日光火山群

日光火山群
※現代の景観です。

昭和初期のガイド文

日光火山群は、第四紀に形成された火山群で、東西に連なる美しい山々が特徴です。この中で最も東に位置するのが月山(標高1,287m)であり、そこから女峰山(標高2,464m)、赤薙山(標高2,464m)、小真名子山(標高2,323m)、大真名子山(標高2,275m)、男体山(標高2,484m)、太郎山(標高2,268m)、山王帽子山(標高2,073m)、三ツ岳(標高1,945m)を経て、最西端の白根山(標高2,578m)に至ります。この中で白根山を除き、歴史時代には噴火の記録はありません。これらの火山は、秩父古生層を基盤とし、その間を貫く花崗岩が特徴です。

日光火山群の中で、女峰山と赤薙山は最も大きく、また最も古い火山とされています。現在では風化や水による侵食を受けていますが、それでもなおコニーデ(円錐形火山)の特徴を保ち、広大な裾野を形成しています。ただし、南側と西南側は他の火山の溶岩で覆われ、やや複雑な地形を見せています。山頂部には女峰山(標高2,464m)と赤薙山(標高2,272m)の2つの峰があり、その間の山稜は分水嶺を形成しています。この地域には放射状の谷が多数形成されており、特に東南方向に延びる稲荷川の谷が有名です。谷の上流には高さ約150mの断崖が馬蹄形に連なり、約1km続いています。この崖は貞享2年(江戸時代中期、1685年)の日光地震によって生じたもので、この崖から湧き出る水が七滝となり、稲荷川の源流となっています。この火山の溶岩は、両輝石玄武岩質安山岩から成っています。男体山は中禅寺湖の北に位置し、その湖面から約1,200mの高さでそびえています。面積約27km²を占める典型的なコニーデ型火山で、山頂には直径約800mの半円形の火口があります。最高点は火口壁の南側に位置し、北側は噴火による爆裂で崩壊しています。火口はカルデラを形成しており、底部は火口壁の最高部から200〜300mの深さがあり、火山灰や砂、礫などが堆積しています。火山体の外側は規則正しい傾斜を持ち、山頂に近い部分では30度以上の急斜面となりますが、下部に行くほど緩やかな傾斜となります。山体は噴出物で覆われ、樹木や草本が密生しており、地形の侵食が進んでいないため、幼年期の地形を見せています。

男体山の放射状谷の中で最大のものが北側の湯殿沢であり、火口瀬から北簾の深い谷に至ります。他にも「薙」と呼ばれる刻谷が多く見られますが、いずれも深さ100mに達せず、降雨時にも外水が見られません。この火山は花崗岩を基盤としており、東南部では石英斑岩を覆い、西南部では半花崗岩を覆っています。火山体の構造は「薙」と呼ばれる側壁から観察することができ、火山岩屑の層が見られるほか、玄武岩質安山岩の溶岩流がその間に挟まれています。丹勢山(標高1,482m)は男体山の東南の裾野に位置し、急な斜面を持ちながら山頂部は比較的平坦で、全体が溶岩の原層から成り立っています。

男体山の北には、大真名子、小真名子、太郎の3つのトロイデ型火山があります。大真名子山と小真名子山は女峰山と赤薙山の両側面に噴出したもので、太郎山の山頂には直径約250m、深さ約60mの火口があります。また、西北側には爆裂による凹みがあり、ここから深さ約250mの放射谷が広がっています。この山の西側には寄生火山である山王帽子山が位置します。これら4つの火山は橄欖石を含む両輝石玄武岩質安山岩から成っています。

※底本:『日本案内記 関東篇(初版)』昭和5年(1930年)発行
日光の諸山 鶴田駅付近より望む

令和に見に行くなら

名称
日光火山群
かな
にっこうかざんぐん
種別
見所・観光
状態
現存し見学できる
住所
栃木県日光市
参照
参考サイト(外部リンク)

日本案内記原文

第四紀に噴起したもので東西に列ぶ、その最も束にあるものは月山(海拔一、二八七米)でそれより女峯赤薙山(二、四六四米)小眞名子山(二、三二三米)大眞名子山(二、二七五米)男體山(二、四八四米)太郞山(ニ、二六八米)山王帽子山(二、〇七三米)三ツ岳(一、九四五米)を經て最西の白根山(二、五七八米)に至る。その内白根山を除く外は、歷史時代に於て活動の記錄がない。これらの火山の基底は、秩父古生層とこれを貫いて出た花崗岩類である。

日光火山群中で女峯赤薙山は最も大きく且最も古きものである。今は風化水蝕を受けてその原形の多少を損して居るが、しかもコニーデの特性を存し裾野の發達著しく、たゞ南側と西南側は他の火山の熔岩で掩はれ、やゝ複雑な地貌を呈して居る。その頂上の女峯山(二、四六四米)と赤薙山(ニ、二七二米)の二峯を連ねる山背は分水界をなし、南北兩側に放射谷が生じ、東南に走る稻荷川の谷が最も著しい。その谷頭には直立一五〇米の斷崖が蹄鐵狀をなして一粁に連り南に開く。この崖は貞享二年の日光地震の際に生じたものである。この斷崖の集塊岩中より出る水は、七瀧となり稻荷川の水源をなして居る。この山の熔岩は兩輝石玄武岩質安山岩より成る。男體山は中禪寺湖の北に接し、この水面上一、二〇〇米に聳え、二七方粁の面積を占むる標式的のコニーデで、山項には直徑約八〇〇米の半圓形の火口がある。最高點は火口壁の南側にあり、北側は爆裂のために飛散し、火口はカルデラをなし、火口底に火口壁の最高部から二〇〇米乃至三〇〇米の深さを爲し、火山灰、砂、礫その他火山岩層が堆積して居る。火山の外側は四方に規則正しき傾斜をなし、頂上に近き處は三〇度以上に及び、下るに從ひ緩傾斜となる。山側は火山噴出物で掩はれ、喬木、灌木、草本密生し、山體の截開は未だ進まず幼年期の地貌を呈して居る。

放斜谷の最大なるものは北側にある湯殿澤で、火口瀨から北簾の深澤に及ぶ。この外刻谷の薙と稱せられて居るのが多いが、何れも深さ一〇〇米以上に及ばす、降雨の際の外水を見ない。この火山は花崗岩の基底を有し、男體熔岩は東南部にては石英斑岩を掩ひ、西南部にては半花崗岩を掩ふ。火山體の構成は薙の側壁にて、これを察することを得べく、火山岩屑の層を示し、その間に玄武岩質安山岩の熔岩流が介在して居る。丹勢山(一、四八二米)は男體山の東南の裾にあたり、側面の傾斜急にして、山上は比較的平らで、全く熔岩の原層より成る。

男體山の北には大眞名子、小眞名子、太郞の三トロイデ火山あり、前二者は女峯赤薙の兩腹に噴出したもので、太郞山は頂上に火口を有し、その直徑二五〇米、深さ六〇米に及び、西北側には爆裂によつて生じたる凹みがあり、これより深さ二五〇米の放射谷が走つて居る。この山の西には寄生火山の山王帽子山がある。これら四火山は含橄欖石、兩輝岩玄武岩質安山岩より成る。

中禅寺湖のみどころ