藺牟田池の泥炭形成植物群落

藺牟田池の泥炭形成植物群落[指定天然記念物]
※現代の景観です。

昭和初期のガイド文

入来駅の東南12km、藺牟田村藺牟田にあり、途中まで自動車の便があります。池は海抜295mの地に位置する火口湖で、ほぼ円形をして、周囲約4km、排水口は自然のものと人工的なものと2つありますが、渇水時には排水をしていません。湖の水が高くなるのは梅雨の季節で、低水との差30cmあまりで、最深点でも2.4mを出ないようです。湖中の水生植物はヒツジグサ、ジュンサイの2種だけで、西および北の一帯の湖岸には低層湿原が発達し、ヨシ、アンペライ、フトイ等の挺水植物が鬱生し、陸生湿地植物も少なくありません。

湖岸の渇水したところ、あるいは湖岸に近い水中に大小種々の島嶼が散在し、里人はこれを藺の根と呼んでいます。いずれも植物またはその枯れたものから形成され、渇水時には湖底に固着し、高水の際は浮遊して浮島となるといいます。これら泥炭質の島は長幅ともに約1.2~1.5mのものが多く、大きなものは約55mにおよびます。島上には種々の挺水植物、湿地植物、純陸生植物等を生じ、その主なものは、ヨシ、アンペライ、アシカキ、サンカクイ、ホシヤマアハ、ススキ、カリマタカヤ、ヒトモトススキ、ヤノネクサ、エゾミソハギ、ヌマトラノオ、コシダ、ハイゴケ、コブナグサおよび黒松です。

※底本:『日本案内記 九州篇(六版)』昭和13年(1938年)発行

令和に見に行くなら

名称
藺牟田池の泥炭形成植物群落
かな
いむたいけのでいたんけいせいしょくぶつぐんらく
種別
見所・観光
状態
現存し見学できる
住所
鹿児島県薩摩川内市祁答院町藺牟田1944
参照
参考サイト(外部リンク)

日本案内記原文

入來驛の東南一二粁、藺牟田村藺牟田にあり、途中まで自動車の便がある。池は海拔二九五米の地に位する火口湖にして、略々圓形をなし、周圍約四粁、排水口は自然的のものと人工的のものと二箇あるが、渴水時には排水を見ない。湖の高水は梅雨の節であつて、低水との差三〇糎餘に及び、最深點も二米四を出ないやうである。湖中の水生植物はひつじぐさ、じゆんさいの二種に過ぎず、西方及北方一帶の湖岸には低層濕原が發達し、よし、あんぺらゐ、ふとゐ等の挺水植物が鬱生し、陸生濕地植物も少くない。

湖岸の渴水せるところ、或は湖岸に近い水中に大小種々の島嶼が散在し、里人はこれを藺の根と呼んで居る。何れも植物またはその遺體より形成され、渴水時には湖底に固着し、高水の際は浮遊して浮島をなすと云ふ。これ等泥炭質の島は長幅共に約一米二乃至一米半のもの多く、大なるものは約五五米に及ぶ。島上には種々の挺水植物、濕地植物、純陸生植物等を生じ、その主なものは、よし、あんぺらゐ、あしかき、さんかくゐ、ほしやまあは、すゝき、かりまたかや、ひともとすゝき、やのねくさ、ゑぞみそはぎ、ぬまとらのを、こしだ、はひごけ、こぶなぐさ及黑松である。

川内のみどころ