明王院
明王院[眞言宗]
昭和初期のガイド文
福山駅の西約2km、市内草戸にあり、付近まで自動車の便があります。前に蘆田川を控えて風致がよいところです。
この寺は平安時代の大同年間(806~810年)弘法大師の創建と伝わる古刹です。
本堂[国宝] 五間五面、入母屋造、本瓦葺で、正面に一間の向拝があります。室町時代の建築です。
十一面観音立像[国宝] 本堂の本尊で、堂と同時代の蒔絵の厨子内に安置されています。木造、高さ約170cm、左手に宝瓶を執り、右手を垂れ、端厳な相好を備え、纏衣の翻転が巧みで刻線は深くて強く、作風は剛健、稀に見る優秀な遺品です。寺伝に伝教大師作とありますが時代は確かに相当します。平安時代の作です。
五重塔[国宝] 方三間、非常に細高い五重塔ですが、各層屋根の流れが極めて緩やかなため、よくこの欠点を補っています。内部嵌板に施された彩色画は室町時代の特徴を現し、建築の時代とよく一致しています。
※底本:『日本案内記 中国・四国篇(初版)』昭和9年(1934年)発行
令和に見に行くなら
- 名称
- 明王院
- かな
- みょうおういん
- 種別
- 見所・観光
- 状態
- 現存し見学できる
- 住所
- 広島県福山市草戸町1473
- 参照
- 参考サイト(外部リンク)
日本案内記原文
驛の西約二粁市內草戶にあり、附近まで自動車の便がある。前に蘆田川を控へて風致が佳い。
當寺は大同年閒弘法大師の創建と傳ふる古刹である。
本堂[國寶] 五閒五面、入母屋造、本瓦葺で、正面に一閒の向拜がある。室町時代の建築である。
十一面觀音立像[國寶] 本堂の本尊で、堂と同時頃の蒔繪の厨子內に安置されて居る。木造、高さ約四尺五寸、左手に寶甁を執り、右手を垂れ、端嚴な相好を備へ、纏衣の飜轉巧にして刻線は深くして强く、作風剛健樸淳稀に見る優秀の遺品である。寺傳に傳敎大師作とあるが時代は確かに相當する。平安時代の作である。
五重塔婆[國寶] 方三閒、頗る細高い五重塔婆であるが、各層屋根の流れ極めて緩なるため、よくこの缺點を補つて居る。內部嵌板に施された彩色畫は室町時代の特徵を現はし、建築の時代とよく一致して居る。