小森江貨車航送場

貨車航送
※現代の景観です。

昭和初期のガイド文

下関駅構内竹崎と門司、大里両駅の中間にある小森江駅との間海上約3.7km、貨車の航送が行われます。もとは貨車渡船と呼ばれ、貨車を船に搭載し、小蒸気船をもって曳航しましたが、大正8年(1919年)以来は自航貨車渡船が行われます。この方法は一度に6輌または7輌を一列に積載し、自力で運航するもので、総トン数463トン~502トン、長さ53.6m、幅7.92mまたは9.14m、深さ4.27mの航送船5隻によって行われます。船首船尾いずれも陸上軌道と接続できるようになっていて、推進器は外車式です。

陸岸には長さ30mの鉄橋すなわち可動橋を設け、その一端は丈夫な蝶番をもって陸上軌条に連結し、ほかの一端は鋼索をもって塔門から釣り、伸縮上下して潮汐の干満および貨車の数により調節して鉄橋の軌条面と船上の軌条面とを接続することができるようにしてあります。ただし双方の軌条は直接には連結せず、中継掛橋すなわち前垂橋の媒介によって行われます。動力は電気です。機関車によって貨車を積み込んでから対岸で取り外すまでに約35分を要します。1日59往復、1日平均片道約310輌を航送しています。

※底本:『日本案内記 九州篇(六版)』昭和13年(1938年)発行

令和に見に行くなら

名称
小森江貨車航送場
かな
こもりえかしゃこうそうじょう
種別
見所・観光
状態
現存しない
備考
昭和17年(1942年)の関門トンネル完成により役割を終えました。埋立により当時の海岸線から変わっていますが、小森江駅北の工場、倉庫のあるエリアが小森江貨車航送場跡です。

日本案内記原文

下關驛構內竹崎と門司、大里兩驛の中閒にある小森江驛との閒海上約三粁七、貨車の航送が行はれる。もとは貨車渡船と稱へ、貨車を船に搭載し、小蒸氣船を以て曳航したが、大正八年以來は自航貨車渡船が行はれる。この方法は一度に六輌または七輌を一列に積載し、自力にて運航するので、總噸數四六三噸乃至五〇二噸、長さ五三米六、幅七米九二または九米一四、深さ四米二七の航送船五隻に依る。船首船尾何れも陸上軌道と接續するを得、推進器は外車式である。

陸岸には長さ三〇米の鐵橋卽ち可動橋を設け、その一端は丈夫なる蝶番を以つて陸上軌條に連結し、他の一端は鋼索を以て塔門から釣り、伸縮上下して潮汐の干滿及貨車の盈空により調節して鐵橋の軌條面と船上の軌條面とを接續することが出來るやうにしてある。但雙方の軌條は直接に連結せず、中繼掛橋卽ち前垂橋の媒介によるのである。動力は電氣である。機關車によつて貨車を積込でから對岸に於て取下すまでに約三十五分を要する。一日五十九往復、一日平均片道約三百十輌を航送して居る。

門司のみどころ