出流鍾乳洞

出流の石灰洞
※現代の景観です。

昭和初期のガイド文

千手院の境内にあり、俗に出流山奥院霊窟といいます。洞窟は観音堂の背後西約300mの間に開口し、東にあるものを大師ノ窟または獅子ノ窟といい、次を奥院ノ窟、西にあるものを大日ノ窟と称します。大師ノ窟は入口高さ10m、幅2m、岩石の裂罅に沿って浸蝕された洞窟で、洞内は広まり鍾乳石は前後左右にかかっています。入口から約15mのところに高さ1.5m、直径90cmの石筍があり、その上に数個の窪みを生じ水をたたえています。そのひとつを硯石といいます。その西100mにある奥院ノ窟は120段の階廊を登って到達します。入口は高さ2m、幅4m、北40度西の方向に通じ、入るにしたがって広く高く、正面に高さ3mの大鍾乳石が懸垂し、その台脚は円丘状をなしています。これを蓮台上の観音と呼びます。奥院ノ窟の西60mに大日ノ窟が開口し、北30度西に通じ、奥行80m、幅6~10m、奥に近いところで窟は2つに分岐し、右は狭く、左には大日如来の後姿と称する見事な石柱があり、その上に数十本の鍾乳石が垂下しています。高さは中央のところで15m。

※底本:『日本案内記 関東篇(初版)』昭和5年(1930年)発行

令和に見に行くなら

名称
出流鍾乳洞
かな
いずるしょうにゅうどう
種別
見所・観光
状態
現存し見学できる
住所
栃木県栃木市出流町288 満願寺内
参照
参考サイト(外部リンク)

日本案内記原文

千手院の境內にあり、俗に出流山奧院靈窟と云ふ。洞窟は觀音堂の背後西約三〇〇米の閒に開口し、東にあるを大師ノ窟または獅子ノ窟と云ひ、次を奧院ノ窟、西にあるを大日ノ窟と稱する。大師ノ窟は入口高さ一〇米、幅二米、岩石の裂罅に沿うて浸蝕された洞窟で、洞內は廣まり鍾乳石は前後左右に懸る。入口より約一五米の處に高さ一米半、直徑九〇糎の石筍があり、その上に數個の窪みを生じ水を湛へて居る。その一つを硯石と云ふ。その西一〇〇米にある奧院ノ窟は一二〇階の階廊を登りて到達する。入口は高さ二米、幅四米、北四〇度西の方向に通じ、入るに從ひ廣く且つ高く、正面に高さ三米の大鍾乳石が懸垂し、その臺脚は圓丘狀をなす。これを蓮臺上の觀音と稱す。奧院ノ窟の西六〇米に大日ノ窟が開口し、北三〇度西に通じ、奧行八〇米、幅六米乃至一〇米、奧に近き處で窟は二つに分岐し、右は狹く、左には大日如來の後姿と稱する見事な石柱があり、その上に數十本の鍾乳石が垂下して居る。高さは中央の處で一五米。

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