油壺験潮場

油壺驗潮場
※現代の景観です。

昭和初期のガイド文

三崎町油壺にあり、横須賀駅から途中まで自動車の便があります。ここには断面60cm²、深さ大干潮面下50cm~1mに達する井戸があり、井底の上部約20cmのところに中径8cmの通水孔が設けられ、外海に通じる孔頭には細い穴をあけた蓋が付けられています。これにより井戸の中の水面は、波浪の影響を極度に減らした海水面と等しいものとなり、井戸側にはひとつ突起部を設け、その上表面を験潮場における諸原子測定の固定点としています。井戸の直上には験潮室があり、ロードケルビン自記験潮儀が設置されています。これは井戸の底に浮遊する浮子の上下運動を約20分1に縮小して、時計装置により1日に1回転をする円筒の面に印をつけるものです。その潮位曲線により日次中等潮位を測定し、これよって月次年次の中等潮位を算定します。験潮は明治27年(1894年)に開始し現在も継続中です。ここで測定された中等海水面の値から、精密水準測量によって導いた東京参謀本部陸地測量部の水準原点の真高24.5mは3mmの差で一致しました。油壺験潮場の附属水準点真高は3.634mです。

※底本:『日本案内記 関東篇(初版)』昭和5年(1930年)発行

令和に見に行くなら

名称
油壺験潮場
かな
あぶらつぼけんちょうじょう
種別
見所・観光
状態
現存するが非公開
備考
当時の建物は隣接して建てられた新建屋へ機能を移していますが残っています。一般公開はされていません。

日本案内記原文

三崎町油壺にあり、驛から途中まで自動車の便がある。こゝには斷面六〇糎平方、深さ大干潮面下五〇糎乃至一米に達する井戶があり、井底の上部約二〇糎の處に中徑八糎の通水孔が設けられ、その外海に通する孔頭には細孔を穿てる蓋が附けられて居る。かくて井內の水面は、波浪の影響を極度に減卻した海水面と相等しきものとし、井側には一の突起部を設け、その上表面を驗潮場に於ける諸原子測定の固定點として居る。井戶の直上には驗潮室があり、ロードケルビン自記驗潮儀が設置されて居る。これは井底に浮遊する浮子の上下運動を約二十分一に縮小して、時計裝置により一晝夜に一回轉をする圓筒の面に印するものである。その印せる潮位曲線により日次中等潮位を測定し、これより月次年次の中等潮位を算定する。驗潮は明治二十七年に開始し現今繼續中である。こゝで測定された中等海水面の値から、精密水準測量により導いた東京參謀本部陸地測量部の水準原點の眞高二四米五は三粍の差で一致した。油壺驗潮場の附屬水準點眞高は三米六三四である。

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