安達太良山

安達太良山
※現代の景観です。

昭和初期のガイド文

海抜1,700m、沼尻山などとも称され、二本松の西に屹立する火山で、明治33年(1900年)一大爆裂をなし、泥土岩片を飛ばし、熱灰を噴出しましたが、現在なおその余勢止まず火口には熱水をたたえ硫煙高く噴騰しています。頂上には直径500mの旧火口があり、その底に沼平と称する部分あり。新爆裂火口はそのなかにあり長径300mにおよびます。

登山は東は岳温泉、西は沼尻温泉からするのが便利です。

岳温泉から西北に向かい湯道に沿って、ヒノキやカラマツの植林の緩かな登りを約5km行くとやや大きな谷に入ります。その急斜面を登りきると広々とした芝生とカラマツの植林に出ます。そこを登ること約2kmで焼石の地帯となります。さらに1kmばかりで頂上に達します。頂は尖峰となった狭いところです。

この登路は概して平易で婦女子でも登山することができます。岳温泉から頂上まで8kmあまりおおよそ4時間かかります。

山頂からは北に近く吾妻富士、一切経、東吾妻などの群峰を見、遥かに西北に飯豊山を望みます。東は阿武隈川の平野が脚下に瞰下され、東北には蔵王山が雲表にその雄姿を現しています。西には磐梯山が間近に迫り、その麓に檜原、小野川、秋元の諸湖が小山の間に隠見し、遠く越後山脈の山々が霞のなかに浮んでいます。

スキー地としての安達太良山は冬季積雪多く、西麓沼尻温泉付近は全国有数の好スキー場で、この方面からスキー登山者が多く、船明神岳を経て登山し頂上から岳温泉へ滑降します。岳温泉側は沼尻側に比べ積雪はやや少ないですが、スロープは長大な緩傾斜で痛快な滑降が味わえます。また逆に岳温泉から登山し尾根を迂廻して北に向かい白糸滝から一直線に沼尻温泉へ降り、あるいは直接中ノ沢方面へ滑降するも人気のある冬旅です。

※底本:『日本案内記 東北篇(初版)』昭和4年(1929年)発行

令和に見に行くなら

名称
安達太良山
かな
あだたらやま
種別
見所・観光
状態
現存し見学できる
住所
福島県二本松市、郡山市、福島市ほか
参照
参考サイト(外部リンク)

日本案内記原文

海拔一、七〇〇米、沼尻山などとも稱せられ、二本松の西方に屹立する火山で、明治三十三年一大爆裂をなし、泥土岩片を飛ばし、熱灰を噴出したが、今尙その餘勢止まず火口には熱水を湛へ硫煙高く噴騰して居る。頂上には徑五〇〇米の舊火口を存し、その底に沼平と稱する部分あり。新爆裂火口はその中に存し長徑三〇〇米に及ぶ。

登山は東は嶽溫泉、西は沼尻溫泉よりするのが便利である。

嶽溫泉から西北に向ひ湯道に沿ひ、檜や落葉松の植林の緩かな登りを約五粁行くとやゝ大きな谷に入る。その急斜面を登りきると廣々とした芝生と落葉松の植林に出る。そこを登ること約二粁で燒石の地帶となる、更に一粁ばかりで頂上に達する。頂は尖峰をなした狹い處である。

この登路は槪して平易で婦女子でも登山することが出來る。嶽溫泉から頂上まで八粁餘凡そ四時閒かゝる。

山頂よりは北方に近く吾妻富士、一切經、東吾妻などの群峰を見、遙かに西北に飯豐山を望む。東は阿武隈川の平野が脚下に瞰下され、東北には藏王山が雲表にその雄姿を現はして居る。西には磐梯山が閒近に迫り、その麓に檜原、小野川、秋元の諸湖が小山の閒に隱見し、遠く越後山脈の山々が霞の中に浮んで居る。

スキー地としての安達太良山は冬季積雪多く西麓沼尻溫泉附近は全國有數の好スキー場なればこの方面よリスキー登山者漸く多く、船明神嶽を經て登山し頂上から嶽溫泉へ滑降する。嶽溫泉側は沼尻側に比し積雪はやゝ少いが、スロープは長大な緩傾斜で痛快な滑降が味へる。また逆に嶽溫泉から登山し尾根を迂廻して北に向ひ白絲瀧から一直線に沼尻溫泉へ降り、或は直接中ノ澤方面へ滑降するも興味の多き冬旅である。

本宮・二本松のみどころ