浄土寺

淨土寺[眞言宗]
※現代の景観です。

昭和初期のガイド文

播丹鉄道小野駅の東北約6km、加東郡小野町浄谷にあり、途中小野町まで自動車の便があります。鎌倉時代建久年間(1190~1199年)に俊乗坊重源が奈良東大寺を再建の時、弟子観阿をして大部荘に建立復興させたものです。その後安土桃山時代の天正年間(1573~1592年)には豊臣秀吉が寺領を寄せ、また徳川氏も朱印状を与え、法灯を今日に伝えています。この地方における著名な古寺です。

本堂(薬師堂)[国宝] 建久4年(1193年)の建築で五間五面屋根宝形造本瓦葺、薬師如来を安置しています。その構造様式は奈良東大寺南大門と同様天竺様に属する稀な遺構です。すなわち桝組は天竺様挿肘木を用い、三手先を組んでいます。全体の権衡雄大荘重、斗栱の配置錯綜警抜蓋し天竺様建築の最も完備円熟したものです。

浄土堂(阿弥陀堂)[国宝] 本堂と同時の建築で、三間三面、単層屋根宝形造、本瓦葺でその構造様式もまた本堂と同じく天竺様に属しています。外側各柱の支える三重の挿肘木は頭貫からも下部に起りかつその組方粗大であって、深い軒とあいまって重厚の感を加えています。内部の床は総板敷となり、天井は化粧屋根裏を見せ、内陣は方一間、高さ9m朱塗の大柱を建てて須弥壇を設け、内陣柱からは肘挿木を放射状に出して、側柱との間に大小の虹梁を架け、その構造は複雑雄大にして天竺様建築の特徴を発揮しています。須弥壇上には巨大な金色の阿弥陀三尊像を安置し、崇高な感に満ちています。

阿弥陀三尊像[国宝] 浄土堂の本尊で、三像とも立像で中尊の高さは5mあまりに達しています。木造漆箔にして仏師湛慶の作と伝え、鎌倉時代の作で建立当初のものです。

阿弥陀立像[国宝] 浄土堂須弥壇の後方に安置されています。木造漆箔、高さ約2m、左右の手に来迎印を結んで立っています。相好円満、豊麗にして61年目毎に執行される来迎会の本尊と伝えています。

開山堂、本堂のそばにあり、三間三面宝形造、江戸時代の建築で、重源上人坐像[国宝]を安置しています。木造高さ約102cm、背面に「天福二年歳次甲午二月十四勧進智阿弥陀仏為後生菩提泰営之自南都入口云々」また膝裏には「御影堂造立次第建長六年歳次甲寅三月十七日棟上也建久八年歳次丙辰四月廿九日」の貴重な墨書銘があります。

  • 宝物
  • 真言八祖像[国宝] 8幅 絹本著色、八祖像の古体を伝えた鎌倉時代の優れた作です。
  • 仏涅槃図[国宝] 1幅 絹本著色、室町時代の優秀な作です。
  • 五輪塔[国宝] 1基 銅製、地輪を支える脚付の台には四方に四天王の像が陰刻されています。
※底本:『日本案内記 近畿篇 下(初版)』昭和8年(1933年)発行

令和に見に行くなら

名称
浄土寺
かな
じょうどじ
種別
見所・観光
状態
現存し見学できる
住所
兵庫県小野市浄谷町2094
参照
参考サイト(外部リンク)

日本案内記原文

播丹鐵道小野驛の東北約六粁、加東郡小野町淨谷にあり、途中小野町まで自動車の便がある。鐮倉時代建久年閒に俊乘坊重源が奈良東大寺を再建の時、弟子觀阿をして大部莊に建立復興せしめた。その後天正年閒には豐臣秀吉寺領を寄せ、また德川氏も朱印狀を與へ、法燈を今日に傳へて居る。この地方に於ける著名な古寺である。

本堂(藥師堂)[國寶] 建久四年の建築で五閒五面屋根寶形造本瓦葺、藥師如來を安置して居る。その構造樣式は奈良東大寺南大門と同樣天竺樣に屬する稀な遺構である。卽ち桝組は天竺樣插肘木を用ゐ、三手先を組んで居る。全體の權衡雄大莊重、斗栱の配置錯綜警拔蓋し天竺樣建築の最も完備圓熟せるものである。

淨土堂(阿彌陀堂)[國寶] 本堂と同時の建築にして、三閒三面、單層屋根寶形造、本瓦葺でその構造樣式もまた本堂と同じく天竺樣に屬して居る、外側各柱の支ふる三重の插肘木は頭貫よりも下部に起り且つその組方粗大であつて、深い軒と相俟つて重厚の感を加へて居る。內部の床は總板敷となし、天井は化粧屋根裏を見せ、內陣は方一閒、高さ三十尺朱塗の大柱を建てて須彌壇を設け、內陣柱よりは肘插木を放射狀に出して、側柱との閒に大小の虹梁を架し、その構造複雜雄大にして天竺樣建築の特徵を發揮して居る。須彌壇上には巨大な金色の阿彌陀三尊像を安置し、崇高な感に滿ちて居る。

阿彌陀三尊像[國寶] 淨土堂の本尊で、三像とも立像で中尊の高さは十七尺餘に達して居る。木造漆箔にして佛師湛慶の作と傳へ、鐮倉時代の作で建立當初のものである。

阿彌陀立像[國寶] 淨土堂須彌壇の後方に安置されて居る。木造漆箔、高さ約六尺五寸、左右の手に來迎印を結んで立つて居る。相好圓滿、豐麗にして六十一年目每に執行される來迎會の本尊と傳へて居る。

開山堂、本堂の傍にあり、三閒三面寶形造、江戶時代の建築で、重源上人坐像[國寶]を安置して居る。木造高さ約二尺七寸、背面に「天福二年歲次甲午二月十四勸進智阿彌陀佛爲後生菩提泰營之自南都入口云々」また膝裏には「御影堂造立次第建長六年歲次甲寅三月十七日棟上也建久八年歲次丙辰四月廿九日」の貴重な墨書銘がある。

  • 寶物
  • 眞言八祖像[國寶] 八幅 絹本著色、八祖像の古體を傳へた鐮倉時代の優れた作である。
  • 佛涅槃圖[國寶] 一幅 絹本著色、室町時代の優秀な作である。
  • 五輪塔[國寶] 一基 銅製、地輪を支ふる脚付の臺には四方に四天王の像が陰刻されて居る。

三木・加東のみどころ