學地である。古來お花畑と稱し、六月頃は花あやめが原一面に咲く。こゝはまた泥炭地で、沼の中に成長した水苔が段々と累積して、化學的變化を起し、泥炭に化する經路を目擊するに適する。