那須火山群

那須火山群

昭和初期のガイド文

栃木県の北部にそびえ、那須火山群の中心には茶臼岳が位置しています。その南には南月山、黒尾谷岳、北には朝日岳、三本槍岳があり、これらを総称して「那須の五峰」と呼びます。この火山群は東方に美しい裾野を広げています。火山の成り立ちを順を追ってみると、まず朝日岳と三本槍岳が形成され、その後南月山と黒尾谷岳が噴出し、最後に茶臼岳が誕生しました。朝日岳と三本槍岳は成層火山であり、山頂付近には多くの爆裂火口が見られます。これらの火口は雨水による侵食を受け、複雑な山頂地形を形成しています。三本槍岳の東南には「大倉場」と呼ばれる窪地があり、一面が火山灰に覆われ、ところどころに水が溜まっています。朝日岳周辺には3つの爆裂火口があり、いずれも馬蹄形をしています。中でも北側にある「毘沙門火口」は最も大きく、東に開口して毘沙門沢となっています。他にも、南側に開けた火口と、西南側にある御沢の源となる小さな火口があります。南月山と黒尾谷岳は、西方の白笹山と一体となって一つの火山を形成しており、火口跡はこれらの山の間に存在します。西南方向には「小沢名の火口瀬」と呼ばれる開口部があり、南月山の東北側には寄生火山の飯盛山が見られます。

那須火山群は、南北2つの火山の間に広がる巨大な爆裂火口が特徴的です。この火口の面積は約8平方kmに及び、東南方向に開いています。那須の温泉群のうち、板室温泉と三斗小屋温泉を除いたほとんどの温泉は、この火口内に位置しています。茶臼岳は、この大火口の西北端に偏って噴出した火山です。その溶岩流は火口内に広がり、東は緩やかな傾斜で高雄股の北方に達し、西は急斜面となり姥ヶ平に至ります。北側では明礬沢に迫り、南側では高雄股に達する地形が見られ、四方は多くの渓流の侵食を受けており、渓谷は30m以上の断崖を形成しています。茶臼岳は二重火山で、北部には外輪山となる溶岩円錐丘があり、中央には火山噴出物からなる火口丘がそびえます。その火口源は北部で確認され、火口丘の中央からやや南寄りには円形の爆裂火口が存在しています。その南側には高湯山がそびえ、標高は1,917mで那須岳の最高点となっています。西側には西に開口する爆裂火口があり、その底部は「無言の谷」と呼ばれ、亀裂が残る地形から盛んに硫黄を含む煙が噴き出しています。このほかにも多数の小さな爆裂火口が点在しており、現在も多くの場所で噴煙を観察することができます。那須大爆裂火口内には、明礬沢、大丸、苦土沢、湯本の4つの硫気孔があり、以下の温泉が湧き出ています。塩類泉には北温泉(55度)、旭温泉(55度)、大丸温泉(74度)、弁天温泉(54度)、硫黄泉には高雄股温泉(7度)、酸性泉には湯本温泉(78度)が挙げられます。このほか、那須岳の西麓には、塩類泉として三斗小屋温泉(55度)や同じく塩類泉の板室温泉(39度)があります。

※底本:『日本案内記 関東篇(初版)』昭和5年(1930年)発行

令和に見に行くなら

名称
那須火山群
かな
なすかざんぐん
種別
見所・観光
状態
現存し見学できる
住所
栃木県那須郡那須町
参照
参考サイト(外部リンク)

日本案内記原文

栃木縣の北部に聳え、茶臼岳その中央に座し南に南月山、黑尾谷岳北に朝日岳、三本槍岳あり通じて那須の五峯と稱せられ、東方に美しき裾野を曳いて居る。その成生の順序を見るに、朝日岳、三本槍岳先づ生じ、次に南月山、黑尾谷岳の噴起を見、最後に茶臼岳を迸出したものである。朝日岳、三本槍岳は一個の成層火山で、山上處々に爆裂火口を生じ、雨水の蝕磨これにかはりて、複雜なる山頂を示すやうになつたのである。三本槍岳の東南にある大倉場と稱する窪地はこの火山の火口址で、一面に灰砂を以て掩はれ、處々に瀦水を湛へて居る。朝日岳の周圍には三個の爆裂火口があり何れも蹄鐵形を呈する。その中北側にあるものが最も大きく毘沙門火口と稱せられ、東に開口して毘沙門澤となる。南側にあるものはこれに次ぎ南に開け、西南側にあるものは最も小さく西南に開いて御澤の源となつて居る。南月山黑尾谷岳もその西方にある白笹山と共に一個の火山をなすもので、火口址はこの三山の間に存し、西南に開いて小澤名の火口瀨となつて居る。南月山の東北側には飯盛山の寄生火山がある。

この南北二火山の間には巨大なる那須爆裂火口あり、約八平方粁の面積を占め、東南に開き、那須諸溫泉中板室と三斗小屋を除く外は皆この火口中に存して居る。茶臼岳はこの大火口の西北端に偏倚して迸發したもので、その熔岩流は火口內に溢流し、東方は緩傾斜を以て高雄股の北方に達し、西方は急下して姥ケ平に至る。北は明礬澤に迫り、南は高雄股に及び、四周夥しく溪流の浸蝕を受け、溪谷は三〇米以上の絕壁を形成して居る。茶臼岳は二重火山で、北部にあるその外輪山は熔岩圓錐丘で、中央火口丘は火山抛出物の圓錐丘である。その火口源は北部に於てのみ認められる。火口丘の中央から少しく南方に偏し、圓形の爆裂火口があり、その南に聳ゆる高湯山は海抜一、九一七米で那須岳の最高點である。西側には西に開口する爆裂火口があり、その底を無言の谷といひ、裂罅を存して盛に硫烟を噴出して居る。この他に數多の小爆裂火口が存し噴烟するものが多い。

那須大爆裂火口内には明礬澤、大丸、苦土澤及湯本の四硫氣孔があり、また溫泉には鹽類泉に北(五五度)旭(五五度)大丸(七四度)辨天(五四度)硫黄泉に高雄股(七度)酸性泉に湯本(七八度)がある。この他那須岳の西麓に鹽類泉の三斗小屋(五五度)同質の板室(三九度)の溫泉がある。

那須のみどころ