狩場山

狩場山
※現代の景観です。

昭和初期のガイド文

狩場山は北海道南部では蝦夷富士に次ぐ標高をもち、日本海岸に近く大きな肩を張ってそびえる原始味豊かな山塊で、登山には相当不便ですが、北海道南部の盟主として最近登山家の注目を惹くようになりました。

この山塊は狩場山(1,520m)が最も高く、フモンナイ岳(1,337m)、東狩場山(1,319m)、前山(1,260m)、オコツナイ岳(1,170m)などがその翼となって山塊を形作っています。

登山路としては、寿都鉄道寿都駅下車、海岸に沿って政泊、歌島、木目、大平等の漁村を経て永豊まで約26kmで、ここまで一日行程です。もし幸いに寿都から発動機船があるようであれば千走までこれを利用すれば、千走から6kmの徒歩ですが、定期船ではなく、特に冬期はあまり期待できません。

次の日は千走の漁村を過ぎてからしばらく千走川に沿って、緩やかな登りとなります。賀老川の橋を渡って最後の急坂を登ったところに広い高地があり、そこに賀老の駅逓があります。永豊から約1.5km、そこから西南の広い台地を丹羽に出る道を経て、狩場山から東派する標高尾根北側の沢を登るのが簡単です。

冬季は賀老までは夏と同じですが、そこからは2つの登路があり、ひとつは東狩場山を経て尾根伝いに狩場山の頂上に至るもの、もうひとつは狩場山から東派する標高尾根を伝って直接狩場山頂に至るものです。比較的登りは容易ですが、海岸に近いため風の影響で時には蒼氷ができたり、雪面が硬化することが多く、800mから1,000m付近でスキーが使えないこともあります。賀老から頂上まで約6時間行程です。

※底本:『日本案内記 北海道篇(五版)』昭和11年(1936年)発行

令和に見に行くなら

名称
狩場山
かな
かりばやま
種別
見所・観光
状態
現存し見学できる
住所
北海道久遠郡せたな町瀬棚区北島歌
参照
参考サイト(外部リンク)

日本案内記原文

狩場山は北海道南方に於ては蝦夷富士につぐ標高を持ち、日本海岸に近く大きな肩を張つて聳ゆる原始味豐かな山塊で、登山には相當不便であるが、本道南方の盟主として最近登山家の注目を惹く樣になつた。

この山塊は狩場山(一、五二〇米)が最も高く、フモンナイ嶽(一、三三七米)、東狩場山(一、三一九米)、前山(一、二六〇米)、オコツナイ嶽(一、一七〇米)などがその翼をなして山塊を形作つて居る。

登山路としては、壽都鐵道壽都驛下車、海岸に沿うて政泊、歌島、木目、大平等の漁村を經て永豐まで約二六粁で、こゝまで一日行程である。若し幸に壽都から發動機船があれば千走までこれを利用すれば、千走から六粁の徒步であるが、定期でなく、殊に冬期は餘り期待出來ない。

次の日は千走の漁村を過ぎてからしばらく千走川に沿ひ、緩やかな登りとなる。賀老川の橋を渡つて最後の急坂を登つた處に廣い高地がある、そこに賀老の驛遞がある。永豐から約一粁半、そこから西南の廣き臺地を丹羽に出る道を經て、狩場山より東派する標高尾根北側の澤を登るのが容易である。

冬季は賀老までは夏と同じであるが、それよりは二つの登路がある、一は東狩場山を經て尾根傳ひに狩場山の頂上に至るもの、その二は狩場山より東派する標高尾根を傳つて直接狩場山頂に至るものである。比較的登高は容易であるが、海岸に近い爲風の影響で時には蒼氷が出來たり、雪面が硬化することが多く、八〇〇米から一、〇〇〇米附近でスキーが使へぬこともある。賀老から頂上まで約六時閒行程である。

二股・黒松内のみどころ