仙台・平泉・花巻

せんだい・ひらいずみ・はなまき

仙台・平泉・花巻のエリア一覧

仙台・平泉・花巻ガイド

岩切から出て、本線を左に見て東に進み、稲田の間を過ぎ市川を渡れば左の小高いところに多賀城址が眺められます。そこから丘陵の間に入り左の方塩竈街道に接近するところに古の名所野田の玉川の跡を望み、やがて塩竈に着きます。

岩切を出て東北に向かい利府を過ぎ丘陵の間を進み、右に赤沼を望み、右に分かれる松島道を横ぎり、なおも東北に進み、東に折れて松島に着きます。

小牛田から東北に向かい、稲田の間を進み北浦、陸前古川、中新田を過ぎ北に転じ荒雄川の谷に入り、岩出山、池月を経て紅葉に名高い小黒ヶ崎山を右に見て玉造の温泉郷に入ります。川渡、鳴子を通って紅葉の花淵山を仰ぎ、中山平を過ぎ山形県に入り堺田に着きます。

一ノ関を出て東に向かい丘陵の間を進み、真滝を過ぎ北上川を渡ります。川はこの上流8kmの間丘陵の間に峡流をなし両岸秋季には紅葉の美があります。しばらく川に沿って下り次に長いトンネルを経て陸中間崎に着きます。ここから砂鉄川の河谷を北に遡り、陸中松川を過ぎ、猊鼻渓を右に見、東に折れ摺沢に至ります。さらに南に向かい千厩を経て小梨に至り東折して矢越を過ぎ折壁一無に着きます。

平泉を過ぎて陸羽街道を横ぎり、右に近く高館山の森を見、左に無量光院跡、金鶏山、中尊寺の月見坂を見て桜川を渡り東北に向かって史上に名高い衣川を渡ります。

このあたり右窓に北上川を隔てて美しい束稲山(海抜569m)を望みつつ北進して、さらに広い平野に出て前沢を過ぎ、右に北上山地の連嶺を見、前方にその最高峯早池峯山(海抜1,900m)を仰ぎ、陸中折居を過ぎ、水沢に着きます。

水沢を出て、胆沢川の扇光地を西北に進み、左に遠く焼石岳(海抜1,548m)経塚山(1,372m)を眺め、右に近く胆沢城址の森を望み胆沢川を渡って金ヶ崎に着きます。

金ヶ崎から北進し左に遠く鞍掛森山(海抜942m)前塚見山(915m)を望み、北上川の支流和賀川を渡り黒沢に着きます。

黒沢尻を出て西北に向かい東北本線から左に分かれ後西に折れ、平和街道の北に並び和賀川の河谷を遡ります。左右の展望が広がり、岩手県内の最大平野を眺めつつ江釣子、藤根を経、尻平川を渡り横川目を過ぎようやく山間に入り、和賀川を南に渡り右窓に綱取鉱山の坑場を眺めつつ岩沢に着きます。

岩沢から西に進めば渓谷が狭まり、左右に山脚の傾斜の急なところ、秋季に紅葉を賞することができます。仙人製鉄所の廃墟を右に見、和賀仙人を過ぎ、なおも線路は和賀川の渓谷に沿って蛇行します。仙人峠のトンネルをぬけると大荒沢に着きます。

大荒沢を出て西に進み、陸中大石を過ぎ和賀川を北岸に渡り再び西に渡って陸中川尻に着きます。

陸中川尻から和賀川の支流鬼瀬川に沿い西に進み西南に折れ、奥羽山脈中著しい鞍部を示す分水界(海抜296m)を越えて秋田県に入り、黒沢を過ぎ渓流に沿い3つのトンネルを潜り相野々を出て旭川を渡ること3回、ようやく山地を離れ平野に出て左窓に鳥海山の秀峰を望み横手に入ります。

黒沢尻を出て北進し松林の多いところを過ぎ豊沢川を渡り右に花巻川口の市街を見、花巻に着きます。

花巻を出て花巻城址を横切り北上川の右岸に沿って平野の間を進み北上川を渡り、山地に入り土沢を経て猿ヶ石川のあたりに出て、これに沿って上ります。秋は紅葉が両岸の山々を彩って美観を添えます。岩根橋を過ぎ、トンネルを抜けてしばらく河岸に沿い、遠野に達します。ここから猿ヶ石川の支流早瀬川の谷を上り左窓に六角牛山を見て次第に迫り行く山峡を辿り、秋季紅葉の美しいあたりを過ぎ、海抜557mの仙人峠駅に着きます。

大橋から甲子川に沿い東に下り、釜石町に達するもので、別に大橋から北の釜石鉱山に至る専用軽便軌道があります。

花巻を出て左に近く花巻温泉付近の万寿山、堂ヶ沢山を望み、松林と稲田をそれぞれ見ながら北に向かい陸羽街道の左に並んで進み、石鳥谷に着きます。ここは早池峰登山者の下車駅です。

石鳥谷から北進して松林の間を過ぎ滝名川を渡り右に五郎沼を見、日詰に着きます。南部富士とも呼ばれる岩手山はこのあたりから左窓前方に雄姿を見せます。また右窓に常に眺められた早池峯山はここで東北本線に最も近よって直線距離28kmに過ぎません。

日詰から北進し、右に城山を仰ぎ、遠く左に南昌山(海抜848m)、箱ヶ森山(866m)を見ながら矢幅に着きます。

矢幅から北に向かい灌漑用水の通じる鹿妻堰を過ぎ、徳田米を産する稲田の真ん中を直進し、仙北町を過ぎ、西北に折れ雫石川を渡り、盛岡に着きます。

※底本:『日本案内記 東北篇(初版)』昭和4年(1929年)発行

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