富士登山大宮口

富士登山大宮口
※現代の景観です。

昭和初期のガイド文

大宮の浅間大社から富士山頂まで約20km、まず神社(海抜135m)から東北に向かい、クワおよびミツマの畑を見ながら行くと4kmで万野の集落を過ぎ山宮に達します。ここは浅間神社の旧社地で杉の木立があります。ここからススキ、アリノトウグサ、タチフウロ、ウツボグサ、オオバギボウシュ、ギボウシュなどの多い草原のなかにテリハノイバラの光沢ある葉と白い、大きな花が目立つところを通り、猪土手を経て懸巣畑(580m)に至れば傾斜は急になり、一合目(1,080m)に達します。ここからは裾野の原野および駿河湾が一望できます。先は森林帯となってケヤキ、センノキ、ヒメシャラ、ウシコロシ、ヤシャブシ、サハシバ、ウチワカエデ、メイゲツカエデ、アズキナシなどがあり、さらに登ればブナ、ミズナラ、イタヤカエデ、ヤマハンノキ、キハダなどが見られます。二合目(2,055m)で茗荷岳の麓から湧く泉に喉を潤し、急坂を登れば広葉喬木林は徐々に針葉喬木林に移り、コメツガ、カラマツ、イラモミ、トウヒなどが多くなります。三合目(2,180m)を過ぎ四合目(2,480m)に進めば焼石原となり、草も木も地上を這い眼に触れるものは、ミヤマヤナギ、タケカンバ、カラマツの小さなものなど、イワタデ、イタドリ、ミヤマオトコヨモギ、イワオウギ、タイツリオウギ、ナラサキモメンヅル、フジハタザオ、イワツメクサなどの草木です。五合目(2,600m)では中道巡り道を横ぎります。宝永の噴火口はその東300mにあります。ここから八合目(3,240m)までは熔岩流の上を辿ります。胸突の嶮はその上にありほとんど草木は見えず、ただイワタデのみが岩間に生えています。胸突を踏破すれば頂上浅間神社奥宮の前に出ます。

※底本:『日本案内記 関東篇(初版)』昭和5年(1930年)発行

令和に見に行くなら

名称
富士登山大宮口
かな
ふじとざんおおみやぐち
種別
見所・観光
状態
現存し見学できる
備考
現在は「富士宮口」と呼ばれ、五合目が起点となります。
住所
静岡県富士宮市
参照
参考サイト(外部リンク)

日本案内記原文

大宮の淺閒神社から富士山頂まで約二〇粁、先づ神社(海拔一三五米)から東北に向ひ、桑及みつまの畑を見ながら行くこと四粁で萬野の部落を過ぎ山宮に達す、こゝは淺閒神社の舊社地で杉の木立がある。これよりすゝき、ありのたふぐさ、たちふうろ、うつぼぐさ、おほばぎばうしゆ、ぎばうしゆなどの多い草原の中に往々てりはのいばらの光澤ある葉と白い、大きな花が目立つ處を通り、猪土手を經て懸巢畑(五八〇米)に至れば傾斜は急になり、一合目(一、〇八〇米)に達する。こゝからは裾野の原野及駿河灣が一眸の中に集まる。これより先は森林帶でけやき、せんのき、ひめしやら、うしころし、やしやぶし、さはしば、うちはだかへで、めいげつかへで、あづきなしなどがあり、更に登ればぶな、みづなら、いたやかへで、やまはんのき、きはだなどを見る。二合目(二、〇五五米)で茗荷嶽の麓から湧く泉に渴を醫し、急坂を登れば濶葉喬木林は徐々に針葉喬木林に移り、こめつが、からまつ、いらもみ、たうひなどが多くなる。三合目(二、一八〇米)を過ぎ四合目(二、四八〇米)に進めば燒石原となり、草も木も地上に臥し眼に觸れるものは、みやまやなぎ、たけかんば、からまつの矮小なるものなど、いはたで、いたどり、みやまをとこよもぎ、いはわうぎ、たひつりわうぎ、ならさきもめんづる、ふじはたざほ、いはつめくさなどの草木である。五合目(二、六〇〇米)では中道巡り道を橫ぎる。寶永の噴火口はその東三〇〇米にある。これより八合目(三、二四〇米)までは熔岩流の上を辿る。胸突の嶮はその上にあり殆ど草木を見ず、たゞいはたでのみが岩閒に生へて居る。胸突を踏破すれば頂上淺閒神社奧宮の前に出る。

富士のみどころ