西山温泉

西山溫泉
※現代の景観です。

昭和初期のガイド文

富士身延鉄道下山波高島駅下車、富士川の対岸早川大橋まで徒歩または自動車による。早川大橋の袂からは早川の流に沿って22kmの上流新倉まで早川軌道の便があります。新倉から温泉場までは徒歩、早川の流に沿ってさらに12kmを北に向かって進みます。以前は甲府から鰍沢に至り、それから海抜約1,800mの出頂の茶屋を越える1日路でしたが、現在は早川沿いの軌道の便が開けて西山入りの本道となりました。温泉は旧温泉、新温泉に分かれ、いずれも弱塩類泉で、旧温泉には御殿湯、御座湯、穴湯、目湯の4泉、新温泉には元湯、お玉の湯の2泉があり、婦人病、皮膚病、リウマチ、胃腸病、神経諸病に効くといいます。温泉場から北4kmの奈良田には孝謙天皇御入湯の伝説があります。旅館は旧温泉に深沢、新温泉に蓬萊館。

西山は山梨県下における唯一の温泉ですが、交通不便のために多く世に知られていませんでした。しかし現在は早川沿いの交通の便も開け、また登山熱の勃興とともに、日本南アルプス登山の発足点として、ようやく発展していくことになります。温泉地付近および早川沿いの道は渓流美に富み、秋は紅葉の錦に染まります。途中下湯島、山王神社の境内に大杉があります。幹囲目通11m、根廻り12m、山梨県下第2位の巨杉です。

※底本:『日本案内記 関東篇(初版)』昭和5年(1930年)発行

令和に見に行くなら

名称
西山温泉
かな
にしやまおんせん
種別
温泉
状態
現存し見学できる
住所
山梨県南巨摩郡早川町湯島
参照
参考サイト(外部リンク)

日本案内記原文

同下山波高島驛下車、富士川の對岸早川大橋まで徒步または自動車による。早川大橋の袂からは早川の流に沿うて二二粁の上流新倉まで早川軌道の便がある。新倉から溫泉場迄は徒步、早川の流に沿うて尙一二粁を北に向つて進むのである。以前は甲府から鰍澤に至り、それより海拔約一、八〇〇米の出頂の茶屋を越える一日路であつたが、今は早川沿ひの軌道の便が開けて西山入りの本道となつた。溫泉は舊溫泉、新溫泉に分れ、何れも弱鹽類泉で、舊溫泉には御殿湯、御座湯、穴湯、目湯の四泉、新溫泉には元湯、お玉の湯の二泉あり、婦人病、皮膚病、リウマチス、胃腸病、神經諸病に效くと云ふ。溫泉場から北四粁の奈良田には孝謙天皇御入湯の傳說がある。旅館は舊溫泉に深澤、新溫泉に蓬萊館。

西山は山梨縣下に於ける唯一の溫泉であるが、交通不便の爲に多く世に知られなかつた。しかし今は早川沿ひの交通の便も開け、また登山熱の勃興と共に、日本南アルプス登山の發足點として、漸次發展することゝならう。溫泉地附近及早川沿ひの道は溪流美に富み、秋は紅葉の錦に粧はれる。途中下湯島、山王神社の境內に大杉がある。幹圍目通一一米、根廻り一二米、山梨縣下第二位の巨杉である。

身延のみどころ